質問主意書

第214回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二四号

鎌倉市役所移転の予算執行の是非に関する監査結果が監査委員により政治介入された可能性等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十月七日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   鎌倉市役所移転の予算執行の是非に関する監査結果が監査委員により政治介入された可能性等に関する質問主意書

 現在、鎌倉市においては、市役所の本庁舎移転について、市民から反対の声が多数寄せられている。鎌倉市議会では賛否が拮抗していたが、同議会の令和四年十二月定例会で、松尾崇鎌倉市長が提案した「鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例(位置条例改正案)」は否決された。

 このような中、本庁舎移転計画に反対する市民が移転予算の執行停止を求め、住民監査請求を行い、松尾市長が市議会の同意を得て選任した監査委員(八木隆太郎氏、大石和久市議会議員(公明党))は、地方自治法第二百四十二条の規定に基づき監査を実施し、監査結果を公表した。監査委員は監査結果において、予算執行は違法又は不当ということはできず、適法と判断した。その上で、監査結果の中で本庁舎移転計画について、「時間と労力をかけて目指してきたまちづくりは、本庁舎移転を含む深沢地区のまちづくりと鎌倉地区の市役所現在地の利活用の構想が、真に市民の安全と市の将来像を見据えた政策の柱であるとの信念から、松尾市長自らが選挙公約とし、取り組んできた政策にほかならないはずである。であるならば、松尾市長は、この政策を途中で投げ出すことなく不退転の覚悟で政治責任を全うするという姿勢を具体的に示し、課題に取り組むべきだと考える。」との意見を付けた。前述したとおり、本庁舎移転については賛否が拮抗し、市議会では市長提案の位置条例改正案は否決された。こうした案件について、公表した監査結果の中で、監査委員がこのような意見を付けることは、監査委員の権限を越えるのではないかとの疑義が寄せられている。

 これらの事態を受けて、市議会総務常任委員会では、「議会選出監査委員の見直しを求める陳情」(陳情第二七号)の審議に続き、日程に「住民監査請求「新庁舎等基本設計等予算執行差止」について」を追加し、監査事務局長及び代表監査委員に対する質疑を行った。市役所移転推進派であり、与党議員でもある保坂令子市議会議員は、監査結果の記載事項について市議会の常任委員会で見解を問うことは監査の独立性の侵害に当たり、監査への政治介入であると主張するなど、監査委員を庇い、松尾市長を擁護していると考えられる。なお、保坂議員は監査委員の選任に賛成していたことから、同議員には松尾市長と同様に重大な責任があると思われる。

 監査委員は、地方自治法第百九十八条の三で、「その職務を遂行するに当たつては、…常に公正不偏の態度を保持して、監査等をしなければならない。」と規定され、市監査委員が付帯意見で市長の政策を支持するといった事例が許容されるのであれば、全国に先例として拡散され、我が国の監査委員制度を揺るがしかねない。

 以上を踏まえて、以下政府の見解を問う。

一 監査委員の権限において、地方自治法第二百四十二条に基づき公表する監査結果に意見を付ける際にはその内容については何ら制限がなく監査委員の裁量で自由に作成することができると解釈されるのか。政府の見解を示されたい。

二 市議会総務常任委員会の質疑において政治介入との指摘に対し、代表監査委員は「今から何ができるかわからないが、何らかの手だてを考えたい。」と答弁した。一般論として、地方自治法第二百四十二条に基づき監査を実施し、公表された監査結果について、監査委員が、監査結果の訂正や付帯意見の取消、あるいは、再度監査を行うことは法的に可能であるのか。政府の見解を示されたい。

三 監査請求人が、監査結果の通知を受け取ってから三十日以内に住民訴訟を提起した場合において、監査結果が訂正された場合は既に提起された訴訟の取扱いはどのようになるのか。政府の見解を示されたい。

四 保坂議員は、監査結果の記載事項について市議会の常任委員会で見解を問うことは監査の独立性の侵害に当たり、監査への政治介入であると主張している。一般論として、地方議会の常任委員会において、監査結果の記載内容について監査委員事務局長及び監査委員に対して質疑を行うことは、適法であるのか。政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。