第214回国会(臨時会)
質問第一七号 自衛官募集事務に係る自治体の協力等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年十月四日 浜田 聡
参議院議長 尾辻 秀久 殿 自衛官募集事務に係る自治体の協力等に関する質問主意書 令和元年十月二十九日の神戸市会令和元年第二回定例市会本会議では、自由民主党の上畠寛弘議員の一般質問において、自衛隊が行う自衛官募集事務への協力が取り上げられた。上畠議員は、「自衛官等の募集事務については、自衛隊法施行令を根拠とする法定受託事務として、各市町村は募集に関する広報・宣伝・報告または資料の提供等の事務を行うこととされております。特に今年度は防衛省や自衛隊兵庫地方協力本部から、募集対象者情報の紙媒体または電子媒体での提出依頼があったと聞きます。いわゆるこの規定については、できる規定であるため、自治体により判断が分かれている状況であります。提供する情報は、従前から対応している住民基本台帳の一部の写しの閲覧で得られるものと同一であることから、私は個人情報保護の観点においても問題はないと考えております。これまで手書きで自衛隊の方が区役所等に来られて写していらっしゃるという状況を聞いておりますけれども、自衛隊は市民生活の安全・安心に大きく貢献しておりますし、私たち神戸市民も、震災の際には本当に自衛隊員の皆様には助けていただきました。また、国の防衛という重要な役割を担っていることからも、この募集対象者情報については積極的に電子媒体で提供すべきというふうに考えておりますが、見解をお伺いいたします。」と久元喜造神戸市長に対して、神戸市として自衛隊への一層の協力を要請し、見解を求めた。 これに対して、久元神戸市長は、「御指摘をいただきましたとおり、自衛隊は阪神・淡路大震災を初め、災害時に市民生活の安全・安心に大きな役割を果たしていただいています。自衛官募集の広報・宣伝につきましては、現在広報KOBE九月号に募集情報を掲載をしております。各区役所で隊員募集ポスターを掲示し、希望者へは自衛官募集パンフレットや就職説明会チラシを配布をしております。広報KOBEの紙面、各区役所の掲示板、書架のスペースなどは限られている状況ではありますが、議員御指摘の点を踏まえ、できる限り対応をしていきたいと考えております。そのような対応に加えまして、この自衛官募集につきましての協力ですけれども、自衛官の募集に関する対象者情報の閲覧につきましては、住民基本台帳法第十一条を根拠に、防衛省自衛隊兵庫地方協力本部が閲覧請求を行い、その本部職員が住民基本台帳の一部の写しを閲覧の上、対象者の住所、氏名、生年月日、性別の四情報を転記をしております。議員御指摘のとおり、四月に防衛大臣から全国の首長に対し、紙媒体・電子媒体での提供及び細部について各地方協力本部より調整するため対応をお願いしたい旨の文書が発出され、兵庫県地方協力本部長からも、紙媒体または電子媒体での提出の依頼を受けております。自衛隊に対する対象者情報の媒体での提供に当たりましては、法令及び個人情報保護の観点から判断が必要と考えます。自衛官募集に関する法令の根拠といたしましては、自衛隊法及び同施行令におきまして、自衛官募集事務は市町村がその一部を実施すること、防衛大臣は市町村長に対し資料の提出を求めることができる旨規定をされております。個人情報保護の観点からは、神戸市個人情報保護条例第九条第一項におきまして、個人情報の提供を制限しておりますけれども、法令等の規定がある場合はその限りではない旨が規定をされております。これらの規定を勘案いたしますと、自衛隊兵庫地方協力本部に対し、対象者情報を電子媒体で提供することも可能ではないかというふうに考えられますので、議員御指摘の点も踏まえ、今後対応に向けて検討してまいりたいと考えております。」と答弁したところである。 その後、令和元年十一月二十九日の神戸市会総務財政委員会において、上畠議員は、「前回の私の一般質問の機会において、自衛隊の募集業務等を地方自治体が担うということで、ぜひ積極的な協力をしていただきたいということをたださせていただきまして、市長からも前向きな御答弁をいただきました。また、募集業務というものでまた自衛隊さんのほうから来られることあると思うんですけども、あの質疑の後にどのような対応をしていただいたかということと、今後どういった対応をできるのか、御答弁いただけますでしょうか。」と再度質疑を行い、遠藤行財政局長は、「自衛官、自衛官候補生に対しての情報提供ということでございますが、これにつきましては、防衛省の兵庫地方協力本部のほうから令和二年の二月に提供してほしいという旨での依頼を現在受けているところでございます。現在、提供に向けての調整を進めているところでございます。具体的に申し上げますと、提供いたします対象者の生年月日等の抽出条件、データの並びとかファイルの形式とか、そういったことの確認であったり、また、個人情報の厳正な管理を担保するということで、個人情報の取り扱いに関して防衛省と神戸市との間で覚書を締結をしなければならないと考えておりますので、その内容、あるいは締結の時期についての検討をしてございます。そのほか必要な事項について内部あるいは防衛省と調整をしているところでございます。これらの調整を鋭意進めまして、先方からお話のある来年二月には電子媒体による提供を行いたいと、そのように考えてございます。」と答弁した。上畠議員は、「自衛隊の存在というものは、防災も、災害時の対応もそうですけどね、安全保障の面にも大変大事な存在でございますので、この日本を構成する地方自治体として当然の協力というものを当然にしていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。」と締めくくった。 これらの質問、答弁を端緒とし、令和二年二月十日付けで神戸市と自衛隊兵庫地方協力本部は、募集対象者情報の提供に関する覚書を締結し、これ以降、神戸市は自衛隊の依頼を受けて、電子媒体での情報提供を行っている。これまでは、自衛官が手書きで転記していたことから、業務効率は飛躍し、神戸市の自衛隊への協力は募集業務に貢献するものである。 しかし、これら神戸市会での質問や、神戸市と自衛隊兵庫地方協力本部との覚書の締結、神戸市の自衛隊への協力に対して反発、反対する勢力も存在し、日本共産党は神戸市会において中止を求めているところである。 例えば、令和元年十一月二十九日の神戸市会文教こども委員会では、日本共産党の味口としゆき議員が、「自衛隊にかかわらず自治体の外部組織に対して、電子媒体という容易に加工複写され、漏えいが懸念される方法で大規模に住民の名簿を提供することは、やはり住民のプライバシー権を侵害するものだ」と反対を表明した。令和五年十月十七日の総務財政委員会では、「私たちの個人情報をわたさない神戸市民の会」の岡崎史典氏が提出した「自衛隊へ、十八歳、二十二歳の住基四情報の提供中止を求める陳情」(陳情第二六号)の審議において、日本共産党の大かわら鈴子議員は、採択を主張し、「プライバシー権の侵害にも当たるということで危険なものである」と発言した。 その後、令和六年五月二十九日の神戸市会令和六年第一回定例市会本会議の一般質問において、日本共産党の赤田かつのり議員は、神戸市による自衛隊兵庫地方協力本部に対する情報提供について、プライバシー権を保障した憲法第十三条に違反する行為として、神戸市に提供の中止を求めた。これに対して小原一徳神戸市副市長は、「自衛隊への募集対象者情報の提供につきましては、自衛隊からの依頼を受け、自衛隊法第九十七条及び同施行令第百二十条を根拠に毎年各年度に十八歳、二十二歳になる方の情報を提供しているものでございます。自衛隊法第九十七条第一項及び同施行令第百二十条におきましては、自衛官募集事務は市町村がその一部を実施すること、防衛大臣は市町村長に対し、資料の提出を求めることができる旨、規定されているところでございます。一方、個人情報保護の観点におきましても、個人情報保護法第六十九条第一項で、個人情報の提供を制限しているところですが、法令等の規定がある場合はその限りではない旨、規定されておりまして、提供の根拠としている自衛隊法施行令第百二十条はその法令に該当する旨、国からも示されているところでございます。このように、自衛隊の依頼を受け募集対象者情報を提供することにつきましては、法令に根拠があり、個人情報保護法においても提供制限が解除されていることから、適切な対応であり、中止することは考えていないものでございます。」と明確に答弁した。しかし、赤田議員は、「自衛隊法施行令百二十条には、「防衛大臣は、自衛官または自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事または市町村長に対し、必要な報告または資料の提出を求めることができる」と、こう書かれてあるわけであって、この条文をどこからどう読んでも、個人情報の提供というのがあると読み取るのは無理があると思うんですよ、違いますか。」と質問を重ね、小原副市長は、「神戸市として法令に基づいて、適切に対応しているものと認識しております。」と答弁した。その後も、赤田議員の質問に対し、久元神戸市長は、「二十九年前に阪神・淡路大震災のときには自衛隊によりまして、多くの人命が救われ、また支援者に対する支援も行われました。また、能登半島地震被災地域におきましても自衛隊の活動は大変重要なものであります。さらに自衛隊は我が国の防衛という極めて重要な任務を背負っているところでありまして、自衛隊はこれらの任務を全うするためには必要な人材、人員を確保する必要があり、神戸市としては自治体として、自衛隊の人員確保に協力することが適切であると、こういう、これは国がどうだからということではなくて自治体としての神戸市の判断で提供しているということです。」と答弁した。 現在、国としては神戸市のみならず、各自治体から協力を得て、情報提供を受けているところであるが、このような反自衛隊活動が全国に蔓延することを危惧するところであり、政府としては各省庁が自衛隊の募集業務に協力し、警察庁を始め然るべき情報収集を行った上、必要な対策を採るべきである。 以上を踏まえて、以下のとおり質問する。 一 神戸市は、令和二年四月以降、自衛隊兵庫地方協力本部の依頼があるごとに、募集対象者情報として、十八歳及び二十二歳に達する神戸市民の募集対象者情報である氏名、住所、生年月日及び性別を電子記録媒体に記録して、自衛隊兵庫地方協力本部に対して提供している。これらの神戸市の行為は、日本国憲法第十三条、住民基本台帳法第十一条第一項のいずれにも違反していないと考えるが、政府の見解を示されたい。 二 神戸市から自衛隊兵庫地方協力本部に対して募集対象者情報を提供する際には、募集対象者本人からの同意は特に得ていないが法的に得る必要はあるのか。政府の見解を示されたい。 三 地方自治体が自衛隊に対して募集対象者情報を提供する根拠規定は自衛隊法第九十七条第一項、自衛隊法施行令第百二十条であるのか。政府の見解を示されたい。 四 現在、神戸市のように、自衛隊に対して電子媒体によって募集対象者情報を提出し、協力している地方自治体はどこか明らかにされたい。 五 地方自治体が自衛隊に対して募集対象者情報を提供するに当たり、令和二年四月時点の個人情報の保護に関する法律においては、地方自治体が設置する個人情報保護審議会に諮問し、答申を受ける必要はあるのか。政府の見解を示されたい。 六 自衛官の募集業務に当たっては、自衛隊と地方自治体との協力や自衛官募集相談員の方々のボランティアもあって維持されているところ、今後、一層の募集業務の円滑化のために具体的施策を採るべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 七 自衛官の退官後の再就職については、地方自治体への雇用や再就職への協力を政府として求めるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 八 国家国民を守る自衛官の待遇を早急に改善し、給与の更なる引上げを行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 九 天皇陛下による認証官とすべき官職であるか否かはどのような判断によって根拠法の法案策定時に政府は盛り込んできたのか明らかにされたい。 十 国民の生命と財産を守るため、日々、自衛官の方々は職務を果たされているが、自衛官の最高位者である統合幕僚長を始め海上幕僚長、陸上幕僚長、航空幕僚長の任免に当たって天皇陛下の認証が必要とされる認証官とすべきであると考えるが、石破内閣の現在の見解を示されたい。また、これまでに政府内において議論、検討された事実はあるか明らかにされたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |