質問主意書

第214回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一四号

予定納税制度の廃止又は見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十月四日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   予定納税制度の廃止又は見直しに関する質問主意書

 予定納税制度の歴史は古く、その始まりは旧所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の制定により、従前の賦課課税制度に代えて申告納税制度が導入され、併せて予定申告(予算申告)制度が導入されたところからである。導入当時の政府は、これにより、「所得を生ずる時期と納税の時期とが近接することに相成りまして、負擔の均衡適正を圖る上からも、納税者の納税上の便宜からも、國庫收入の的確を期する上に於きましても、適當と認められるのであります。」と答弁している(第九十二回帝国議会貴族院所得税法を改正する法律案特別委員会議事速記録第一号(昭和二十二年三月二十九日))。

 この後、昭和二十六年に予定申告の納付時期の変更がなされ、昭和二十九年に、所得税法の一部を改正する法律により、予定申告制度が予定納税制度に改められ、現在、原則として前年実績に基づいて計算した予定納税基準額の三分の一に相当する予定納税額を七月及び十一月の二期において納付することとなっている。予定納税制度導入の目的について、当時の政府は「現在行つております予定申告の制度、これを予定納税制度に改めたい。現在予定申告の制度を行つておりますが、大体原則としては前年の所得額を下まわらないということになつておりますので、大体出て参ります申告が、前年度の申告と同じ額が出て参つております。それでむしろそれは予定納税の制度にかえた方がいいのじやないかという税制調査会の意見もございますので、こういつた改正をいたしたい。所得税の改正は以上申したのが主たるものであります。」と答弁し(第十九回国会衆議院予算委員会議録第一号(昭和二十九年二月一日))、また、「手続を簡素化いたしますために、予定申告制度を予定納税制度に改めたい。」と答弁している(第十九回国会衆議院大蔵委員会議録第四号(昭和二十九年二月三日))(以下「導入当時の政府答弁」という。)。

 つまり、従前の予定申告制度は、原則として前年の所得額を下回らないこととされており、事実上、前年実績から機械的に算出できる状況となっていたこと等を踏まえて、当時の政府は、手続を簡素化する目的で予定納税制度導入を決定したものである。他方、現在の予定納税制度については、前年の所得額と大幅に異なる納税者等から極めて非効率である、無駄な制度であるとの評価が多い。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 導入当時の政府答弁について、現在の政府においても見解は変わりないか。異なっている点があれば全て示されたい。

二 予定納税制度の目的と導入による利点を、その理由と併せて示されたい。

三 令和元年度から直近に至るまでにおける所得税納税者のうち、前年の所得を下回った納税者数、予定納税額が確定した納税額よりも上回り、確定申告で所得税の還付を受けた納税者数、所得税納税者総数を年度ごと、かつ、法人及び個人ごとに示されたい。

四 予定納税制度に対する政府の現在の評価を示されたい。

五 予定納税制度に係る政府の事務コスト及び納税者の事務コストを実績又は推計で示されたい。

六 予定納税制度導入当時から社会情勢も大きく変わり、手続の簡素化という目的はとうに喪失しているものと思料するが、予定納税制度を廃止又は見直す考えはあるか、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。