第213回国会(常会)
内閣参質二一三第二三八号 令和六年七月二日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員小西洋之君提出薬価中間年改定の廃止の必要性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員小西洋之君提出薬価中間年改定の廃止の必要性に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘のように「製薬企業の多くが中間年改定の廃止、運用見直しを求めていること」及び「その理由」について具体的には把握していないが、例えば、令和五年七月五日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会において関係業界団体から、「薬価の下落スピードを加速させる中間年の薬価改定については、今後発生し得る医薬品供給不安リスク、安定供給を支える人材確保のリスクを軽減させるためにも見直しを検討いただきたい」といった意見が示されていることは承知している。 二について 御指摘の「医薬品卸業者の多くが中間年改定によって業務を増大させている状況」及び「その従業員の中には意欲低下、心身の疲弊、離職につながっている者もいるという状況」について網羅的には把握していないが、例えば、御指摘の「アンケート調査」の存在は承知している。また、御指摘の「医薬品卸業者」の業務については、御指摘の「中間年改定」の影響の程度は定かではないが、一般に、昨今の医薬品の需給のひっ迫に伴い、医療機関等と出荷調整を行う機会が多く生じていること等により増加しているものと考えており、こうした中、業務の負担を軽減するためには、医薬品の安定供給の確保と併せて、これまで以上に適切かつ円滑な流通取引が行われる環境を整備することが重要であると考えており、令和六年三月に改訂した「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の周知を徹底し、遵守を促してまいりたい。 三について お尋ねについては、市場実勢価格を踏まえて行う薬価改定が個別企業の具体的な活動に与える影響は様々であると考えられることから、御指摘のように「医薬品産業の体力を奪い、事業者による生産性の向上や海外市場の開拓等を妨げることにつながる」とは、一概には言えないと考えている。なお、「令和六年度薬価制度改革の骨子」(令和五年十二月二十日中央社会保険医療協議会了解)において、「令和四年度薬価調査における全品目の平均乖離率である「七・〇パーセント」を超えた乖離率であった品目」を除き、「不採算品再算定については、急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、企業から希望のあった品目を対象に特例的に適用する」とされたことを踏まえ、千九百四十三品目について、薬価の引上げを行ったところである。 四について 薬価改定に関しては、「令和六年度薬価制度改革の骨子」において、「診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方については、引き続き検討することとし、令和六年度速やかに議論を開始すること」と、令和六年二月十四日の中央社会保険医療協議会の答申の附帯意見において、「今回の薬価制度改革の骨子に基づき、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消等の医薬品開発への影響や、後発医薬品の企業指標の導入や今後の情報公表も踏まえた医薬品の安定供給に対する影響等について、製薬業界の協力を得つつ分析・検証等を行うともに、こうした課題に対する製薬業界としての対応を踏まえながら、薬価における評価の在り方について引き続き検討すること」と、また、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「二〇二五年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」こととされており、これらを踏まえた検討を行っていく中で、お尋ねの「薬価改定の在り方全体の方向性」について必要な検討を行ってまいりたい。 五について 薬価改定に関しては、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」において、「二〇二五年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」とされており、これを踏まえた検討を行っていく中で、御指摘の「建議」の「指摘」のような「毎年薬価改定」や「既収載品の算定ルール」の在り方も含め検討を行うこととしており、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。 |