質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第二三六号
  令和六年七月二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出転籍容認の実態に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出転籍容認の実態に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の「本人意思による転籍が成功する確率は、ごくごく少数にとどまる」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の2について

 お尋ねについては、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号。以下「改正法」という。)による改正後の外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号。以下「法」という。)第九条の二第四号イの主務省令で定める期間並びに同号ロ及びハの主務省令で定める基準については、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和六年五月十七日衆議院法務委員会)の六において「育成就労外国人の意向による転籍を認めるための要件に関する主務省令の策定に際しては、技能及び日本語能力の基準等について、適正かつ現実的に転籍が可能なものとなるよう特に配慮するとともに、改正後の制度の運用状況を踏まえて必要に応じて見直しを検討するものとすること」とされていること並びに「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和六年六月十三日参議院法務委員会)の十において「育成就労労働者の意向による転籍を認めるための要件に関する主務省令の策定に際しては、技能及び日本語能力の基準等について、適正かつ現実的に転籍が可能なものとなるよう、有識者や労使団体等で構成される新たな会議体の意見を反映すること。また、改正後の制度の運用状況を踏まえて必要に応じて見直しを検討するものとすること」とされていること及び十四において「政府は育成就労労働者の転籍の状況を適切に把握し、本法施行後三年を経過した場合において、関係地方公共団体、労使団体その他の関係者の意見を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずること」とされていることを踏まえ、適切に対応してまいりたい。

二の1について

 御指摘の「構造的に考えにくい」及び「転籍支援を「やったふり」すること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、育成就労制度においては、監理支援機関(法第二条第十一号に規定する監理支援機関をいう。以下同じ。)が監理支援事業(法第二十三条第一項に規定する監理支援事業をいう。以下同じ。)を適正に遂行するため、監理支援機関は、監理型育成就労実施者(法第二条第九号に規定する監理型育成就労実施者をいう。以下同じ。)と一定の密接な関係を有する役員又は職員を、一定の業務の実施に関わらせてはならないこととするほか、監理型育成就労実施者と一定の密接な関係を有しない者であって、職務の執行の監査を公正かつ適正に遂行することができる知識又は経験等を有すること等の要件に適合するものに、役員の監理支援事業に係る職務の執行の監査を行わせるための措置を講ずることとしている。その上で、監理支援機関が法第八条の四第五項の規定による必要な措置を講じない場合には、外国人育成就労機構が当該監理支援機関に対して指導等を行うほか、法第三十六条第一項の規定による改善命令又は法第三十七条第一項若しくは第二項の規定による許可の取消し若しくは事業停止命令の対象となり得る。また、外国人育成就労機構も、育成就労外国人等(法第四十七条第一項に規定する育成就労外国人等をいう。)が育成就労の対象となること又は育成就労を継続することに資する業務として、育成就労外国人が育成就労の対象となるために職業紹介をすることが必要な場合において、育成就労に係る雇用関係の成立をあっせんすること等の業務を行うこととしている。

二の2について

 御指摘の「転籍の申出により外国人が不利益な取扱いを受けた場合」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、育成就労実施者(法第二条第七号に規定する育成就労実施者をいう。)が認定育成就労計画(法第十一条第一項に規定する認定育成就労計画をいう。)に従って育成就労を行わせていない場合には、法第十五条第一項の規定による改善命令又は法第十六条第一項の規定による育成就労認定(法第十一条第一項に規定する育成就労認定をいう。)の取消しの対象となり得る。また、二の1についてで述べたとおり、監理支援機関が法第八条の四第五項の規定による必要な措置を講じない場合には、外国人育成就労機構が当該監理支援機関に対して指導等を行うほか、法第三十六条第一項の規定による改善命令又は法第三十七条第一項若しくは第二項の規定による許可の取消し若しくは事業停止命令の対象となり得る。

二の3について

 前段のお尋ねについて、改正法附則第二十四条第一項においては、「政府は、(中略)育成就労外国人・・・が地方から大都市圏に流出すること等により大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために必要な措置を講ずるものとする」としており、お尋ねの「地方から都市への人材流出がどの程度起きる」かは当該措置の影響を受けることから、あらかじめ具体的に想定することは困難であり、また、後段のお尋ねについては、「外国人労働者の移動の具体的な想定の有無」の意味するところが明らかではないため、いずれもお答えすることは困難である。