第213回国会(常会)
内閣参質二一三第二二八号 令和六年七月二日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員牧山ひろえ君提出共同親権に係る改正民法の解釈及びガイドライン等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員牧山ひろえ君提出共同親権に係る改正民法の解釈及びガイドライン等に関する質問に対する答弁書 一の1について 民法等の一部を改正する法律(令和六年法律第三十三号。以下「改正法」という。)による改正後の民法(明治二十九年法律第八十九号。以下「改正後民法」という。)第八百二十四条の二第一項第三号は、子の利益のため急迫の事情があるときは、親権は父母の一方が行う旨を定めており、同条第二項は、父母は、その双方が親権者であるときであっても、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる旨を定めている。これらの規定により親権の行使を単独ですることができる者は、御指摘の「現に子を監護している親」に限定されるものではないと考えている。 一の2及び3について お尋ねの「現に子を監護しない別居親がこれと矛盾する親権行使をすること」及び「それが日常的に子を監護する同居親の単独親権行使と矛盾すること」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、改正後民法第八百十八条第一項は、親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない旨を定めており、改正後民法第八百二十四条の二第二項の規定により親権の行使を単独ですることができる事項についても、子の利益に反することとなる親権の行使をすることはできないと考えている。その上で、どのような場合における親権の行使が子の利益に反することとなるかについては、個別具体的な事案に応じて判断されるものである。 二の1について お尋ねの「その治療方針の決定や大きな変更が重要事項に当たり親権の共同行使が求められる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。 二の2について 改正後民法第八百二十四条の二第一項第三号の「子の利益のため急迫の事情があるとき」とは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時に親権を行使することができず、その結果として、子の利益を害するおそれがあるような場合をいい、いかなる場合がこれに該当するかについては、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるため、一概にお答えすることは困難である。 三及び五の2について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、改正後民法第八百十七条の十二は、父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならない旨や、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない旨を定めており、政府としては、その趣旨及び内容を適切かつ十分に周知していく考えである。 四について お尋ねの「これを連絡会議の組織及び運営に当初から実質的に組み込むことが不可欠であり、検討が進んでから形式的に意見聴取をする等の対応は許されない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、各方面からの様々な意見を踏まえつつ、改正法の円滑な施行に努めてまいりたい。 五の1について 御指摘の「同居親と子を事細かに拘束し行動を制約するもの」及び「ポスト・セパレーション・アビューズ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、離婚後の子の監護に関する事項の定めをする場合には、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと認識している。 六について 御指摘の「これまでの家族法に係る対外発信について国際連合の諸会合等での発言、応答等」及び「海外においていかなる誤解が生じて来たのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「対外発信」については、令和五年三月十五日の参議院予算委員会において、齋藤法務大臣(当時)が「我が国における父母の離婚に伴う法制度については、これらの勧告や決議も含め、海外からも様々な御意見が示されています。もっとも、そのような御意見の中には、我が国の法制度についての誤解や事実誤認に基づくものも含まれているため、そのような誤解等を解消することができるよう我が国の制度を丁寧に説明していくことも重要と認識しています。」と答弁しているとおりであり、我が国の法制度についての正確な情報発信に努めてまいりたい。 |