質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第二○一号
  令和六年七月二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員紙智子君提出有機フッ素化合物(PFAS)の農産物への影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出有機フッ素化合物(PFAS)の農産物への影響に関する質問に対する答弁書

一について

 農林水産省としては、令和六年度の「有害化学物質リスク管理基礎調査事業」において国産の農産物、畜産物及び水産物中の有機フッ素化合物(以下「PFAS」という。)の濃度に関する調査を行うこととしているが、その対象品目は、農産物は、ばれいしょ、キャベツ、トマト及び米であり、畜産物は、牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳及び鶏卵であり、水産物は、まいわし、かつお、まだら、あさり及びあゆである。当該調査の方法や結果の公表時期について現時点では未定である。

二について

 御指摘の「農作物のPFAS蓄積状況の実態調査」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国内で製造し、若しくは加工し、又は輸入される農薬については農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第三条第一項又は第三十四条第一項の農林水産大臣の登録を受けている必要があるところ、現に当該登録を受けている農薬については、当該登録の後、同法第三条第二項に規定する申請書等により、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)第二条第二項に規定する第一種特定化学物質に指定されている化学物質のうち、ペルフルオロ(オクタン―一―スルホン酸)(別名PFOS。以下「PFOS」という。)若しくはその塩、ペルフルオロオクタン酸(別名PFOA。以下「PFOA」という。)若しくはその塩又はペルフルオロ(ヘキサン―一―スルホン酸)(別名PFHxS)若しくはペルフルオロ(アルカンスルホン酸)(構造が分枝であって、炭素数が六のものに限る。)若しくはこれらの塩が使用されていないことを農林水産省において確認しているため、農薬の使用によりこれらの化学物質が農作物に残留するとは考えていないことから、農薬に着目した調査を直ちに行う必要があるとは認識していないが、引き続き、科学的知見の集積に努めてまいりたい。

三について

 農林水産省として、いわゆる化学肥料にPFASが含まれているとする学術論文等を把握しておらず、現時点でそのような科学的知見が得られていないことから、その含有状況に関する調査を行う必要があるとは認識していない。

四について

 御指摘のように「土壌や農業用水からPFASが検出された場合」に、こうした土壌や農業用水を用いて農産物が生産されたことのみをもって、その農産物が「有機農産物の日本農林規格」(平成十七年農林水産省告示第千六百五号)に定める有機農産物の生産の方法についての基準(以下単に「基準」という。)に適合しなくなるものではないことから、農林水産省としては、当該基準との関係では、御指摘の「PFASが有機農業に与える影響」は直ちに生ずるものではないと認識している。また、同様に「土壌や農業用水からPFASが検出された場合」における、こうした土壌や農業用水を用いて生産された農産物自体に対する具体的な影響について十分な知見が得られていないため、お尋ねの「対策」について現時点でお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の「有機農産物として取引停止・出荷・販売ができなくなった場合」の「補償や救済制度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、有機農産物からPFASが検出されたことのみをもって、その農産物が基準に適合しなくなるものではないところ、生産者が生産する農産物に何らかの損害が生じた場合には、一般的には原因者が補償を行うこととなると考えられる。

六について

 「新規建設であるから安全であるとは言えないのではないか」とのお尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の令和六年六月十三日の参議院農林水産委員会における安岡農林水産省消費・安全局長の答弁においては、一般論として「PFOS、PFOAについては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づいて、現在その製造及び使用が禁止されている」ことから、「周辺の農地、農作物への影響も低い」とお答えしたものである。

 また、化審法の規制の対象となっていないPFASを含め、御指摘の「半導体工場」に係るPFASに関する対応については、事業者及び関係する地方公共団体と連携し、御指摘の「工場排水の調査」の必要性も含め、検討してまいりたい。

 なお、御指摘の「TCMC」はTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limitedを指すものと理解した上で、「半導体メーカー「TCMC」の子会社「JASM」の熊本工場周辺の井戸から国のPFOSとPFOAの合算で五十ng/L以下の暫定目標を上回る濃度でPFOSとPFOAが検出された」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、環境省が同年三月に公表した「令和四年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果一覧」によると、熊本県は、Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下「JASM」という。)が立地する同県菊池郡菊陽町でのPFOS及びPFOAの水質調査を行っていないと承知している。また、JASMは、同年五月末時点で本格的な生産活動を行っておらず、また、JASMの工場から排出された水は下水道に排出する計画になっていることから、御指摘の「「JASM」の熊本工場周辺の井戸」との関連性は低いものと認識している。