質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第一五二号
  令和六年六月七日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員嘉田由紀子君提出ブラックバス(オオクチバス・コクチバス)等特定外来生物の魚類に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員嘉田由紀子君提出ブラックバス(オオクチバス・コクチバス)等特定外来生物の魚類に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、環境省及び農林水産省としては、オオクチバス及びコクチバス(以下「ブラックバス」という。)を含む、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号。以下「外来生物法」という。)第二条第一項に規定する特定外来生物(以下「特定外来生物」という。)を御指摘の「特定の受益者が利用」することについては、外来生物法や条例に違反しない限り禁止されないと承知している。

二について

 国土交通省は、同省が管理するダムにおいて、地方公共団体、漁業協同組合等の関係者と連携して、外来魚の持込みや持ち出しを禁止する看板等の設置、外来魚を回収するボックスの設置、外来魚に対する対策に関する学習会や外来魚を駆除するイベントの実施等を行うとともに、これらの事例を取りまとめた「河川における外来魚対策の事例集」(平成二十五年十二月国土交通省水管理・国土保全局河川環境課作成)を、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第二項に規定する河川管理施設であるダムの管理者等に周知しているところである。

 農林水産省は、「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の技術指針」(平成二十七年五月農林水産省農村振興局取りまとめ)において、同省が所管するダムの管理者等に対し、「生態系の保全には、環境配慮対策の実施だけではなく、適切な維持管理が継続的に行われることが不可欠である」ことから、「環境に配慮して計画された施設について必要となる維持管理項目や内容、管理主体の検討を、関係者の合意形成を図りつつ行い、維持管理計画として取りまとめる」こととし、その「維持管理項目」として「ため池等への外来種の違法放流等の防止」を、当該項目に係る「維持管理内容」として「オオクチバス等の特定外来生物の放流は違法であり禁止されている旨の看板等を設置」や「定期的な見回り等」を例示し、周知しているところである。

 また、環境省としては、自然公園内のダムにおける特定外来生物の放出(外来生物法第九条に規定する放出をいう。)の禁止を含む外来生物法第二章に規定する規制の内容について、パンフレット等を通じ普及啓発を図っているところであり、国土交通省、農林水産省、地方公共団体等の関係者と連携し、当該規制に係る監視を強化してまいりたい。

三について

 お尋ねの「釣り人等にリリースをしない釣りにより駆除に対する協力を求める」ことについては、「オオクチバス等に係る防除の指針」(平成十七年六月三日環境省・水産庁作成)において、「個体数低減化手法の導入に際し、留意すべき事項」として、「個体数低減化の効果を期待する観点から、自治体の条例や内水面漁場管理委員会の指示等によりキャッチ・アンド・リリースを禁止している地域があります。この手法の導入については、防除水域の状況に応じて、当該水域での必要性等を個別に検討することが適切です。」との考え方を示しているところ、環境省及び農林水産省としては、釣りによる防除も含むブラックバスに対する対策に関して普及啓発等に取り組んでまいりたい。

四について

 ブラックバスを採捕する際に、ブラックバスが漁業権の対象とされていない内水面漁業協同組合が漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第百七十条第二項第二号の遊漁料(以下「遊漁料」という。)の納付を求めていることについては、御指摘の「釣りガイドや貸しボート業者」等を経由して納付を求めている場合を含め、一部の内水面漁業協同組合において、ブラックバスだけを採捕することは事実上困難であることから、漁業権の対象とされている他魚種が採捕される可能性があることを理由として、遊漁料の納付を求めているものと承知しているところ、農林水産省としては、漁業権の対象とされていない魚種を採捕するという名目で漁業権の対象とされている魚種を混獲するものであると客観的に認定し得るときは、遊漁料を納付させることができると考えているが、いずれにせよ、遊漁料については都道府県知事において適切に運用されるものと考えている。

 環境省及び農林水産省としては、遊漁料納付の有無にかかわらず、特定外来生物が外来生物法に基づいて適切に扱われるよう、普及啓発等に取り組んでまいりたい。

五について

 一についてでお答えしたとおり、環境省及び農林水産省としては、一で御指摘の「特定の受益者が利用」することについては、外来生物法や条例に違反しない限り禁止されないと承知しているが、各地方公共団体において、外来生物法第二条の三の規定に基づき、当該地方公共団体の区域における特定外来生物による生態系等に係る被害の発生の状況及び動向その他の実情を踏まえ、防除等の措置を講じ、又は講ずるよう努めるものであると考えている。

六について

 外来種被害防止行動計画(平成二十七年三月二十六日環境省・農林水産省・国土交通省作成)については、令和六年度中の改定に向けて、「外来種被害防止行動計画の見直しに係る検討会」において議論しているところであり、その改定内容は現時点では未定であり、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、現行の同計画においては、「オオクチバスやブルーギルなど、レクリエーションの対象となるような種については、意図的に拡げられることがないよう、定着・未定着水域ともに、侵入の監視、早期発見・通報を行える体制の整備を進めること、また、定着水域は他水域への拡散源となり得るため、逸出防止策を実施することも重要になります。」と記載しているところである。