第213回国会(常会)
内閣参質二一三第一四五号 令和六年六月四日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員神谷宗幣君提出地方自治体職員の国籍に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神谷宗幣君提出地方自治体職員の国籍に関する質問に対する答弁書 一について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府は、従来から、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とし、公権力の行使とは、一般に、統治権の発動として行われる行為を広く指し示すものであり、国又は地方公共団体が人の権利義務を直接変動させ、又はその範囲を画定する効果を法律上認められている行為等人の権利義務に直接具体的効果を及ぼす行為をいい、公の意思の形成への参画とは、国又は地方公共団体の活動について、その企画、立案、決定等に関与することをいうものと解しているが、いずれにせよ、公務員の職務内容は極めて複雑で、かつ、多岐にわたっており、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公務員であるかどうかについては、任命権者において、個々具体の職務内容を検討して、個別に判断するものである。 二について 御指摘の「地方自治体職員」及びお尋ねの「具体的な指針」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、平成十七年一月二十六日最高裁判所大法廷判決(以下「本判決」という。)において、「地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの」を「公権力行使等地方公務員」とし、「国民主権の原理に基づき、・・・原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、・・・外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではない」とされているところ、地方公共団体における外国籍職員(採用時に日本国籍を有していない常勤職員をいう。以下同じ。)の採用については、本判決を踏まえ、地域の実情に応じ、自主的かつ適切に行われるべきものと考えており、総務省として一般的な指針を定めることは、現時点で考えていない。 三について 地方公共団体における外国籍職員の採用状況については、政府として網羅的に把握していないが、総務省において把握している個別の事例としては、令和六年五月二十日の衆議院決算行政監視委員会において、政府参考人が「例えば、群馬県大泉町では、令和六年度実施の職員採用試験から、一般事務職を含む全職種で国籍条項を廃止していますが、課長以上の職や、町税の徴収や滞納処分に関する職などには就くことができないとされております。また、さいたま市では、平成十六年度の採用試験から、消防及び救急救命士を除く全職員で国籍条項を撤廃していますが、市税等の賦課、滞納処分などの業務や、課長以上の職等には就くことができないとされており、看護職等で採用実績があるものと承知をしております。」と答弁したとおりである。 四について 御指摘の「中国の「国家情報法」と「国防動員法」が外国在住の中国人に適用されることを踏まえ」及び「地方自治体職員」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、地方公共団体における外国籍職員の採用については、その国籍にかかわらず、二についてでお答えしたとおり、本判決を踏まえ、地域の実情に応じ、自主的かつ適切に行われるべきものと考えている。 |