質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第一二七号
  令和六年五月二十一日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出自動車EV化を巡る我が国の政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出自動車EV化を巡る我が国の政策に関する質問に対する答弁書

一について

 電気自動車(以下「EV」という。)については、一部の欧米の自動車メーカーにおいて販売目標や投資計画の見直しなどの動きがあることは承知しているが、欧州、米国及び中国の政府においてEVの普及を推進する政策の方向性に大きな変化はなく、世界におけるEVの市場は今後も拡大する一方、ハイブリッド自動車(以下「HEV」という。)を含む内燃機関を搭載する車両については、開発途上国を中心にこれが大きな割合を占める市場も当面存在すると見込んでいる。こうした中で、我が国政府としては、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、EVだけではなく、内燃機関を搭載するHEV及びプラグインハイブリッド自動車(以下「PHEV」という。)並びに燃料電池自動車(以下「FCV」という。)を含めた電動車の普及や合成燃料等の脱炭素燃料の活用といった多様な選択肢を追求することとしており、国内外の情勢を踏まえつつ、引き続き、こうした方針に基づき様々な施策を実施していく考えである。

二について

 御指摘の「カーボンニュートラル実現の大きな柱として、自動車の電動化を据えていること」については、政府として、「二千五十年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(令和三年六月十八日内閣官房、経済産業省、内閣府、金融庁、総務省、外務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省策定。以下「グリーン成長戦略」という。)において、EVだけではなく、HEV、PHEV及びFCVを含めた電動車について、令和十七年までに乗用車の新車販売における割合を百パーセントとする目標を設定しているところであるが、御指摘の「価格の高さ、航続距離の短さ、充電時間の長さ、低高温下でのバッテリー機能の低下、発火した場合の危険性等、対中依存度の高さ、製造から廃車に至るまでのライフサイクルCO2排出量」については、動力源の異なる車両それぞれに優位性及び課題があると認識し、グリーン成長戦略において、EVだけではなく、HEV等を含めた多様な選択肢を追求することとしており、この目標の見直しについては考えていない。

三について

 御指摘の「ICE市場を軽視すること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、一についてでお答えした多様な選択肢を追求することとしており、二についてでお答えした目標を掲げてはいるが、現時点において、特定の動力源の車両の「新車販売を認めない」ような施策は講じておらず、御指摘のように「ICEの新車販売を認めない」との事実はない。その上で、我が国の自動車産業においては、引き続き高い競争力を維持し、国内経済をけん引していくためにも、今後、世界で導入の拡大が予想されるEV、HEV、PHEVなどの電動車の市場を確保していくことが重要であると考えている。

四について

 令和五年度補正予算において措置された「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(以下「CEV補助金」という。)については、環境性能に優れた自動車の車両の購入費用の一部補助を通じて、こうした自動車の導入の初期における需要の創出や量産による価格低減の促進等を目的としているものであるところ、HEVについては、これまでに販売台数の増加に伴い車両価格が低減して従来の内燃機関自動車との価格差が縮小してきていること及び令和五年の我が国の乗用車の新車販売台数において約五割を占めていることを踏まえ、CEV補助金の対象とはしておらず、今後、同様の補助金が措置される場合においても、対象とする車両にHEVを加えることを検討することとはしていない。

五について

 各国においては、それぞれの状況等を踏まえた政策を実施しているものと承知しているが、我が国としては、御指摘の「外国製EV」に対して差別的な取扱いを行うことは、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書―Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第三条に定める内国民待遇の原則に違反するおそれがあり、外国で生産された車両をCEV補助金の対象から除外することは適切ではないと考えている。

 その上で、HEVについては、国内の販売台数のうち、その九割以上を国内で生産された台数が占めているところ、その購入促進に関する財政措置としては、例えば、自動車重量税において、EV、HEVなどを含め環境性能に優れた自動車を優遇する措置を講じているところであり、御指摘の「開発」についても、こうした措置等を通じて促進されるものと考えている。