第213回国会(常会)
内閣参質二一三第一一○号 令和六年四月二十三日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員神谷宗幣君提出日本の水道事業の民営化・外資開放への懸念に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神谷宗幣君提出日本の水道事業の民営化・外資開放への懸念に関する質問に対する答弁書 一について お尋ねの「メリット」については、水道施設の老朽化、人口減少による水道料金の収入の減少等が懸念される中で、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、水道の基盤の強化が図られることが考えられる。 お尋ねの「デメリット」については、御指摘の「「コンセッション方式」による水道事業」の運営が適切に行われない場合、水道料金の急激な上昇、水質の低下及び給水体制の脆弱化が懸念されることや、災害時において水道事業の継続性が確保されないおそれがあることが考えられる。 水道料金の急激な上昇については、地方公共団体の長が公共施設等の管理者等(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号。以下「PFI法」という。)第二条第三項に規定する公共施設等の管理者等をいう。以下同じ。)に該当する場合には、PFI法第十八条第一項の規定により、条例の定めるところにより、PFI法第五条第一項に規定する実施方針を定めることとされており、PFI法第十八条第二項の規定により、当該条例には利用料金(PFI法第二条第六項に規定する利用料金をいう。以下同じ。)に関する事項を定めるものとされている。その上で、「公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン」(令和五年六月内閣府改定)において、「実施方針に運営権に関する公共施設等の利用料金に関する事項を定める場合には、・・・適切な利用料金の上限、幅などについて規定する」と規定されているところ、水道施設運営権者(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号。以下「法」という。)第二十四条の四第三項に規定する水道施設運営権者をいう。以下同じ。)は、PFI法第九条第四号に規定する公共施設等運営権者として、PFI法第二十三条第二項の規定により、当該実施方針に従い、利用料金を定めるものとされていることから、水道料金の急激な上昇が抑制されると考える。 水質の低下については、水道事業者(法第三条第五項に規定する水道事業者をいう。以下同じ。)は、法第四条第一項の規定により、水道により供給される水について、同項各号に掲げる要件を備えるものとしなければならないこととされており、水道事業者である地方公共団体の長は、公共施設等の管理者等として、PFI法第二十八条の規定により、水道施設運営等事業(法第二十四条の四第一項に規定する水道施設運営等事業をいう。)の適正を期するため、水道施設運営権者に対して、その業務若しくは経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができるとされているところ、水道事業者である地方公共団体の長が、必要に応じて水質に関する調査等を行うことにより、必要な要件を満たす水質が確保されると考える。 給水体制の脆弱化については、水道事業者である地方公共団体は、水道施設運営権(法第二十四条の四第一項に規定する水道施設運営権をいう。以下同じ。)を設定する場合であっても、法第十五条第二項の規定により、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならないことから、水道事業者である地方公共団体の長が、公共施設等の管理者等として、PFI法第二十八条の規定により、必要に応じて給水体制に関する調査等を行うことにより、確実な給水体制の確保が図られると考える。 災害時における水道事業の継続性については、水道事業者である地方公共団体が、水道施設運営権を設定しようとするときは、法第二十四条の五第一項の規定により、災害その他非常の場合における水道事業の継続のための措置を記載した水道施設運営等事業実施計画書を国土交通大臣に提出しなければならず、また、法第二十四条の六第一項の規定により、同大臣は、当該計画が確実かつ合理的であると認めるときでなければ、許可を与えてはならないとされていることから、災害時においても必要な対応が行われると考える。 二について 前段のお尋ねについては、御指摘の「外資系企業」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外国企業が水道施設運営権者に一定以上の出資を行うことによるリスク及びお尋ねの「経済安全保障上の観点からの得失」については、政府として特段検討を行っていない。 また、後段のお尋ねについては、外国企業がお尋ねの「水道事業に参入している」かどうか等について、政府として網羅的に把握していない。 三について 御指摘の「ヴェオリア社の日本法人から内閣府への社員の出向」については、特定事業(PFI法第二条第二項に規定する特定事業をいう。以下同じ。)を推進するに当たり、必要な専門的知識及び能力を有する人材が不可欠であったところ、公募により非常勤職員として御指摘の「ヴェオリア社の日本法人」の社員を採用したものである。また、御指摘の「ヴェオリア社の副社長」との「食事」については、福田隆之内閣府大臣補佐官(当時)が自己の飲食に要する費用を自ら負担したものであり、また、御指摘の「スエズ・エンバイロメント社」の「移動用の車」の「提供」については、視察先の周囲の交通事情を踏まえ効率的に視察を行うために利用したものであり、「利益供与」及び「官民癒着」との御指摘は当たらないと考える。 四について 前段のお尋ねについては、政府としては、法を始めとする関係法令の規定により、清浄にして豊富低廉な水の安定供給が確保されると考えていることから、御指摘のような「マイナスとなる影響を及ぼす可能性」は想定していない。 後段のお尋ねについては、海外の事例も参考に、水道法の一部を改正する法律(平成三十年法律第九十二号。以下「一部改正法」という。)等により、官民連携の推進等による水道の基盤の強化を図ったところであり、御指摘の「問題」はないと考える。 五について お尋ねについては、海外の事例も参考に、一部改正法等により、官民連携の推進等による水道の基盤の強化を図ったところであり、必要な対応が行われていると考えている。 六について 御指摘の「公共事業の民営化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、一で御指摘の「コンセッション方式」による「民間委託」を意味するものであるとすれば、「地方公共団体におけるPFI事業について」(平成十二年三月二十九日付け自治画第六十七号自治事務次官通知)において、特定事業を実施する民間事業者の選定に当たっては、地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第百六十七条の十の二第三項に規定する総合評価一般競争入札の活用を図ることとされており、「最低価格落札方式だけ」ではなく、御指摘は当たらない。 |