第213回国会(常会)
内閣参質二一三第一○七号 令和六年四月十九日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員須藤元気君提出半導体助成金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員須藤元気君提出半導体助成金に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「手続き」を定めている特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)は、第二百七回臨時国会において、審議され、成立したものであるが、お尋ねについては、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)及びJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下「JASM」という。)から提出された法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画(以下「特定半導体生産施設整備等計画」という。)に対して、経済産業大臣において、同条第三項の規定に基づく認定(以下「認定」という。)を行ったものであり、「国民に対する情報開示も十分でないままに・・・元経産大臣の一存で・・・決定したのは手続き上おかしい」及び「大臣という立場で得られる公権力を濫用した横領に等しい」との御指摘は当たらないものと考えている。 二について 御指摘の「専門家による・・・デューデリジェンス」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、事業者から提出された特定半導体生産施設整備等計画については、先の答弁書(令和六年三月十五日内閣参質二一三第六四号。以下「第六四号答弁書」という。)一の7についてでお答えしたとおり、経済産業大臣において、法第十一条第三項各号に掲げる要件を満たすものであると認めるときは、認定を行うものであり、その上で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成十四年法律第百四十五号)第十六条の四第一項に規定する特定半導体基金に係る事業については、行政事業レビューの枠組みの下で、経済産業省において、執行状況等を継続的に把握し、厳格な点検に取り組んでいるところである。 また、TSMC及びJASMから提出された特定半導体生産施設整備等計画については、これが法第六条第一項の規定に基づき定められた特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針(令和二年総務省・財務省・経済産業省告示第一号。以下「指針」という。)に適合していることを含め、経済産業省のウェブサイトにおいて当該特定半導体生産施設整備等計画の概要を公開している。 三について 認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、法第十一条第三項各号に掲げる要件を満たすことを始め、法の規定を遵守する必要があり、先の答弁書(令和六年三月五日内閣参質二一三第四六号。以下「第四六号答弁書」という。)五についてでお答えしたとおり、認定事業者が認定に係る特定半導体生産施設整備等計画に従って法第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等を実施していない、又は法第十一条第三項各号のいずれかに適合しないものとなったと認められるときは、経済産業大臣は、法第十二条第二項及び第三項の規定に基づき、当該特定半導体生産施設整備等計画の変更を指示し、又は当該認定を取り消すことができるとされており、これを踏まえ、助成金の交付を受けた認定事業者に対して当該認定に基づく助成金の返還を請求することが必要な場合においては、当該助成金の交付に係る業務を行う国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構において、特定半導体基金事業費助成金交付規程(令和四年四月三十日付け国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構作成)に基づき、請求する返還額については経済産業省からの指示に従い、適切に対応していくものと承知している。このように、認定事業者が特定半導体生産施設整備等計画に基づき事業を進めるに当たって、認定事業者は法の規定を遵守する必要があり、そもそも政府と認定事業者はお互いに契約の相手方となる関係とはされておらず、双方が契約を締結することは想定されない。 四について 御指摘の「開示請求に応じない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、事業者から提出された特定半導体生産施設整備等計画の内容については、当該特定半導体生産施設整備等計画に基づき生産を行う半導体の種類や事業の実施期間といった、経済産業省関係特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律施行規則(令和二年経済産業省令第六十八号。以下「省令」という。)第十一条第三項の規定に基づき経済産業省のウェブサイトにおいて公表する情報を除き、公にすることにより、当該事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第五条第二号イに該当すると考えられることを踏まえ、当該公表情報を除く当該内容を明らかにすることは差し控えることとしており、このことが御指摘の「国民の知る権利を侵害する行為」に当たるとは考えていない。 五について お尋ねについては、第四六号答弁書五についてでお答えしたとおりである。 六について 御指摘の「NEDOのハイパワーコンピュータ向け半導体技術の公募」とは、令和三年五月三十一日に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が、TSMCジャパン3DIC研究開発センター株式会社をその採択先とすることを公表した公募事業を指すものと考えられるところ、当該事業は助成事業であることから、御指摘の「委託先」とは助成先を、また、御指摘の「再委託先」とはポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業費助成金交付規程(令和二年十二月十七日付け国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構作成)第九条第一項第五号に規定する委託先又は共同研究先を、それぞれ指すものと考えられるが、同機構において、現時点において、同号に規定する委託先又は共同研究先として認めているのはイビデン株式会社及び国立研究開発法人産業技術総合研究所のみであり、また、お尋ねの「再々委託」については行われていないものと承知している。 また、御指摘の「契約内容」については、これを公にすることにより、御指摘の「委託元と委託先」の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)第五条第二号イに該当すると考えられることを踏まえ、同機構において、これを公表することは差し控えているものと承知している。 七から九までについて 地下水の取水については工業用水法(昭和三十一年法律第百四十六号)や建築物用地下水の採取の規制に関する法律(昭和三十七年法律第百号)による規制等を、排水については水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)による規制等を、それぞれ実施し、御指摘の「大企業の水の乱用による水の枯渇や工業廃水による環境破壊」の防止を図ることとされており、また、法においては認定事業者に対して御指摘の「水の汲み上げ量、工場排水の排出量、電力使用量」に関する申請又は報告を求めていないことから、政府としては、お尋ねの「JASM第一工場及び第二工場の水の汲み上げ量、工場排水の排水量、電気使用量」について御指摘の「把握」及び「公開」は行っておらず、また、御指摘のような「課税」についても検討を行っていない。 また、「今後、TSMCあるいはJASMが日本国内で工場建設計画を政府へ提出する際に、水の汲み上げ量、工業廃水の排水量、電力使用量の開示を義務付けるべき」との御指摘については、全国的な水環境の動向や企業への影響等の要素を総合的に勘案して必要な措置の在り方の検討を行っていくことが重要であると考えており、御指摘の「義務付け」の要否については、予断をもって見解を示すことは差し控えたいが、いずれにせよ、御指摘も参考にしつつ、引き続き、不断の検討を行いながら、半導体関連産業に対する支援に積極的に取り組んでいく所存である。 なお、法第十一条第三項第一号において、特定半導体生産施設整備等計画が指針に適合することをその認定の要件としているところ、指針第四の一の8において、国内関係法令を遵守することを求めていることから、法令に基づいて公表が必要な事項については、TSMC及びJASMにおいて適切に公表していくものと承知している。 十について 御指摘の「環境に対する影響についての検査、調査を受けて」の具体的に意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、お尋ねの「詳細を県に報告しているのか」については、政府として承知していない。 また、御指摘の「工場内部設計の詳細情報」については、経済産業省においては、事業者から特定半導体生産施設整備等計画が提出された場合には、省令第九条第一項に規定する様式第十三に基づき、導入予定の設備のリスト及び設備の配置図の提出を求め、その内容を確認している。 なお、事業者から提出された特定半導体生産施設整備等計画の内容については、省令第十一条第三項の規定に基づき同省のウェブサイトにおいて公表する情報を除き、これを公にすることにより、当該事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第五条第二号イに該当すると考えられることを踏まえ、当該公表情報を除く当該内容を明らかにすることは差し控えることとしている。 十一について 御指摘の「社会貢献」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「契約されているのか」については、先の答弁書(令和六年三月二十九日内閣参質二一三第七六号)三についてでお答えしたとおりである。また、お尋ねの「十年間の継続生産義務が課せられているが、供給義務は課せられていないのは政策として不完全ではないか」については、第四六号答弁書五についてでお答えしたとおりである。 また、御指摘の「TSMC及びJASMが日本で巨大な工場を建設したとしても、日本の地元企業の事業を奪い、倒産させる結果となれば、日本における半導体サプライチェーンは壊滅的な打撃を受ける。日本政府は、そこまで想定をしているのか」については、第六四号答弁書一の1及び6についてでお答えしたとおり、我が国において特定半導体(法第二条第四項に規定する特定半導体をいう。)の生産施設等が整備され、生産が行われることは、半導体製造装置や半導体材料等の関連産業の集積、人材育成等を通じて、我が国における半導体関連技術の向上や半導体関連産業の発展に資するものであると考えており、政府として、御指摘のような事態は想定していない。 なお、第六四号答弁書一の1及び6についてでお答えしたとおり、TSMCの熊本への進出が、九州地方及び我が国における情報通信機械に関連する産業に大きな経済波及効果等をもたらしているものと認識している。 十二について 御指摘の「TSMCとその子会社にのみ」、「贈与する」及び「優遇」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、第六四号答弁書一の4についてでお答えしたとおりである。 |