第213回国会(常会)
内閣参質二一三第八四号 令和六年四月五日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員須藤元気君提出半導体政策の妥当性に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員須藤元気君提出半導体政策の妥当性に関する再質問に対する答弁書 一の1について 御指摘の「技術の移転」及び「直ちに」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、先の答弁書(令和六年三月十五日内閣参質二一三第六四号。以下「前回答弁書」という。)一の1及び6についてにおいて、先の質問主意書(令和六年三月六日提出質問第六四号。以下「前回質問主意書」という。)一で御指摘のように「外資系企業」によるものであっても、我が国において特定半導体(特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)第二条第四項に規定する特定半導体をいう。以下同じ。)の生産施設等が整備され、生産が行われることは、半導体製造装置や半導体材料等の関連産業の集積、人材育成等を通じて、我が国における半導体関連技術の向上や半導体関連産業の発展に資するものであると考えている旨回答しており、「回答がなされていない」との御指摘は当たらないものと考えている。 一の2について お尋ねについては、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)及びJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下「JASM」という。)から提出された法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画(以下「特定半導体生産施設整備等計画」という。)において日本企業への特定半導体の供給の見通しについて記載があったこと、また、TSMC及びJASMは当該特定半導体生産施設整備等計画に沿って事業を進める必要があることを当然に認識した上で当該特定半導体生産施設整備等計画を提出していると考えられることなどから、経済産業大臣において、御指摘の「日本の顧客が中心」との記載を含む当該特定半導体生産施設整備等計画に対して同条第三項の認定(以下「認定」という。)をしたものである。 一の3について 前段のお尋ねについては、前回答弁書一の3についての後段の答弁は、法第十一条第三項第四号の規定に基づき、認定を受けた事業者に求められる対応に関してお答えしたものであり、政府に求められる対応についてお答えしたものではない。 後段のお尋ねについては、同号において特定半導体生産施設整備等計画の認定の要件として、特定半導体等(同項第二号に規定する特定半導体等をいう。以下同じ。)の需給がひっ迫した場合の短期的な対応として、「特定半導体等の需給がひっ迫した場合における増産」を、将来において特定半導体等の需給がひっ迫した場合に備えるために特定半導体等の生産能力を強化するという観点による中長期的な対応として、「特定半導体等の生産能力を強化するための投資及び研究開発」を、それぞれ規定しており、これらは国内における特定半導体の安定的な供給の確保のために有効であると考えている。 一の4について お尋ねについては、前回答弁書一の1及び6について及び一の4についてで述べたとおりであり、「妥当性を説明できていない」との御指摘は当たらないものと考えている。 一の5について 御指摘の「令和五年度基金シート」における「合計売上高」と御指摘の「総計一兆六千九百九十二億円の投資額」とを比較することで特定半導体等補助事業の御指摘の「費用対効果」を分析することは想定していないため、お尋ねの「費用対効果(B/C)は一を超えている根拠」についてお答えすることは困難であるが、御指摘の「半導体製造装置や半導体材料等の関連産業の集積、人材育成等についての効果」を含め、特定半導体基金事業の効果については、前回答弁書一の4についてで述べた令和五年十一月二十日の衆議院本会議における岸田内閣総理大臣の答弁において示された考え方に基づき、御指摘の「費用対効果」を含め、検証を行っていく考えである。 具体的には、前回答弁書一の7についてで述べたとおり、行政事業レビューの枠組みの下で、経済産業省において執行状況等を継続的に把握し、厳格な点検に取り組んでいるところであり、当該点検に当たって、例えば、TSMC及びJASMから提出された特定半導体生産施設整備等計画を含め、令和四年七月までに認定を行った二つの特定半導体生産施設整備等計画に基づく事業に対して、証拠に基づく政策立案(EBPM)の手法を取り入れた効果の分析を実施し、大きな経済効果や雇用創出の効果が見込まれることを確認するなどしている。これまでの経済波及効果等については、前回答弁書一の1及び6についてで述べたほか、民間の試算によると、熊本県でのJASMによる新たな半導体の工場の建設を契機に、同県において令和四年から十年間で約六・九兆円の経済効果と一万人を超える雇用の創出が期待されており、また、既に、当該工場の建設を契機に、JASMによる投資も含め、五十社以上による同県における新規の投資が公表されるなど、産業集積等の効果が現れてきていると認識している。 今後も引き続き、特定半導体基金事業について不断の検証や改善の努力を行ってまいりたい。 一の6について 御指摘の「六/七ナノメートルの半導体」の需要を含め、半導体の国際的な需給の動向等については、経済産業省において、前回答弁書一の8についてで述べたとおり、各種の統計等の公表資料のほか、事業者や、調査会社等との情報交換を通じて、適切な把握に努めているところ、お尋ねの「どのような分野でどの程度の金額の需要があると試算しているのか」といった詳細については、公表しないことを前提として入手した情報を参考にして分析しているため、お答えすることは差し控えたい。 また、お尋ねの「責任」の具体的に意味するところが明らかではないため、後段のお尋ねについてお答えすることは困難であるが、今後も、半導体市場の情報を適切に把握し、御指摘の「二〇三〇年に、国内で半導体を生産する企業の合計売上高十五兆円超、先端ロジック半導体で一・五兆円の売上目標」を達成すべく、必要な施策を講じていく考えである。 二について 前回質問主意書三については、「現状の支援制度」のその具体的に意味するところが明らかではない「国家戦略」としての「整合」に関する「政府の見解」についてのお尋ねであり、今回お尋ねの「約八百倍の隔たりがあることの妥当性について」の「合理的な説明」を求めたものではないと認識しているが、いずれにせよ、半導体の重要性及び特定半導体の生産基盤の整備等に関する支援策については、前回答弁書一の1及び6について及び一の4についてで述べたとおりであり、政府としては、それぞれの政策目的に沿って適切な規模の予算事業を含む必要な支援を行っているところである。 また、御指摘の「サプライチェーン上不可欠性の高い半導体」については、経済産業省において、「産業用スペシャリティ半導体」として、御指摘の「半導体・デジタル産業戦略」(令和五年六月六日経済産業省改定)の対象に含めており、また、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七条の規定に基づき特定重要物資として政令で指定された半導体等の生産基盤の整備等に関して民間事業者等を支援することを通じて我が国における当該半導体等の安定供給の確保を図ることを目的として国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に造成した安定供給確保支援基金の支援対象にも含めており、「戦略が欠落している」との御指摘は当たらないものと考えている。 |