質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第八〇号
  令和六年四月五日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員ながえ孝子君提出公職選挙法、特に個人演説会場用看板の類等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員ながえ孝子君提出公職選挙法、特に個人演説会場用看板の類等に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「掲示」は、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号。以下「法」という。)上、文書図画を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることを指すものと解されている一方、「使用」は、一般に、「使うこと。用いること。(出典 大辞林)」を指す語と考えられるが、法第百六十四条の二について、昭和四十四年の法の一部改正における提案理由説明では「個人演説会の会場外に掲示することができる文書図画は、一定の立て札または看板の類に限ることとする反面、これらの立て札及び看板の類は、演説会場以外のいずれの場所にも掲示することができること」とするために定められたものと説明されているものと承知しており、同条第五項の「使用」は、実態として、これまでも「掲示」を想定して用いられてきたものと考えている。

 また、御指摘の「のぼり」については、法が規定する立札及び看板の類に含まれるものと解されており、同項の規定により個人演説会等の会場外の場所において掲示する場合には、同項ただし書の規定が適用されることとなる。

三について

 御指摘の「このような現状を分かっていない者が公選法の解釈を下すこと」及び「このような現場を知らない者が公選法を解釈している実態」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、総務省に法についての問合せ等があれば法の解釈や法に関する制度の考え方をお示ししているところである。

四について

 お尋ねの「街頭」とは、一般に、「まちの路上。まちなか。(出典 大辞林)」を意味するものとされていると承知しているが、御指摘の「街頭その他適当な場所」との文言を用いて、法第百六十四条の二第五項において、同条第二項に規定する立札及び看板の類は、個人演説会等の会場外のいずれの場所においても選挙運動のために使用することができる旨を説明しているものと考えている。

 なお、同条第五項ただし書において、当該立札及び看板の類の掲示箇所については、法第百四十五条第一項の規定を準用し、国若しくは地方公共団体が所有し、若しくは管理するもの又は不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所(橋りょう、電柱、公営住宅その他総務省令で定めるものを除く。以下同じ。)には掲示することができないこととされている。

五について

 前段のお尋ねについては、御指摘の「法の解釈を変えた場合」の具体的に意味する範囲が必ずしも明らかではないが、裁判例も含め、法の解釈や法に関する制度の考え方については、必要に応じて、各選挙管理委員会に対する通知や総務省ホームページへの掲載等により周知しているところである。

 後段のお尋ねについては、法第百六十四条の七第二項により、同条第一項の規定による街頭演説における選挙運動に従事する者は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)の定めるところにより、一定の腕章又は法第百四十一条の二第二項の規定による腕章を着けなければならないとされているところ、いずれにしても、法第百九十七条の二の規定する専ら選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者については、当該自動車又は船舶の上において連呼行為等の選挙運動を行うことを本務として雇い入れられた者をいうものと解されている。

六について

 御指摘の「道路使用においても、選挙運動用自動車の交通規制を一部対象外としている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、道路の使用については、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第七十七条第一項第四号において、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が定めた行為をしようとする者は、警察署長の許可を受けなければならないとされ、また、交通の規制については、同法第四条第一項及び第二項において、公安委員会がその対象を限定して行うことができるとされており、これらの規定を踏まえ、選挙運動のために使用される自動車の取扱いに当たっては、各公安委員会においてそれぞれ適切に判断し、対応しているものと承知している。

七について

 法第百六十四条の二第五項の規定により個人演説会等の会場外の場所において使用することができる立札及び看板の類の掲示箇所については、法第百四十五条第一項の規定を準用し、国若しくは地方公共団体が所有し、若しくは管理するもの又は不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所には掲示することができないこととされていることから、御指摘のように「自治体に検討するよう依頼」することは考えていない。

八について

 御指摘の「文書図画の掲示」の具体的に意味する範囲が必ずしも明らかではないが、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、法第百四十七条、第二百一条の十一第十一項、第二百一条の十四第二項等の関係規定に基づき対応しており、御指摘のように「検討を促」すことは考えていない。

九について

 法第百六十四条の規定に基づき個人演説会の施設の使用を無料とする場合を除き、法上、選挙運動や政治活動に関して地方公共団体の公の施設等の利用に係る使用料を免除する規定はないことから、その取扱いについては、各地方公共団体において判断すべきものと考える。

十について

 御指摘の「中央選挙管理会で明確に定められるべき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、五についてでお答えしたとおり、法の解釈や法に関する制度の考え方を周知しているところであり、都道府県又は市町村の選挙管理委員会においては、これらに基づき、選挙を適切に管理執行しているものと承知しており、御指摘のように「国政選挙のルールは全国どこでも統一した判断が求められ」るが、「そうなっていない実態を是とする」ものではない。