質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第七三号
  令和六年三月二十六日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「移民」及び「移民政策」という言葉は様々な文脈で用いられており、それらの定義について一概にお答えすることは困難である。

二の1について

 御指摘の「日本と相手国との関係が様々な理由で良好でない場合」、「日本の商業上の権利を搾取する」、「国際社会から非難されるほどの人権侵害」及び先の質問主意書(令和五年十二月八日提出質問第八六号)五の後段でお尋ねの「選定基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特定の国籍の外国人の入国を認めるか否か、認める場合にどのような条件の下にこれを認めるかは、当該国と我が国との二国間関係等を総合的に考慮して判断することとしているところである。

二の2について

 お尋ねの「相手国及びその送出機関の選定方法」の意味するところが必ずしも明らかではないが、育成就労制度については、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」(令和六年二月九日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定。以下「関係閣僚会議決定」という。)において、「二国間取決め(MOC)を新たに作成し、悪質な送出機関の排除に向けた取組を強化するとともに、原則として、当該取決めを作成した国の送出機関からのみ受入れを行うものとする」との方針で検討を進めることとしており、送出国となり得る国との間で、当該国からの受入れに係る需要等を踏まえつつ二国間取決めの作成に向けた取組等を行い、原則として、当該取決めを作成した国の送出機関からのみ外国人の受入れを行うこととするとともに、当該取決めに基づき、送出国政府に対して、悪質な送出機関の排除に向けた申入れを行うなどの方策を講じていく考えである。

三の1について

 特定技能制度については、これまでも、出入国在留管理庁のウェブサイトにおいて同制度に関する資料を掲載するなどしてきたところであり、今後も、同制度の施行状況等を踏まえつつ、適時適切な情報発信等に努めてまいりたい。

三の2について

 政府としては、育成就労制度の創設等をするため、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案(以下「法律案」という。)を令和六年三月十五日に閣議決定し、今国会に提出したところであり、現時点において、お尋ねの「特定技能の在留資格や「育成就労制度」の変更点について、・・・「国民に丁寧に説明する」ための方法と、その説明を行う予定の時期」の詳細についてお答えすることは困難である。

四について

 特定技能の在留資格による外国人の受入れについては、先の答弁書(令和五年十二月二十二日内閣参質二一二第八六号。以下「前回答弁書」という。)七についてで述べたとおり、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の十の規定に基づき法務大臣が定めた「出入国在留管理基本計画」(平成三十一年四月法務省策定)において、「関係行政機関と連携して、受入れ分野における人材不足の状況、特定の地域への集中状況や人材不足が深刻化している地域の状況、在留資格「特定技能」で受け入れられている外国人・・・の在留状況等を正確かつ継続的に把握し、必要な措置について多角的な視点に立って検討していく」こととし、さらに、関係閣僚会議決定において、「育成就労制度及び特定技能制度においては、受入れ見込数や受入れ対象分野は適時・適切に変更できるものとし、それらの設定や特定技能評価試験のレベルの評価等は有識者・労使団体等で構成する新たな会議体の意見を踏まえて政府が判断するものとする」との方針で検討を進めることとしていることから、現時点において、お尋ねの「検討の方法と時期、結論を出す時期の目処、可能な範囲で考えられる本件対応内容」についてお答えすることは困難である。

五について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、外国人労働者の受入れについては、前回答弁書九についてで述べたとおりである。

六について

 外国人の受入れに係る課題への対応や制度設計を行うに当たっては、我が国の実態を踏まえ、諸外国の制度も参考にしつつ、幅広い観点から検討を行ってきたところであるが、参考にする諸外国の制度については、課題や制度設計の内容に応じて様々であるため、「具体的にどの国のどのような例を参考にしたのか」とのお尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

七について

 前段のお尋ねについては、お尋ねの「従来の技能実習制度で設定されていた五年間の育成期間を三年へと短縮する理由」の意味するところが必ずしも明らかではないが、育成就労制度における「育成期間」については、令和五年十一月三十日に技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議が取りまとめた「最終報告書」(以下「最終報告書」という。)において、「現行の技能実習一号及び二号の実習期間に相当する三年間の就労及び育成の期間を通じて、未熟練労働者を特定技能一号の技能水準の人材に育成するものとすべきとの意見が複数あ」り、「これに対しては、業種によっては技能実習三号までの実習期間に相当する五年間の制度とすべき、技能修得のために必要な期間は業種により異なる場合があることも考慮すべきといった意見も一部あったが、三年間の人材育成期間で特定技能への移行を目指すシンプルな制度にすべきという意見もあり、このような観点を踏まえた制度とする必要がある」ことが指摘されている。関係閣僚会議決定においては、これらを踏まえ、育成就労制度について、「基本的に三年間の就労を通じた育成期間において、対象となる外国人ごとに育成就労計画を定めた上で計画的に特定技能一号の技能水準の人材に育成することを目指すものと」するとの方針で検討を進めることとしており、この方針に基づき、今国会に法律案を提出したところである。

 後段のお尋ねについては、法律案第二条の規定による改正後の外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律は、その第一条において、育成就労に関し、育成就労産業分野(特定産業分野(入管法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に規定する特定産業分野をいう。)のうち、外国人にその分野に属する技能を本邦において就労を通じて修得させることが相当であるものとして主務省令で定めるものをいう。)に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する人材を育成するとともに、当該育成就労産業分野における人材を確保することを目的とすることとしており、御指摘の「我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与する」ことは、制度の目的とすることとはしていない。

八について

 特定技能制度については、最終報告書において、登録支援機関(入管法第十九条の二十七第一項に規定する登録支援機関をいう。以下同じ。)について、「職業生活から日常生活までの全般的な支援を行うことができていないものも少なくな」く、「外国人への支援を適切に行えるよう、支援責任者等の講習受講の義務化や支援を適切に行えるような人員要件を設けることで体制強化を行」うべきこと、登録支援機関による一号特定技能外国人支援(入管法第二条の五第六項に規定する一号特定技能外国人支援をいう。)の全部又は一部の実施の委託(入管法第十九条の二十二第二項の規定による委託をいう。)について、「登録支援機関の要件厳格化の結果、登録支援機関を利用しない受入れ機関の増加という悪影響を招くおそれがあると考えられ」るため、「支援業務を委託する場合には、その委託先については登録支援機関に限るなどすべき」こと、特定技能所属機関(入管法第十九条の十八第一項に規定する特定技能所属機関をいう。)の要件について、「特に登録支援機関を利用しない場合にも特定技能外国人の適切な支援をなし得るよう、受入れ機関の要件を適正化して全体の底上げを図るべき」ことなどが指摘されている。

 関係閣僚会議決定においては、これらを踏まえ、特定技能制度について、「特定技能外国人に対する支援が適切になされるよう、受入れ機関が支援業務を他に委託する場合の委託先を登録支援機関に限ることとした上、登録支援機関及び受入れ機関の要件の厳格化・適正化を行う」との方針で検討を進めることとしており、法律案第一条の規定による改正後の入管法第十九条の二十二第二項において、「特定技能所属機関は、第十九条の二十七第一項に規定する登録支援機関以外の者に一号特定技能外国人支援の全部又は一部の実施を委託してはならない」こととしたものである。