質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第七一号
  令和六年三月二十六日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員須藤元気君提出日本が実施すべき半導体支援策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤元気君提出日本が実施すべき半導体支援策に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 「この報道は正しいか」とのお尋ねについては、個別の報道の内容に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。また、御指摘の「過去に経済産業省が実行した業界再編政策は・・・悉く失敗しており」の具体的に意味するところが明らかではなく、「そのような業界再編政策を前提とした支援策は間違いではないか。」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。

 いずれにせよ、御指摘の「経済安全保障推進法によるパワー半導体支援」に当たっては、御指摘の「パワー半導体」の国内外における需要の増加の状況や経済安全保障上の重要性に鑑み、当該半導体に係る国際的な競争の更なる激化が見込まれる中で、我が国において関連企業による連携や事業の再編も念頭に、当該半導体に係る国際競争力や産業基盤を将来にわたって維持し、及び確保し、安定的な供給体制の構築及び生産基盤の強化を図ることが重要であると考えていることから、このために必要と考えられる投資の規模として、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号。以下「法」という。)第八条第一項の規定に基づき経済産業大臣が定めた「半導体に係る安定供給確保を図るための取組方針」(令和五年一月十九日経済産業省公表。以下「取組方針」という。)において、「原則として事業規模二千億円以上」としたものである。

一の3について

 御指摘の「中小の半導体企業を切り捨てる政策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、法に基づく御指摘の「マイコン・アナログ」に関連する産業に対する支援に当たっては、御指摘の「マイコン・アナログ」の国内外における需要の増加の状況や経済安全保障上の重要性に鑑み、当該半導体に係る国際的な競争の更なる激化が見込まれる中で、我が国において、当該半導体に係る国際競争力や産業基盤を将来にわたって維持し、及び確保し、需要に応じた安定的な供給体制の構築を図ることが重要であると考えていることから、当該支援の対象から中小企業を除外しているわけではないが、このために必要と考えられる投資の規模として、取組方針において、「原則として事業規模三百億円以上」としたものであり、「不適切ではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。

二の1について

 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号。以下「マラケシュ協定」という。)附属書一Aの補助金及び相殺措置に関する協定(以下「補助金協定」という。)第五条において「加盟国は、1.1及び1.2に規定する補助金によって、他の加盟国の利益に次のいずれの悪影響も及ぼすべきではない。」と、同条(a)において「他の加盟国の国内産業に対する損害・・・」と、同条(b)において「他の加盟国に対し千九百九十四年のガットに基づいて直接又は間接に与えられた利益・・・の無効化又は侵害・・・」と、及び同条(c)において「他の加盟国の利益に対する著しい害・・・」とそれぞれ規定されているところ、御指摘の「経済安全保障推進法に基づく従来型半導体への補助制度」については、国民の生存に必要不可欠な若しくは広く国民生活若しくは経済活動が依拠している重要な物資(プログラムを含む。)又はその生産に必要な原材料、部品、設備、機器、装置若しくはプログラムについて、外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するために、法第七条の規定に基づき経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令(令和四年政令第三百九十四号)第一条により特定重要物資として指定された半導体の安定的な供給確保のために行っているものであり、外国製の半導体を市場から排除するものではなく、補助金協定第五条に規定されている他の加盟国の利益に対する著しい害等の悪影響を及ぼすものであるとは考えておらず、「WTO協定との整合性の観点で問題がある」との御指摘は当たらないものと考えている。

二の2及び3について

 マラケシュ協定附属書二の紛争解決に係る規則及び手続に関する了解に基づく世界貿易機関における紛争解決の手続の利用については、我が国として、同機関に加盟する他の国及び地域においてとられた措置とマラケシュ協定及びその附属書との整合性、当該措置の我が国への影響等を総合的に考慮し、必要に応じて検討を行ってきているところ、台湾又は米国による御指摘の半導体関連産業に対する支援については、これまで、こうした考え方に基づき、当該手続の利用の検討も含め、必要な対応をしてきているが、これ以上の詳細については、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

三について

 御指摘の「政府が発表している一連の半導体政策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、半導体関連産業に対する支援策については、国内外における半導体の種類や用途ごとの需要と供給のバランスの変化、各国政府の政策動向、半導体関連企業の経営状況等の要素を総合的に勘案して検討を行っていくことが重要であると考えており、御提案の「支援策」の要否について、予断をもってお答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、御提案の「支援策」も参考にしつつ、引き続き、不断の検討を行いながら、半導体関連産業に対する支援に積極的に取り組んでいく所存である。