第213回国会(常会)
内閣参質二一三第一二号 令和六年二月十三日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員神谷宗幣君提出クマの「指定管理鳥獣」指定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神谷宗幣君提出クマの「指定管理鳥獣」指定に関する質問に対する答弁書 一及び二について お尋ねの「どのような環境的変化が関係していると考えられるか」については、政府としては、堅果類の凶作に加え、中山間地域の社会環境の変化等を背景とする里山等での自然環境の変化が影響していると考えている。 その上で、政府としては、「生物多様性国家戦略二〇二三―二〇三〇」(令和五年三月三十一日閣議決定)に記載しているとおり、「野生鳥獣との軋轢緩和に向けた取組を強化する」ことを方針としている。 三及び七について 環境省においては、地方公共団体への技術的支援として作成した「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)改定版」(令和四年三月環境省改定。以下「ガイドライン」という。)において、「ゾーニング管理」の考え方や実施方法を示すとともに、令和四年度から「クマ類の出没に対応する体制構築事業」において、都道府県が行う「ゾーニング管理」を強化するためのモデル事業を実施している。また、農林水産省においては、鳥獣被害防止総合対策交付金(以下「交付金」という。)により、緩衝帯の設置等による生息環境管理の取組を支援している。 加えて、令和五年度補正予算において、環境省では、都道府県を対象に、クマ類による人の生活圏への出没防止等を強化するためのモデル事業を実施することとしている。 これらの実施状況を踏まえ、人とクマ類のすみ分けを進めるために必要な対策を検討してまいりたい。 四について 環境省においては、クマ類の全国的な生息分布について、自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第四条に基づき、自然環境保全基礎調査を行っている。 また、御指摘の「生息環境整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省においては、農地周辺にクマ類を寄せ付けないため、交付金により、緩衝帯の設置等による生息環境管理の取組を支援している。 五について 環境省においては、ヒグマ及びツキノワグマの特性を踏まえ、地域の実情に応じたクマ類の保護及び管理が適切に行われるよう、ガイドライン及び「クマ類の出没対応マニュアル―改定版―」(令和三年三月環境省自然環境局改定)を作成して、地方公共団体への技術的支援を行っている。 六について お尋ねの「どのような効果を期待しているか」については、都道府県等による集中的かつ広域的なクマ類の管理により、クマ類による生活環境及び農林水産業への被害の軽減に資するものであると認識している。 また、お尋ねの「クマの保護とどのように調和するか」については、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針(令和三年環境省告示第六十九号)において、「指定管理鳥獣の管理に当たっては、地域個体群の存続に配慮しつつ、必要な捕獲等を計画的かつ積極的に推進する」としており、地域の個体群を将来にわたり安定的に維持させながら、人とクマ類のすみ分けを進める必要があると考えている。 八について 御指摘の「クマを山から里におびき出して獲る」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「ハチミツ等の強力な誘引物を入れた罠」で「熊の捕獲を実施している」事例及びクマ類以外の獣類を目的とする捕獲に当たって、誤ってクマ類が捕獲される事例は承知している。 九について お尋ねの「山の中に生息し、人的被害の危険性が少ないクマを捕獲しないための方策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、ガイドラインにおいて、「健全な個体群の維持を担保するためのクマ類を保護する『コア生息地』」については、「保護を中心とした対応を行う」等としているところである。 |