質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第一一号
  令和六年二月九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員須藤元気君提出パンデミック条約及び国際保健規則改正案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤元気君提出パンデミック条約及び国際保健規則改正案に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「本条約が協定又はその他の文書になった際に、我が国はそれらの契約を我が国憲法の上位として位置づけるのか」については、その意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「パンデミック条約」については、現在交渉中であるため、お答えすることは困難である。また、お尋ねの「WHOが国際機関であるため、「国際法規」として位置づけられるのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「WHO憲章」については、憲法第九十八条第二項の「日本国が締結した条約」に該当するものである。その上で、我が国における憲法と「条約」との間の国内における適用上の効力の優劣関係については、一般には憲法が「条約」に優位すると解される。

 また、お尋ねの「我が国におけるIHRの位置づけ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世界保健機関憲章(昭和二十六年条約第一号)第二条(k)においては、世界保健機関の任務として、「国際的保健事項に関して、條約、協定及び規則を提案し、並びに勧告を行うこと並びにこれらの條約、協定、規則及び勧告がこの機関に與え且つこの機関の目的に合致する義務を遂行すること」と定められ、また、同憲章第二十一条において、「保健総会」は、「疾病の国際的まん延を防止することを目的とする衛生上及び検疫上の要件及び他の手続」等に関する「規則を採択する権限を有する」と定められており、国際保健規則は同条にいう「規則」に該当し、当該規則そのものは「条約」ではない。

二について

 御指摘の「それらを全て公開し、 内容とプロセスの透明性を高めることが民主主義国家としてのあるべき姿」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「パンデミック条約」及び「IHR改正案」については現在交渉中であり、御指摘の「我が国からWHOに対して提出又は提出予定のパンデミック条約の修正案及びIHR改正案」について、これらに関する交渉への影響に鑑み、現時点では御指摘のように「公開」していないところではあるが、当該交渉に関する「内容とプロセス」に係る正確な情報について、外務省及び厚生労働省のホームページへの掲載等を通じて国民に対して適時に情報提供を行ってきており、引き続き、こうした取組を進めていく。

三について

 御指摘の「余裕をもって事前に審議」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「パンデミック条約」については、現在交渉中であることから、「パンデミック条約」に係るお尋ねについてお答えすることは差し控えたいが、憲法第七十三条第三号について、一般論として申し上げれば、同号において、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と定められているところに従って、政府として、採択等された条約を締結すること、すなわち当該条約に拘束されることについての我が国の意思を最終的に確定することについて、「国会の承認」を求めてきており、緊急を要するため「国会の承認」を得る時間的余裕がないなど合理的な理由がある場合を除いては「事前に」、すなわち当該条約の締結の前に国会の承認を得るように従来から努めてきているところである。

 また、国際保健規則の改正については、一についてでお答えしたとおり、同規則は世界保健機関憲章上の規則に該当するものであり、同規則そのものは条約ではなく、「国会の承認」を要するものではないが、国会においては、令和五年十二月六日の衆議院厚生労働委員会においてこれに関する交渉の現状について答弁している。なお、御指摘の「パンデミック条約」についても、例えば同日の衆議院外務委員会において「パンデミック条約」に関する交渉の現状について答弁している。今後とも、これらに関連する質問があれば丁寧にお答えしていく。

四について

 お尋ねの「我が国からWHOに対して提出されるパンデミック条約の修正案やIHR改正案の責任」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府としては、パンデミック(新型コロナウイルス感染症等の世界的な大流行をいう。)を予防し、それに対する備え及び対応を強化することが重要であるとの観点から、外務省及び厚生労働省が中心となって、御指摘の「パンデミック条約」の作成及び国際保健規則の改正について、これらに関する交渉に、積極的かつ建設的に参加し、対応してきている。