第213回国会(常会)
質問第二三八号 薬価中間年改定の廃止の必要性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年六月二十一日 小西 洋之
参議院議長 尾辻 秀久 殿 薬価中間年改定の廃止の必要性に関する質問主意書 私は、令和四年に「毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書」(第二百八回国会質問第四四号)及び「薬価の中間年改定の在り方等に関する質問主意書」(第二百十回国会質問第八〇号)を、令和五年に「薬価改定を含む医薬品の諸問題に関する質問主意書」(第二百十二回国会質問第一二三号)をそれぞれ提出し、薬価改定による薬価の頻繁な引下げが引き起こしている諸問題について繰り返し指摘してきた。 ところが、原材料費やエネルギー価格が高騰する中にあって、薬価引下げは依然として続けられている。令和六年度診療報酬・薬価等改定では、革新的新薬のイノベーションの適切な評価を推進するための薬価上の措置や、医療上必要性の高い品目の安定供給確保につながるための薬価上の措置が図られるなど一定の対応はなされたものの、薬価は〇・九七パーセント、国費ベースで約千二百億円引き下げられた。 令和三年度からは、原則として二年に一度行われる診療報酬改定の中間の年にも薬価改定が行われるようになり、令和七年度は実施されれば三度目の中間年改定となる。しかしながら、毎年薬価改定による頻繁な薬価引下げは製薬企業、医薬品卸業者、医療機関、薬局等、関係機関に極めて大きな影響を及ぼしている。 例えば、本年三月八日付の薬事日報の記事によれば、同紙が製薬企業六十九社を対象に行った「二〇二四年度薬価改定アンケート」において、中間年改定に対する問いに回答のあった四十社中二十三社が「廃止」、十四社が「運用見直し」を求め、両回答を合わせた九割超が中間年改定の問題性を認識しているとのことである。 また、日本医薬品卸売業連合会が本年四月二十五日付で公表した、主に医療用医薬品を取り扱う四十五社を対象とした「中間年薬価改定についてのアンケート調査」結果によれば、中間年改定による業務負担について、約八十五パーセントが「大幅に増加した」、約十三パーセントが「増加した」と回答している。同アンケート結果では、中間年改定による価格交渉等の業務の増大が、従業員の意欲低下、心身の疲弊、離職者の増加等につながっている等の回答も示されている。 本年六月十一日付の「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四(原案)」においては、「二〇二五年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進や安定供給確保、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その具体的な在り方について検討する」と記された。薬価の中間年改定については、第二百十三回国会においても、野党議員からのみならず、与党の幹部からも公然と見直しを求める意見が示されるなど、与野党を問わず多くの議員の間で広く問題が共有されている。にもかかわらず、政府の方針が、その廃止も含めた検討にまで踏み込んでいないのは遺憾である。中間年改定の廃止も含め、早急に検討を行った上で方向性を示す必要があるとの認識から、以下質問する。 一 政府は、製薬企業の多くが中間年改定の廃止、運用見直しを求めていることを認識、把握しているか。また、その理由についてどのように認識しているか。 二 政府は、医薬品卸業者の多くが中間年改定によって業務を増大させている状況や、その従業員の中には意欲低下、心身の疲弊、離職につながっている者もいるという状況を認識、把握しているか。また、その状況を是正するためにどのような対応策が必要と考えるか。 三 政府は、私の質問主意書(第二百十二回国会質問第一二三号)への答弁書において、「「医薬品産業」における賃上げを図るためには、事業者による生産性の向上や海外市場の開拓等を通じた収益性の向上などが重要であると考えている」としている。しかしながら、薬価の頻繁な引下げが医薬品産業の体力を奪い、事業者による生産性の向上や海外市場の開拓等を妨げることにつながるのではないか。 四 令和五年十二月二十日付「令和六年度薬価制度改革の骨子」においては、「診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方については、引き続き検討することとし、令和六年度速やかに議論を開始すること」とあるが、同様の文言は令和四年度及び令和五年度の骨子においても見られ、検討に相当の時間を要していることがうかがえる。「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四(原案)」では、二〇二五年度薬価改定に関して具体的な在り方を検討するとされているが、二〇二五年度にとどまらず今後の薬価改定の在り方全体の方向性を早急に示すべきではないか。 五 本年五月二十一日付の財政制度等審議会の建議「我が国の財政運営の進むべき方向」は、国民負担の軽減の観点から、毎年薬価改定を着実に実施していく必要があり、令和七年度改定では、令和五年度改定で行われなかった既収載品の算定ルールを全て適用すべきであると指摘している。これは、国民負担の軽減をうたいつつ、医薬品の安定供給という本来守るべき状況を脅かしかねないものであると考えるが、政府として、この指摘をどのように受け止め、どのように対応していくのか。 右質問する。 |