質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第二三六号

転籍容認の実態に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年六月二十一日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   転籍容認の実態に関する質問主意書

一 今回の本人意思による転籍の一部容認については、人材育成の観点から、三年間を通じて同一の受入れ機関での就労が望ましいという大前提のもと、一定の要件を満たす場合には容認されるという制度的立て付けになっている。すなわち、①同一受入れ機関における一年以上の、受入れ分野によっては二年を上限とする就労、②技能試験と日本語試験の合格、③転籍先が適切な要件を満たすこと、の三点である。

 これだけでも大変であるが、転籍前の受入れ機関が支出した初期費用等の一部を転籍先が分担することも承知している。

 仮に期間が二年となった場合、在留期間は残り一年で、かつ転籍手続きに必要な期間等も考えれば、受入れに二の足を踏む企業が続出する可能性も高く、結局転籍をあきらめることにならざるを得ないのではないか。

1 これらを考え合わせると、本人意思による転籍が成功する確率は、ごくごく少数にとどまるのではと危惧されるが、法務省は主務官庁として、どのような見通しでいるか示されたい。

2 頻発する人権侵害への対応策として、「本人意思による転籍容認」を打ち出すならば、実態としてより転籍がしやすいように、転籍要件をより緩和することを検討すべきではないか。

 少なくとも、法施行後、転籍の実態を検証して、制度設計の再検討は実施すべきと考えるが、この点に関し、政府の見解を示されたい。

二 第二百十三回国会で成立した「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本法律案」という。)及び改正後の「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(以下「育成就労法」という。)について、以下質問する。

1 本法律案においては、転籍の申出をした育成就労外国人の育成就労の継続が可能となるよう、監理支援機関は他の育成就労実施者等との連絡調整や職業紹介等の必要な措置を、外国人育成就労機構は相談対応、必要な情報提供、助言、職業紹介等の援助を行わなければならないこととしている(育成就労法第八条の四第三項及び第五項)。

 監理支援機関が、組合員である受入れ機関から転籍したいという労働者の要望に積極的に対応して転籍先を斡旋することは構造的に考えにくいのではないか。

 特に、実質的な利益相反となる監理支援機関が転籍支援を「やったふり」することが懸念されるが、そのような事態への対応について、説明されたい。

2 仮に、転籍の申出により外国人が不利益な取扱いを受けた場合、どのように対応するのか示されたい。

3 政府は今回の転籍制限の緩和により、地方から都市への人材流出がどの程度起きると考えているか。今後の外国人労働者の移動の具体的な想定の有無についても合わせて示されたい。

  右質問する。