質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第二三一号

犯罪被害給付制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年六月二十一日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   犯罪被害給付制度に関する質問主意書

 損害賠償命令制度は、民事上の損害賠償請求訴訟を円滑ならしめるためのものであり、申立てが認容された後、加害者が賠償金を支払うことにより、犯罪被害者等の経済的被害の回復がなされるところであるが、加害者に資力がなければ、意義が薄くなる。犯罪被害者の方々の経済的被害の回復を確実にするところに、犯罪被害者等給付金の意義がある。以上の認識を前提に以下質問する。

一 犯罪被害給付制度の法的性格

 犯罪被害者が民事訴訟で加害者から損害賠償金を得られることとなった場合、犯罪被害給付制度で得た金銭が相殺される運用がなされているようだが、犯罪被害給付制度で支給される金銭は、損害回復のためのものか、あるいは経済的補償なのか。あるいは見舞金的なものなのか、その法的性格にも言及して、政府の見解を示されたい。

 仮に、損害回復、経済的補償ではなく、見舞金であるならば、犯罪被害者が民事訴訟で加害者から得た損害賠償金と相殺されるのは理解しがたいが、どのように整理しているか示されたい。

二 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律が保障する犯罪被害者の権利の存否及びその内容

 今回の給付水準の引上げを始め、犯罪被害給付制度の抜本的強化のためには、法律によって、犯罪被害者が損害回復及び経済的補償を受ける権利を明確に定めることが重要であると考える。犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律において、本権利が保障されていると解釈できるか示されたい。また、権利性を肯定する場合には、権利の内容について政府の見解を示されたい。

三 犯罪被害給付制度による加害者への求償がないことによる加害者の責任の自覚

 犯罪被害給付の支給額が増えることは評価しうる。しかし、本制度は、政府が犯罪被害者の方々に給付を行った後、政府から加害者に求償することにはなっていない。このため、加害者が自らの責任を自覚しないことになり、今後の犯罪抑止効果を発しない事態が想定し得ることは問題ではないか。

 警察庁の有識者検討会の議論の中でも、国が加害者に代わって損害を填補することで、加害者が自らの責任を自覚しないことにつながるのではないかといった懸念や、加害者のモラルハザードを防ぐためにも、加害者にどのようにして損害賠償責任を果たさせるのかという観点からの議論も必要ではないかとの意見があった。

 こういった懸念等に対して、どのように対応していくのか、政府の見解を示されたい。

四 犯罪被害者施策における法務省の役割

 犯罪被害者支援については、様々なアプローチがなされているところ、我が国においては、スウェーデンの犯罪被害者庁のような犯罪被害者対応を専門的に行う組織が存在しない。我が国では、犯罪被害者白書を発行している警察庁や国家公安委員会が中心となって対応しているが、法務省は、犯罪被害者等の方々に寄り添う弁護士へのアクセスを支援する法テラス等、一番被害者に近い制度を運用している省庁だと考える。法務省は、今後しっかり犯罪被害者に関する統計作成やヒアリングを行い、その結果を政府の施策に反映していただきたいと考えるが、政府の方針を示されたい。

  右質問する。