第213回国会(常会)
質問第二〇四号 令和六年能登半島地震と女川原子力発電所再稼働に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年六月二十一日 川田 龍平
参議院議長 尾辻 秀久 殿 令和六年能登半島地震と女川原子力発電所再稼働に関する質問主意書 今年一月一日、能登半島で内陸直下型の大地震が発生し半島北部を中心に震度七の激震に襲われた。地震と津波により道路は各地で寸断され孤立集落が出現し家屋倒壊により多くの犠牲者が出ており、激甚災害に愕然とした。もしここに電力三社(関西電力、中部電力、北陸電力)による珠洲原子力発電所(以下「珠洲原発」という。)が建設され稼働していたなら直下型震度六強地震に耐えられず、電源喪失等により福島第一原発事故が再現されていた可能性が極めて高かったと推察する。珠洲原発を凍結させた地元の人々のご尽力に深甚なる謝意を表するばかりである。 半島中部に設置されている北陸電力志賀原発は活動した主断層から三十数キロメートル離れており震度五強と非常に強い揺れではなかったにもかかわらず変圧器の絶縁油が大量に漏れ電源が喪失したこと、敷地内の舗装の亀裂等が生じたこと等が報じられた。志賀原発が停止中で重大事故に至らなかったことは僥倖というほかない。 一方、今年九月再稼働予定で準備が進められている東北電力女川原発(牡鹿半島)は地震の影響の受けやすさにおいて世界一と米国原子力学会で報告(二〇一一年秋)されている。現に、二〇一一年東日本大地震では地震と津波等により被災し、国際原子力事象評価尺度INESレベル二「異常事象」と二〇一三年七月に原子力規制委員会が評価している。宮城県や周辺県の人々は今回の能登半島地震の状況を知り、女川原発で重大事故が発生した場合、避難が果たしてできるのか危惧を従来に増して募らせている。女川原発は能登半島以上の地震の巣窟に近接しており今回の能登半島の教訓が女川原発に活かされるものと確信していたが、その確信も虚しくこのまま現規制基準で再稼働されようとしていることに不安を通り越して危機感を覚える。上記の観点から、以下質問する。 一 令和六年能登半島地震の二原子力施設(珠洲原発計画、志賀原発)の教訓の反映について 1 能登半島地震における志賀原発への影響から分かる教訓はまとまったのか。影響を検討している会合の名称と該当会合の日時を示されたい。 また、原子力施設に係る新規制基準に反映される事項(変圧器の耐震基準や油漏れその他)があれば具体的に示されたい。 2 志賀原発が稼働していたなら「福島第一原発事故と同様の経過をたどっていたかもしれない」と有識者が指摘していたが、稼働していた場合の評価はしないのか。もししない場合その根拠を示されたい。 3 能登半島地震における関西電力、中部電力、北陸電力三社による珠洲原発計画(最大一千万キロワット予定)は二〇〇三年に凍結されているが、凍結されず建設されていた場合、どのような地震影響を受けていたのか評価はされたのか。この国の存在に係る重大な放射能汚染が現実になっていたのではないか。評価するべきと思料するが政府の見解を示されたい。珠洲原発の計画凍結は解除される可能性があるのか。電力三社の意向はどのようになっているのか示されたい。この計画を凍結に導いた地元の人たちはこの国を救ったことになり功績は非常に大きいものと思われる。能登半島地震の震源地直上に近い地への珠洲原発建設計画は無謀だったのではないか。原子力規制機関としての見解を示されたい。 4 前記1及び2で上げた二原子力施設(珠洲原発計画、志賀原発)の能登半島地震から得た教訓を明らかにし、各原子力施設へ伝え、対応を求め実施状況を確認してから、原子力施設の再稼働を判断するべきと考えるが如何か。そのことが原子力規制委員会の設置目的である「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全…に資すること」になると考えるが、政府の見解を示されたい。 二 令和六年能登半島地震について 1 原子力規制委委員会の石渡明委員は第六十四回技術情報検討会において「この地震につきましては、近年、日本で起きた地震、特に内陸地殻内地震としては非常に規模が大きい。特に西南日本で起きた地震としては百数十年ぶりといいますか、非常に大きな地震だったというふうに理解しております。特に大きかったのが地殻変動ですね。四メートルの隆起が見られて、それがかなり広い範囲にわたっていたというようなことですね。それから、あと主断層に沿ったそういう大きな地殻変動だけではなくて、かなり離れた、十数キロ離れたようなところで副断層の動きが明瞭に見られたということですね。それと、あと、海底地滑りと思われる非常に予想よりも早く到達する津波があったというようなことがこの地震の重要な特徴かなというふうに思っております。」と発言した。 「主断層から十数キロ離れた副断層の動きが明瞭に見られた」とあり、この断層は志賀原発北約九キロメートルにある富来川南岸断層と想定されるが、このことは全国の原子力施設にある断層が周辺十数キロの主断層が動くことにより副断層として動く可能性を示したのではないか。また二〇〇七年の中越沖地震(マグニチュード六・八)や二〇一一年の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード九・〇)を受け原子力施設の基準地震動が見直されてきたが、今回の能登半島地震(マグニチュード七・六)は「内陸地殻内地震としては近来にない大きな地震だ」とのことであり、これによる観測記録を元に主・副断層の関係、原発の基準地震動(マグニチュード六・五以上の地震動)等の見直しを行い、バックフィットするべきと思料するが政府の見解を示されたい。 2 資源エネルギー庁作成の地層処分に関係する地域の「科学的特性マップ」によると能登半島北東部の一部を除き他の地域は最終処分場の適地(輸送面でも好ましい、グリーン沿岸部)になっている。これらの適地はマップの解説にある「活断層の近傍、隆起侵食が大きい範囲」に該当し、到底最終処分場に適しているとは言えないのではないか。マップの見直しは行われないのか。 三 東北電力女川原発二号機の再稼働について 1 今年一月のNHKや新聞は「政府の地震調査委員会はマグニチュード七・四前後を想定する宮城県沖地震(陸寄り)の三十年以内の発生確率を七十~八十%から七十~九十%に引き上げた」「日本海溝の陸寄りで発生するとされる宮城県沖地震では震源が浅い場合、能登半島地震のように地表が揺れ、道路が寸断されるケースも想定される」とも報道していた。これは女川原発においても能登半島地震並(マグニチュード七・六)の陸寄りマグニチュード七・四前後の地震発生が遠からず起こることを警告している。女川原発が設置されている牡鹿半島は面積で能登半島の約四・六%ほどの小さい半島ですが、東北電力調べでは二〇一一年東日本大震災時半島の道路が十九箇所大きく破壊され、「その他寸断箇所多数あり」としたとの資料がある。能登半島地震ではモニタリングポストも多数働かなくなったとのこと、これらを教訓に重大事故時の避難や連絡方法その他計画上の留意事項等の説明会を行うべきではないか。政府の見解を示されたい。 2 女川原発周辺の海域内に活断層が多数指摘されており、過去から現在まで多数の地震が頻繁に発生し余震が起こっていることがわかっている。前記1で記したような宮城県沖地震(陸寄り)の発生が遠からず起きると考えられるが、能登半島のように主断層と離れた副断層も動いた場合、最悪能登半島地震の最大震度七(千五百ガル以上)が女川原発の敷地を襲った場合、原子炉建屋と圧力容器や格納容器、冷却系統などの主要施設設備は耐えることができるのか。老朽化や被災による剛性の低下などの現実を見るとき、震度六強(八百三十~千五百ガル)レベルでも耐えられないのではないか。政府の見解を示されたい。 3 以上の質問に明確に答えられない場合には、再稼働は時期尚早と言わざるを得ない。人々の安全のために再稼働は一旦立ち止まり事業者へ対応をさせ、地元の人々へ事実をお知らせし、再稼働について再度判断を仰ぐべきではないか。政府の見解を示されたい。 右質問する。 |