第213回国会(常会)
質問第一八一号 「ものづくりマイスター制度」に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年六月十八日 水野 素子
参議院議長 尾辻 秀久 殿 「ものづくりマイスター制度」に関する質問主意書 我が国のものづくり産業においては、若年技能者の確保や技能の継承が難しくなっており、同産業における人材育成や技能者の社会的地位の向上を図ることが課題となっている。 若者のものづくり、技能離れ等の実態を踏まえ、平成二十五年度に厚生労働省の委託事業として若年技能者人材育成支援等事業が創設され、同事業において、技能尊重機運の醸成、若年技能者の人材育成及び確保を図るため「ものづくりマイスター制度」が展開されている。同制度は、厚生労働省において、ものづくり分野及びIT分野に関して優れた技能、経験を有する者を「ものづくりマイスター」として認定し、中小企業や学校等において実技指導等を行い、効果的な技能の継承や後継者の育成を図るものである。 ものづくり産業を維持、発展させるためには、大学だけでなく、専門性のある教育機関において技能を身に付けた人材を育成し、技能者の賃金を含めた処遇を改善していくことが必要であると考えており、その一環として、ものづくりマイスター制度の充実等が求められる。 以上の認識の下、質問する。 一 ものづくりマイスターとして認定、登録される職種は多岐にわたり、また地域の産業との関わりもあるため、都道府県によって職種ごとの登録者数に偏りがある。そのため、登録者数が非常に少なかったり、登録者がいない職種に関して派遣指導の依頼があった場合に、当該都道府県の技能振興センターでは依頼に応えきれず、他の技能振興センターと連携し、都道府県の枠を越えてものづくりマイスターを派遣し合うこともあるとのことである。しかし、遠隔地への派遣は、派遣されるものづくりマイスターの負担が大きく、移動経費もかかる。派遣指導の依頼に対し可能な限り同一地域で対応できるようにするため、全ての都道府県において、職種によって登録者がいない状況を解消するとともに、各職種の登録者数を増やす取組を更に推進する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 二 近年、ものづくりの現場においても、デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)化など環境が大きく変化しているが、多くの中小企業ではDXに関わる人材の不足という課題に直面している。DX分野での派遣指導の要請は、今後増加していくと考えるが、厚生労働省「ものづくりマイスターデータベース」によると、DX技術を伴う生産性の向上を目的とした改善指導に当たる「ものづくりマイスター(+DX)」の登録者数は六十一名にとどまっている。DX分野での派遣指導に当たることのできる者を確保し中小企業等への派遣指導を進めることは、政府の推進する中小企業等における業務のDX化にも資するものと考えるが、ものづくりマイスター(+DX)の認定、登録者数の増加に向けた政府の目標と取組方針を示されたい。 三 ものづくり産業においては、人材育成だけでなく、技能者の社会的地位の向上も課題となっている。ものづくりマイスター制度は、若年技能者の人材育成及び確保にとどまらず、技能尊重機運の醸成という目的もある。技能尊重機運の醸成により技能者の有する優れた技能が社会で広く理解、評価され、賃金を含めた処遇の改善につなげていく必要があると考える。例えば、建設業においては、技能者の資格や就業履歴を登録、蓄積する仕組みである「建設キャリアアップシステム」を活用し、能力評価とレベルごとの年収目安を明確化する取組が行われている。他の産業においても、こうした技能者の適切な能力評価及び賃金目安の明確化に資する仕組みを整備する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |