質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一七三号

離婚後共同親権と児童虐待に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年六月十二日

辻元 清美


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   離婚後共同親権と児童虐待に関する質問主意書

 去る五月十七日に成立した民法等の一部を改正する法律に係り、離婚後共同親権は児童虐待防止に資するとの主張が見られ、法案審議においても取り上げられた。しかしながら、これは児童虐待についての誤った認識と想定に基づくものであり、このような主張が独り歩きすることは危険であると考える。

 よって、以下質問する。

一 ひとり親やそのパートナーの虐待が共同親権で防げたかと言えば、そもそも子の父親がわからない、所在不明・音信不通である、DV・虐待加害者であるといったことで親権者になり得なかった場合がほとんどである。

1 むしろこれらの事情が虐待の背景要因となっていると考えられるが、政府の認識を明らかにされたい。

2 「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第十九次報告)」(令和五年九月)では、心中以外の「ひとり親(同居者あり)」について、どのような特徴があるか、又、どのような考察が示されているか明らかにされたい。

二 民法等改正案の審議において法務省民事局長は、離婚しようとする父母が協議で合意できなくとも「同居親の養育にやや不安があるとか、あるいはその同居親と子との関係が良好でないという理由で、別居親が子の養育にやはり関わった方がいいという場合」には共同親権を定め得る旨答弁した。

1 しかしながら、協議で合意できず家庭裁判所に持ち込まれて、別居親がこのように主張するケースではまずDVを疑うべきであると考えられる。DV加害者こそ相手を「母親失格」「育児に不安」等と言い募るのであり、それ自体精神的DVに当たるのではないか。以上につき政府の認識を明らかにされたい。

2 DV・虐待が家庭裁判所において見過ごされて「同居親の養育に不安」などと判断され共同親権となり得るのが非常に危険である。その場合、別居親は同居親に命じて、児童相談所等の行政の支援や介入を排除させる可能性が高いのではないか。共同親権が児童虐待を防ぐのとは逆に密室を作り出す危険性こそ想定すべきであると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

3 同居親の養育に不安等というのは婚姻中でも少なからずあるが、それはひとり親、ふたり親問わず、行政等による相談支援の問題であって親権の問題ではない。また、別居親が親権を以てする虐待防止・発見ということは想定し難い。共同監護として同居親に事細かに報告させる及び許可を求めさせる、頻繁な親子交流を求める等、別居親が同居親と子を監視することになり、同居親を追い詰めることになり得ると危惧されるが、政府の認識を示されたい。

  右質問する。