第213回国会(常会)
質問第一六九号 いじめによる自殺の実数と統計上の数値の関係に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年六月十日 石垣 のりこ
参議院議長 尾辻 秀久 殿 いじめによる自殺の実数と統計上の数値の関係に関する質問主意書 警察庁の自殺統計は、各都道府県の警察が死因を自殺と判断したケースについて自殺統計原票を作成し、警察庁が取りまとめる統計である。同統計において、原因・動機の分類は「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」「勤務問題」「交際問題」「学校問題」「その他」の大項目に分かれており、「学校問題」の中には「いじめ」の項目もある。 学校や自治体の調査でいじめと自殺との関連が判明した複数の事案が、この統計の「いじめ」が原因・動機とされた児童生徒の自殺の数に含まれておらず、実際の数の半分以下しか統計に含まれていないことが報じられた。 報道によると、警察庁は取材に対して「統計の数値は捜査で把握できた範囲の情報」と説明したとのことであり、捜査終了後に自殺の動機が分かっても、原則として過去にさかのぼって統計を修正することはないとのことである。 自殺といじめとの関連は、学校や教育委員会等の調査によって判明するまでに年単位の時間を要することもあり、警察庁の自殺統計では自殺の実態を正確に把握することができない状況となっている。 自殺統計は厚生労働省が毎年の自殺対策白書をまとめる際の基礎資料として用いられており、国が自殺対策を進めていく上で実態を正確に把握できていない現状は、非常に問題であると考える。 また、文部科学省による「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」において、自殺した児童生徒が置かれていた状況として「いじめの問題」を挙げた数においても同様の問題は生じている。報道によると、同調査においても、自殺の翌年度以降にいじめがあったとの認定があった場合でも、国への報告は各学校の判断に委ねられており、報告がなければ調査結果が修正されることはないとのことである。 政策を立案する上で実態を正確に把握することは必須であるにもかかわらず、上記のように実態と統計上の数値が大きくかい離している状況では、有効な自殺防止策を講じられるはずがない。捜査で得た情報しか統計に盛り込めないという警察庁の立場は理解できるものの、事後に自殺といじめの関連が判明した場合には統計を修正するなどの対策が必要であると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 学校や教育委員会等の調査により、自殺があった翌年度以降にいじめが自殺の原因・動機であることが判明した場合、その事実が統計に反映されておらず、実態を正確に把握しないまま施策が構築されている現状について、政府は時間的な制約もありやむを得ないと容認しているのか否か、見解を明らかにされたい。 二 実態を正確に把握し有効な防止策を構築するためにも、自殺があった翌年度以降に学校や教育委員会等の調査でいじめが自殺の原因・動機であると認定された場合、速やかに文部科学省に報告するようルール化する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 三 学校や教育委員会等の調査により、いじめが自殺の原因・動機であると認定された場合、文部科学省は速やかに警察庁と情報共有し、自殺統計に反映されるようにすべきだと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 右質問する。 |