質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一五八号

国際結婚で日本人配偶者が子供を日本国内へ連れ去るという問題が民法改正で解消されるか否かに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年五月三十一日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   国際結婚で日本人配偶者が子供を日本国内へ連れ去るという問題が民法改正で解消されるか否かに関する質問主意書

 従来の日本の親権制度は離婚後単独親権であることから、離婚した両親いずれにもDV等の問題が生じていないにもかかわらず、離婚後に親権を得る目的で片親による子供の不当な連れ去り事案が多発し、社会問題化している(以下「連れ去り事案」という。)。これら問題を受け、今国会において民法改正案が二〇二四年五月十七日に成立し、原則共同親権へ移行することとなった(以下「民法改正」という。)。

 日本の離婚後単独親権制度下で起きている連れ去り事案については、海外でも問題視されている。例えば、二〇一九年二月一日に開催された国連子どもの権利委員会で採択された第八十会期総括所見で、「共同親権を認めるために、離婚後の親子関係に関する法律を改正する」こと等の勧告を日本政府に行っている。その他、米共和党のクリス・スミス連邦下院議員は、二〇一八年の議会の証言において「一九九四年以降、国際結婚で生まれた三百から四百人の子供が米国から日本に連れ去られた。今なお日本にいる三十五人以上の子供が米国の親たちと再会できる日を今か今かと待っている」と訴えている。これらの問題の解決の一歩前進と言える民法改正案が成立したことは喜ばしい一方、問題視されている連れ去り事案の解消に向けた今後の動きは重要であると考える。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 国際結婚した夫婦において、日本国籍の妻が外国籍の夫の同意なく子供を日本国内に連れ去る事案が発生しており、各国より当該事案について非難を受けていると承知している。連れ去り事案について諸外国では「abduction」すなわち「誘拐」や「拉致」という単語が用いられており、ドイツ、イタリアでは、日本人配偶者がいる場合、日本に家族旅行へいくと日本人配偶者により子供が誘拐される旨の渡航注意が政府から出されている。これらの事実は、諸外国が日本人配偶者による連れ去り事案を問題視していることの証左であり、此度の民法改正等の政府の動きにより日本人配偶者による連れ去り事案が解消されるかは各国において大いに注目されている可能性が高い。政府において、他国が日本人配偶者の連れ去りについて問題視している事は承知しているか。承知している場合、その内容を示されたい。

二 前記一について、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(以下「ハーグ条約国内実施法」という。)第二十八条では、子供を連れ去った者が、連れ去られた者から、暴力などを受ける「おそれ」がある場合には子供を返さなくてもいいという返還拒否事由が存在することから、これらの解釈次第では適切に連れ去り事案が解消されるかが明らかでないとの指摘がある。此度の民法改正に伴い、ハーグ条約国内実施法の見直しを行う予定はあるか示されたい。

三 NNA ASIAの令和六年三月十八日の報道によると、「ハーグ条約下では、条約違反と認定されると連れ去られた子供は元の居住地に返還されなければならない。だが、日本国内では単独親権制度を背景に、警察は国際刑事警察機構(ICPO)による日本に連れ去られた子どもの追跡要請に応じず、裁判所はもう一方の親の子どもとの面会は家庭内の問題と捉えているため追跡が実質不可能で、国際的に問題となっている。」と報道されているが、これは事実か。事実であれば、国際的に問題になっている点について政府の把握している内容を示されたい。

四 前記三について、民法改正を受けて、これら問題となっている事実は解消されるか。政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。