第213回国会(常会)
質問第一五二号 ブラックバス(オオクチバス・コクチバス)等特定外来生物の魚類に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月二十九日 嘉田 由紀子
参議院議長 尾辻 秀久 殿 ブラックバス(オオクチバス・コクチバス)等特定外来生物の魚類に関する質問主意書 「ブラックバス」と総称されるオオクチバスとコクチバスは、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(以下「外来生物法」という。)が施行される際、同法の規制対象である「特定外来生物」に第一次指定された。しかしながら、ブラックバスは、その放流に厳罰が科されるようになったにもかかわらず、生息水域が拡がり続けている。その背景には、これらの魚が特定外来生物として生態系等への被害を防止するため防除すべき対象である一方で、娯楽や営利目的で野外にいる個体を利用すること、つまり釣ることが容認され続けていている現状がある。すなわち、たとえ違法行為の結果であったとしても、野外でブラックバスが生息する状況を、規制を受けることなく利用できるという旨味があるため、匿名性の高い放流が止まらないと考えられる。 この問題は、二〇二二年の外来生物法の改正時にも指摘され、改正法の附帯決議には「被害や違法放流の実態の把握」、「違法放流の撲滅を目指した対策と防除の取組の強化」、「オオクチバス漁業権の在り方やオオクチバス対策の方針の見直し、対策の実効性を高めること」が「措置を講ずべきこと」として記載されている。 従って、次の事項について質問する。 一 外来生物法の目的は「特定外来生物による生態系等に係る被害を防止し、もって生物の多様性の確保、人の生命及び身体の保護並びに農林水産業の健全な発展」を通じ「国民生活の安定向上に資すること」(第一条)である。また、第三条に基づき閣議決定された外来生物法改正後の特定外来生物被害防止基本方針では、ブラックバスのように定着済みの特定外来生物については、「生態系からの完全排除、封じ込め、被害低減のための低密度管理等の防除を…実施する」と記されている。これらの目的ないし基本方針に則れば、生態系等に被害を及ぼす特定外来生物が野外に生息する状況を、特定の受益者が利用しないことを原則とすべきであると思われるが、環境省の見解を示されたい。また、ブラックバスについては水産業にも関わるため、農林水産省の見解も同様に示されたい。 二 (主に山間地の)河川に建造されるダム湖は、ブラックバス、特に中上流域の魚類への被害が懸念されるコクチバスが新たに確認される事例が相次いでおり、違法放流のターゲットになっていることは疑いない。これについて、違法放流の防止対策及び違法放流の成果を利用させないバス釣り禁止などの措置を行う等の対策が必要と考えるが、ダムの設置及び管理の主務官庁である国土交通省並びに農林水産省はどのような対策を行うか示されたい。また、環境省は外来生物法及び自然公園の主務官庁として、ダム湖の自然公園としての利用と管理においてどのような外来生物対策、措置を行うか示されたい。 三 改正外来生物法第二条の四が規定する事業者及び国民の責務は「外来生物を適切に取り扱うよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する特定外来生物による…被害の防止に関する施策に協力するもの」であるが、現状では釣ったブラックバスはリリース、つまり再放流する「キャッチ・アンド・リリース」が当然とされ、釣り人は特定外来生物を釣りで捕獲することで、被害の防止に貢献できる状況にありながら、みすみすリリースしてしまい、そうした釣り人を顧客とする事業者ともども、駆除に協力することはほとんどない。もともと釣りにおけるキャッチ・アンド・リリースは、対象の魚を資源として維持・管理するために導入されたもので、このことは、リリースをしない釣りが対象の魚を減らし、駆除に大きく貢献できることを意味する。バス釣りを禁止することができない場合の次善の策として、釣ったブラックバスがリリースされ「生きたまま野外で利用」され続ける現状を改め、釣り人等にリリースをしない釣りにより駆除に対する協力を求めるべきではないか。特定の魚種の生息数を減らす施策は、漁業法等の想定外であると拝察するが、遊漁の主務官庁である農林水産省はこれにどう対策するか示されたい。また、共管である環境省は農林水産省に協力してどのような措置を行うべきと考えるか示されたい。 四 外来生物法施行後、ブラックバスが漁業権魚種として免許されているのは全国で四つの湖、神奈川県の芦ノ湖と、山梨県の河口湖・山中湖・西湖のみである。しかし、それ以外の内水面漁協の中に、ブラックバス釣りにも遊漁料が必要と記載する漁協がある(京都府等の複数の漁協)。ブラックバスに漁業権が免許されていない内水面漁協がバス釣り人から遊漁料を徴収している実態は外来生物法の意義を否定するものであるばかりか、漁業法の根幹を揺るがすものであるが、農林水産省はこれにどう対策するか示されたい。また、漁業権のないコクチバスから釣りガイドや貸しボート業者が遊漁料を徴収する長野県野尻湖や、福島県桧原湖などの例も放置されているが、これらにどう対策するか示されたい。併せて環境省は協力してどう対策するか示されたい。 五 岐阜県海津市等、地方公共団体が「バス釣りの町」をうたい、ふるさと納税返礼品にバス釣りツアーを提供するような例がある。改正外来生物法で、定着済みの特定外来生物の防除の責務や努力義務が規定された地方公共団体が、野外での特定外来生物であるブラックバスの有効利用を助長するような例に対して、環境省、農林水産省はどう考え、どう対策するか示されたい。 六 外来種被害防止行動計画が二〇二四年度中に改訂される予定と聞いているが、この計画は二〇一五年に、環境省、農林水産省、国土交通省の三省により作成、公表されている。野外における有効利用が放置され、放流という違法行為が止まらないブラックバスの特殊性に鑑み、上記の問題解決につながる具体的な記述が書き込まれるか示されたい。 右質問する。 |