第213回国会(常会)
質問第一五一号 日本の水道事業の民営化・外資開放への懸念に関する再質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月二十九日 神谷 宗幣
参議院議長 尾辻 秀久 殿 日本の水道事業の民営化・外資開放への懸念に関する再質問主意書 私が提出した第二百十三回国会質問第一一〇号に対して、答弁書(内閣参質二一三第一一〇号。以下「本件答弁書」という。)が送付された。 本件答弁書によれば、「コンセッション方式」による水道事業の民間委託を導入するメリットは、「水道施設の老朽化、人口減少による水道料金の収入の減少等が懸念される中で、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、水道の基盤の強化が図られる」との答弁であった。他方、デメリットとしては、水道料金の急激な上昇、水質の低下、給水体制の脆弱化、災害時における継続性の確保の懸念が挙げられており、それぞれについて法的枠組みを設定するなどして対応することとなっているとの答弁であった。 この点、単純に民間に任せればすべてうまくいくというわけでないことは、海外の例を見ても明らかである。つい先日も、イギリスのデボンで、水道管の劣化が原因で寄生虫が検出され、安全に水の飲用ができない状態となった水道事業運営を行っていた「サウス・ウェスト・ウォーター」の親会社が株主への配当金を増配したことで、批判が殺到し、民営化は失敗だったと評されている(令和六年五月二十一日ガーディアン紙)。 また、令和六年四月十一日の日経新聞でも、イギリスで水道事業と下水事業を手掛ける「テムズ・ウオーター」の親会社が債務不履行に陥り、資金不足に陥る懸念が報じられている。この事態により、英国の人口の四分の一が利用する生活インフラに支障が出る可能性があるとされている。 このように、諸外国では、民営化の失敗事例によって、再公営化の動きも見られる。我が国でも、同様の問題が発生しないという保証はない。 以下質問する。 一 本件答弁書の一について 1 本件答弁書でメリットとして掲げられた「民間の資金、経営能力及び技術的能力」により、具体的に、何がどのように、どの程度、従前より改善されるのか示されたい。 2 本件答弁書では、デメリットについては、それぞれについて法的枠組みを設定するなどして対応することとなっているとの答弁であった。具体的にどのような法的枠組みを設定しているか。また、政府としては、これらの枠組みが実効性を持つようにするため、また、これらの懸念がないことを担保するために、どのような方策を講じるか示されたい。 3 水道料金の急激な上昇とは、具体的にどの程度の期間で、どの程度の料金の上昇を指すか。 4 民営化された施設における水道料金と、公営化を継続している自治体における水道料金の設定額について、地域差が生じることとなると思われるが、これに対する政府の見解を示されたい。また、この地域差がさらに拡大するような料金設定になる可能性について、政府の見解を示されたい。 二 本件答弁書の二について 本件答弁書によれば、外国企業が水道施設運営権者に一定以上の出資を行うことによるリスクや「経済安全保障上の観点からの得失」については、政府として特段検討を行っていないとのことであったが、政府は、ライフラインである水道基盤の運用を外国企業が担うことについて、経済安全保障上のリスクはないと考えているのか。 水道事業の民間委託導入にあたり、政府は、安全保障上のリスクについてどのような分析・検討を行ったか示されたい。 三 本件答弁書の四について 本件答弁書によれば、関係法令の規定により、清浄かつ豊富低廉な水の安定供給が確保されるためリスクを想定しておらず、また、官民連携の推進等による水道基盤の強化を図ったため問題はないとのことである。しかし、前述の例のように、諸外国では、民営化による問題が発生しており、このような不測の状況が我が国でも生じないとも限らない。万が一に備え、リスクを想定した方策を講じる必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |