第213回国会(常会)
質問第一四五号 地方自治体職員の国籍に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月二十三日 神谷 宗幣
参議院議長 尾辻 秀久 殿 地方自治体職員の国籍に関する質問主意書 公的機関の職員の国籍に関する第三回質問主意書(第二百十二回国会質問第一一九号)(以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁書(内閣参質二一二第一一九号)(以下「本件答弁書」という。)の送付がされた。これに関連して、地方自治体における職員の国籍について取り上げる。 公的機関の職員の国籍に関する質問主意書(第二百十一回国会質問第七八号)において指摘したように、国家の安全保障は国土及び国民を保護すること、並びに統治機構が真に主権者である国民の利益のために運営されることにその根幹がある。そのため、主権者である日本国民が国の統治機構の構成員として選ばれることが基本的な在り方である。一九五三年、内閣法制局は「公務員に関する当然の法理として、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするものと解すべき」との見解を出した。それ故に、我が国の国家公務員となるには、日本国籍の保有が要件とされている。 同様に、地方自治体においても、主権者である国民(各地方自治体に在住する国民)の利益を守り、その利益のために運営することが重要である。この点に関し、最高裁判所は、「国民主権の原理に基づき、…原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、…外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではない」(最高裁判所平成十七年一月二十六日大法廷判決)と判断している。 しかし、実際には、地方自治体で外国籍の職員を採用するケースが少なからず見受けられ、近年増加傾向にある。採用基準は、地方自治体により異なり、外国籍の者の職員採用試験受験資格を認めていない自治体から、職員採用試験の国籍条件を撤廃した自治体までさまざまである。また、外国語指導助手だけではなく、保育士や給食調理員など人材不足の職種での採用も増えており、会計年度任用職員の採用も行われているようである。 この点、本件答弁書では、「地方公共団体における外国籍職員の採用については、当該判例を踏まえ、地域の実情に応じ、自主的かつ適切に行われるべき」としているが、地方の実情に応じて自主的に行うことは、上記の内閣法制局の見解や最高裁判決にそぐわないのではないか。 一方で、本件質問主意書で取り上げたような情報流出事件が発生し、外国籍職員の採用が問題を引き起こしている。この事案は、窓口業務を担当していた委託業者の中国籍職員が原因で情報管理に問題が生じた例である。さらに、自治体によっては外国籍職員が一般行政職にも採用されているが、この職種は本来日本国籍を必要とする公権力の行使に関わるものである。このため、より深刻な問題が発生する可能性がある。 また、中国の「国家情報法」や「国防動員法」は、日本在住の中国人にも適用される。これにより、中国籍職員が地方自治体に採用されることになれば、公権力の行使だけでなく、情報管理を含む幅広い観点からの対処が必要となる。「国防動員法」は、十八歳から六十歳までの男性及び十八歳から五十五歳までの女性が国防勤務を担うことが義務づけられており、この義務は外国在住の中国人にも免除されない。加えて、同法は平時の国防動員準備業務も課している。一方、また、「国家情報法」は国家が行う情報工作活動への一般の組織や国民の協力義務を規定しており、これは中国国内の中国人に限定されていない。従って、日本国内の中国企業や中国人による情報活動が想定されている。 このように、中国の法は、外国在住の中国人に対して有事での動員及び、平時での動員準備業務、並びに、平時有事を問わない情報活動への協力を義務付けている。従って、本件答弁書のように、「中国の「国家情報法や国防動員法」は他国の法律であり、…お尋ねについてお答えすることは困難である」といった悠長な態度は、適切ではない。 以上を踏まえて質問する。 一 前述の内閣法制局の見解である「公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員」とは、具体的にどのような業務を指すか例示されたい。 二 地方自治体職員の国籍要件について、各自治体に任せるのではなく、国の統治機構が主権者たる国民の利益のために適切に運営されることを確保するため、政府として具体的な指針を設ける予定はあるか。特に公権力の行使や情報管理を担う職種においてはどうか。 三 政府は、地方自治体における外国籍職員の採用状況をどの程度把握しているか。具体的な状況(自治体名、職種、正規・非正規の区分、国籍別人数等)を示されたい。 四 中国の「国家情報法」と「国防動員法」が外国在住の中国人に適用されることを踏まえ、地方自治体職員に中国籍職員を採用することの是非につき、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |