第213回国会(常会)
質問第一四〇号 米国上院公聴会での原爆投下を正当化する発言に対して上川陽子外務大臣が米国政府などに抗議したことに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月十七日 石垣 のりこ
参議院議長 尾辻 秀久 殿 米国上院公聴会での原爆投下を正当化する発言に対して上川陽子外務大臣が米国政府などに抗議したことに関する質問主意書 令和六年五月八日の米国上院歳出委員会公聴会で、共和党のグラハム上院議員がイスラエルへの武器提供の制限に対する米国政府の姿勢について問う中で、「米国にとって、日本への二つの原爆投下は正しい判断だったと思うか」と質問した。この質問に対して、米軍のブラウン統合参謀本部議長が「世界大戦を止めたと言える」と答弁し、続けてオースティン米国防長官も「議長に同意する」と答えた。 五月十日の衆議院外務委員会で、松原仁衆議院議員からこの米国上院公聴会でのやりとりに関する認識を問われた上川陽子外務大臣は、「現下の中東情勢の文脈でグラハム上院議員が広島・長崎の原爆投下を引用した議論を提起したことは受け入れられない。米側には、広島及び長崎に対する原爆投下についての考えを今般改めて申入れをしたところである。そして、米国政府のみならず、グラハム上院議員事務所に対しても申入れを行ったところである」旨答弁した。 この答弁について、外務省北米局日米安全保障条約課に米国政府やグラハム上院議員に対する抗議を文書で行ったのか確認したところ、大使館のルートを使って申入れをしており、文書は出していないとの回答があった。 上記のように答弁で申入れを行ったと明言していたが、その二日後の五月十二日に米国のNBCテレビの番組に出演したグラハム上院議員は、イスラエルへの弾薬供与について発言する際に、原爆投下について「戦争を終わらせる正しい判断だった」などと再び主張した。つまり、日本政府が行った申入れの効果がなかったことが露呈した。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 上川外務大臣が答弁で明らかにした米国政府への抗議は、外務省北米局日米安全保障条約課が回答した通り、文書で行ったものではないことを明らかにされたい。また、抗議は上川大臣自身が行ったのか明らかにされたい。 二 文書を出していないのであれば直接会って口頭で行ったのか、電話で行ったのか、メールで行ったのか具体的な方法を明らかにされたい。また、この抗議は、外務省北米局日米安全保障条約課の職員が回答した通り大使館のルートを使って申入れを行ったのだとすると、それは駐日米国大使に対して行ったのか、それとも、大使館職員に対して行ったのか明らかにされたい。 三 五月十日の衆議院外務委員会で上川外務大臣及び有馬裕北米局長はグラハム上院議員事務所に申入れを行ったと答弁しているが、外務省からグラハム上院議員事務所に国際電話で抗議の申入れを行ったのか、それとも、在米日本大使館の職員が事務所を訪問して抗議の申入れを行ったのか明らかにされたい。これらのどちらでもない場合、別の誰を通じて申入れを行ったのか明らかにされたい。 四 文書を渡さずに口頭で伝えた場合、グラハム上院議員に一言一句正確に抗議の内容が伝わったとは考えられない。一言一句違わずに伝わるよう伝達相手に一言一句確認しながら伝えたのか明らかにされたい。 五 文書を出さずに抗議の申入れを行ったのはどのような理由からか。米国に対しては強くものを言えない理由があるとしたらその理由を明らかにされたい。 六 抗議の申入れを行った後にテレビ出演したグラハム上院議員が再度、原爆投下を正当化する発言をしている。抗議の申入れの効果が全くなかったと考えるが政府の見解を示されたい。また、改めて抗議を行う際には、今度はグラハム上院議員にアポイントを取った上で面会し、申入れを行うべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。 七 文書を出さずに抗議しても相手方は正式な抗議とは受け取らない。日本政府として原爆投下を正当化することは受け入れられないと本気で抗議するなら、改めて文書で抗議の申入れを行うべきだと考えるが政府の見解を示されたい。 なお、五月十日の衆議院外務委員会で上川外務大臣は米国政府、グラハム上院議員事務所に対する申入れについて、「その内容、やり取りにつきましては、詳細について差し控えさせていただきたい」と答弁しているが、抗議内容や先方からの回答といったやり取りについて問うているのではなく、抗議の具体的方法について問うているので、真摯に答えられたい。また、回答できない場合はその理由について支障となる事項を示すなど具体的に理由を明らかにされたい。 右質問する。 |