質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一三九号

岸田総理の「断絶宣言」を端緒とする地方自治体における家庭連合信者の公的施設の利用を禁じる等の決議が検討されていることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年五月十七日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   岸田総理の「断絶宣言」を端緒とする地方自治体における家庭連合信者の公的施設の利用を禁じる等の決議が検討されていることに関する質問主意書

 安倍元首相の暗殺事件後、岸田文雄総理は旧統一教会(宗教法人世界平和統一家庭連合(以下「家庭連合」という。))及び関連団体との一切の関係を断つという、いわゆる「断絶宣言」を公表し、自民党議員にそれを徹底するよう指示を出したことは周知の事実である。

 すなわち、二〇二二年八月に岸田総理が断絶宣言を発表し、その後茂木敏充幹事長(当時)が関係断絶の党方針を「守れない議員がいた場合には、同じ党では活動できないと考えている」旨の見解を示し、家庭連合及び関連団体との関係を持った者は自民党を除名すると解しうる趣旨を述べた。

 しかしながら、自民党は国民の税金を原資とする政党交付金の交付対象政党であるから、かかる公党が特定宗教団体及び関連団体との一切の関係を断つことは、納税者を宗教あるいは思想信条によって差別的に排除し、政治への参加権をも侵害する憲法違反であることは明白であると考えられる。

 行政府の長たる総理大臣が「断絶宣言」を発したことにより、地方自治体においてもそれを一種の「お墨付き」として家庭連合信者には公的施設の利用を禁じる等の決議が検討されるなど明らかな憲法違反の差別行為が助長される動きが見られ、もはや国家をあげての宗教弾圧の様相を呈している。

 これについて、一般に広く知られる有識者や弁護士等の国民から発せられた意見を提示する。

 以下順次、門田隆将氏、北村晴男弁護士、高井康行弁護士等の見解から引用しつつ記述する。

 門田隆将氏は日本の作家でジャーナリストであるが、同氏は「月刊Hanada」(二〇二二年十一月号、「「魔女狩り」政党、自民党」)の中で次のように述べている。

 「自民党の茂木敏充幹事長が九月八日に発表した旧統一教会関連調査ほど呆れたものはない。(中略)「今後は(旧統一教会と)一切関係を持たない。党方針に従えない議員はいないと確信しているが、いた場合は同じ党では行動できない」そう言ってのけたのである。はぁ?この宣言に驚愕の声を上げない自民党議員は、さっさとバッジを外して永田町から去ったほうがいい。なぜなら、これは長い伝統を誇る自由民主党が憲法違反の「魔女狩り政党」へと堕ちた瞬間だったからだ。」と述べ、断絶宣言が憲法違反であると断じている。

 北村晴男弁護士は本年四月三日の衆議院法務委員会で「共同親権」に関する参考人として意見陳述したことでも知られる見識の高い弁護士である。北村弁護士は安倍晋三元首相が暗殺された後に岸田首相が家庭連合及び関連団体と一切の関係を断絶する旨の宣言をした時、「宗教団体に顔を出したからけしからんって、とんでもない話だと。」と述べ、岸田総理の断絶宣言が法律的に「とんでもない話」であると強烈に非難している(弁護士北村晴男ちゃんねる/「デイリースポーツ」二〇二三年十二月十九日)。

 元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、岸田総理の断絶宣言について「旧統一教会は宗教法人格を認められた合法的な組織である。そしてその信徒にも政治に参加する権利は保障されているのであるから、その信徒とわずかでも接点を持つことは社会的に許容されないとするのは、旧統一教会やその信徒に対する差別で、彼らの政治に参加する権利を侵害するといわれてもやむを得ない」と述べ、断絶宣言が権利侵害に当たると指摘している(「月刊正論」二〇二三年一月号)。

 家庭連合及び関連団体に対して特殊な憎悪感情を持つ全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士でない限り、高い専門的見識のある弁護士や法律的判断力のある有識者等においては、概ね岸田総理の断絶宣言が明らかな憲法違反であり、人権侵害にあたると考えていることがわかる。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 政府が公認した宗教法人家庭連合及び関連団体に対して、国民の税金を原資とする政党交付金が交付され、かつ政権政党である自民党がその一切の関係を断つという岸田総理の断絶宣言は、納税者を宗教によって差別的に排除するものであり、憲法が保障する思想信条・信教の自由に違反するとともに信者の参政権を侵害するものと考えられるが、政府の見解を示されたい。

二 岸田総理の断絶宣言は、家庭連合及び関連団体との関係において、自民党関係者らの行動等を規制する性質があるが、その規制が及ぶ範囲は国会議員にとどまるのか、それとも地方議員、党員にまで及ぶのか、政府の見解を示されたい。

三 岸田総理の断絶宣言において家庭連合及び関連団体との一切の関係を断つというが、その内容は関連団体からの陳情、意見聴取、関連団体への投稿や意見発信、新聞社等からのインタビュー、関連大会・集会への参加、名刺交換、電話、メール、会食、路上での立ち話等、一切の関係を禁止するものか。その具体的な規制内容を示されたい。

四 岸田総理の断絶宣言が及ぶ自民党議員又は党員が家庭連合に入会し、あるいは既に信者であることを告白、家庭連合における信教の自由の行使(礼拝参加、集会参加、教会の儀式等の参加、布教活動等)を行なった場合、その者は断絶宣言に基づいて除名あるいは何らかの処分の対象となるか、政府の見解を示されたい。

五 岸田総理が断絶宣言をした後、家庭連合においては信者たちが職場や学校、社会生活等において種々の差別的扱いを受け、実質的な物心両面の損害が発生している。テレビを見た翌日、自殺をした若い信者もいると聞く。信者も国民であるが、国民が甚大な損害を受けている事態について、憲法違反と言うべき断絶宣言をした総理大臣の責任はきわめて重大である。

 岸田総理は教団に対して損害実態の聞き取り調査や、損害に対して政府として何らかの対応をする意思はあるのか、責任を認めた場合、どのように責任を取るのか示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。