質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一三六号

水俣病の関係団体と伊藤太郎環境大臣の懇談の場でマイクを切ったことに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年五月十四日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   水俣病の関係団体と伊藤太郎環境大臣の懇談の場でマイクを切ったことに関する質問主意書

 令和六年五月一日、熊本県水俣市で水俣病の犠牲者を追悼する慰霊式が行われ、式のあと、患者や被害者でつくる八つの団体の代表と伊藤太郎環境大臣との懇談が行われた。

 この懇談の場で患者・被害者団体の参加者が発言している最中に、環境省の職員が持ち時間三分を過ぎたという理由でマイクの音を切ったことで、関係団体の参加者から抗議を受ける事態となった。その場で参加者から出た「マイクの音量を調整したのかだけ確認させてください」との質問に対して、司会をしていた環境省の職員は「事務局の不手際でございました。申し訳ございません」と答えている。また、伊藤環境大臣は「私はマイクを切ったことについて認識しておりません」と発言している。

 その後、環境省は、以前より懇談の際には発言者の持ち時間を三分とし、時間を過ぎた場合にはマイクの音を切る運用としており、会場でアナウンスして関係団体の理解を求めるつもりだったが「急いでいて気が動転し」読み飛ばしてしまったと、マイクの音を切った理由についての説明を変更した。

 この件に関して、林芳正内閣官房長官は五月七日の記者会見で、「環境省の対応により関係者の方々を不快な気持ちにさせてしまったことは、適切な対応であったとは言えないと考えている」旨述べている。

 このような事態を受けて環境省は、職員が現地に謝罪に伺うとしたが、患者団体などでつくる水俣病被害者・支援者連絡会が伊藤環境大臣による謝罪と改めて懇談の場を設けることを求める要望書を提出した。

 五月八日の午後に伊藤環境大臣自身が再び水俣市に赴き、関係団体等へ謝罪し、改めて、懇談の場を設けることを約束した。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 環境省の説明では懇談の際の運用方針で、発言者の持ち時間を三分間とし、時間が経過したらマイクの音を切ることとしていたとのことだが、懇談の場でマイクの音量を調整したのかを問われた際には「事務局の不手際(でマイクの音を切った)」と答えている。その後の環境省の説明によると、司会の進行表に発言時間を超えた場合はマイクを切ることがある旨の記載があったが、その部分を読み飛ばしてしまったとのことである。つまり、事務局の不手際でマイクの音を切ったものではなく、当初の予定通りの行動であった。その場を取り繕うために「事務局の不手際」と発言していたとしたら非常に不適切である。また、懇談の冒頭にマイクを切ることがある旨の発言をしなかったことを事務局の不手際と表現したのだとしても、聞いた側には伝わっておらず、表現が非常に不適切だと考える。なぜ、参加者から抗議された段階で正確な説明を行わなかったのか理由を明らかにされたい。

二 伊藤環境大臣は懇談の場で団体の参加者の発言を聞いていたにも関わらず、マイクの音が切られたことについて「認識していない」と発言した。参加者の発言を集中して聞いていれば、マイクの音が小さくなったことは認識できるはずである。つまり、伊藤環境大臣はその場に座ってはいたものの、参加者の発言に意識を集中して聞いていたのではなく、うわの空だったと推察される。伊藤環境大臣は参加者の発言をうわの空ではなく真摯に聞いていたのか。そうであるならば、マイクの音が切られたことをなぜ認識出来なかったのか明らかにされたい。

三 前記二に関連して、地声とマイクからの音との区別がつかなかったとしても、参加者から指摘を受けた段階で、司会をしていた環境省の職員を始め複数の職員がいたのだから、その場で確認することが出来た。なぜ、その場で事実関係を確認しなかったのか理由を明らかにされたい。

四 前記三について、特段理由がなく、単に確認すれば分かるということに気が付かなかったのであれば、危機管理能力が欠けていると言わざるを得ず、大臣の任に相応しくないと考えるが政府の見解を示されたい。

五 伊藤環境大臣はマイクの音が切られたことを五月七日に環境省の職員から報告を受けて初めて知ったと発言しているが、同月一日に発生したことの報告を受けるまでに一週間も要した理由を明らかにされたい。

六 発言時間を超えた場合にマイクを切る運用は従来から行っていたと環境省は説明をしているが、当該運用が始まったのはいつからなのか。この運用について歴代の環境大臣に説明は行っていたのか、説明していなかった場合はその理由を明らかにされたい。

七 当初、伊藤環境大臣ではなく、環境省の職員が水俣市を訪問し謝罪することとなっていた。大臣ではなく職員を現地に謝罪に行かせる判断をしたのは、伊藤環境大臣か。そうでなければ誰の判断なのか明らかにされたい。伊藤環境大臣以外が判断したとしたら、伊藤環境大臣自身はそのことを認識していたのかも明らかにされたい。

八 最終的に伊藤環境大臣が再び水俣市を訪れ謝罪することになったが、職員ではなく大臣自らが現地に行くとの判断を行ったのは誰か。また、このように方針が変更になったのは水俣病被害者・支援者連絡会の要望書が提出されたことが原因なのか、理由を明らかにされたい。

九 このような患者・被害者等との懇談の場において、時間の制約がある中で参加者の発言時間に制限を設けることは止むを得ないと理解するが、発言時間を超過した場合であっても、発言をまとめるよう促すことで足り、今後はマイクの音を切る運用はすべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。