第213回国会(常会)
質問第一三一号 北朝鮮に拉致された日本人被害者を取り戻すための方策に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月十三日 浜田 聡
参議院議長 尾辻 秀久 殿 北朝鮮に拉致された日本人被害者を取り戻すための方策に関する質問主意書 北朝鮮による拉致問題は岸田文雄総理大臣が日朝首脳会談を実現する意向を示すものの未だに進展は見られない。拉致被害者の家族は一段と高齢化が進んでいる。再会を果たせないまま亡くなった家族も少なくはない。拉致被害者の家族会代表の横田拓也氏は「拉致問題は時間的制約のある人権問題だということを政治がしっかり受け止めて行動に移してほしい」と要望している。平成十四年の日朝首脳会談で五人の拉致被害者の帰国が叶って以降、政府は二十年以上にわたり一人として拉致被害者を取り戻せてはいない。平成二十六年五月ストックホルムでの日朝政府間協議で、北朝鮮側は拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査の実施を約束し、日本側は北朝鮮に対する独自の措置の一部を解除した。同年七月に北京、同年九月に瀋陽で協議の場が設けられた。同年十月には政府は平壌で北朝鮮の特別調査委員会から進めている調査の方針と権限について説明を受けた。ところが北朝鮮は平成二十八年一月に核実験を、二月に人工衛星と称する弾道ミサイルの発射を行った。日本政府は北朝鮮に対して独自の措置を実施した。それを受けて北朝鮮は拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的調査の全面中止及び特別調査委員会の解体を一方的に宣言した。その後、当時の安倍総理や安倍総理の要請を受けたトランプ大統領が北朝鮮政府に拉致問題の解決を申し入れているが糸口は見いだせていない。北朝鮮は弾道ミサイル等の発射を平成二十八年に二十三回、平成二十九年に十七回、令和元年に二十五回、令和二年に八回、令和三年に六回、令和四年に五十九回、令和五年に二十五回と繰り返している。国連安保理においても北朝鮮に対する強力な制裁措置を全会一致で採択しているが北朝鮮の挑発行動はやむことがなく現在に至っている。令和六年には国連安保理の理事国であるロシアや中国が朝鮮半島周辺の緊張を高めているのはアメリカだと繰り返し主張するようになり理事国間の足並みは揃わない。政府は長い年月にわたり北朝鮮に対し「対話と圧力」で最重要課題である拉致問題といった諸懸案の包括的解決を図ってきたが成就することはなかった。 出入国在留管理庁調べによると日本に在留する朝鮮籍の外国人は二万四千三百五名(二〇二三年十二月現在)いる。政府が認定している北朝鮮による日本人拉致被害者は十七名であり、そのうち五名は帰国を果たしていることから残りは十二名となっている。警察がウェブサイトに掲載する北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者は八百七十一名に上る。八百七十一名のうち全員が北朝鮮によって拉致されたという確証はないものの多数の者が拉致の被害に遭っている可能性は否定できない。 以上を踏まえて政府に質問する。 一 北朝鮮による日本人拉致被害者の返還と引き換えに拉致問題に係る解決の度合いに応じた段階的な人道支援を行うことはいかがか。政府の見解を示されたい。 二 かつて日本政府はダッカ事件においてハイジャックによって囚われられた人質と日本国内で獄中にいた日本赤軍のメンバーである受刑者との交換に応じている。当時の福田赳夫総理は「一人の生命は地球より重い」と述べて超法規的措置をとった。朝鮮総連の幹部を含む在留朝鮮籍の相当数の外国人と北朝鮮による拉致被害者及び拉致された被害者の可能性がある日本人の生存者の交換を超法規的措置として北朝鮮側に提案してはどうか。政府の見解を示されたい。 三 核戦力による抑止の役割を担う制度としてNATO核共有制度が知られているが、日本としてもNATO核共有制度へ対北朝鮮に限定した参画を図り、核兵器開発を進めていると公言する北朝鮮に対して、英米仏が保有する戦略核戦力を享受し北朝鮮の戦力を圧倒した上で拉致問題の解決に向けた交渉を迫り、NATOの核共有制度から日本が離脱する条件として北朝鮮に拉致問題をはじめとした諸問題の完全な解決を提案するのはいかがか。政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |