第213回国会(常会)
質問第一二六号 選挙期間中の政党その他の政治団体の機関紙誌の頒布に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年五月八日 石垣 のりこ
参議院議長 尾辻 秀久 殿 選挙期間中の政党その他の政治団体の機関紙誌の頒布に関する質問主意書 政党その他の政治団体が発行する機関新聞紙及び機関雑誌(以下「機関紙誌」という。)について、衆議院議員、参議院議員、都道府県の議会の議員、都道府県知事、指定都市の議会の議員又は市長の選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、当該選挙に関する報道及び評論を掲載するものを当該選挙が行われている区域で頒布することに関して、公職選挙法第二百一条の十五で規定がされている。 機関紙誌の頒布方法については「通常の方法」に限られており、引き続いて発行されている期間が六月以上の機関紙誌の「通常の方法」とは「当該選挙の期日の公示又は告示の日前六月間において平常行われていた方法をいい、その間に行われた臨時又は特別の方法を含まない。」とされている。 ただし、「平常行われていた方法」とは、当該選挙の期日の公示又は告示の日前六月間において反復継続して行われていた方法で相当の実績を有するものをいうが、結局は、個々具体の場合について頒布の手段、対象、部数、対価、地域、回数等により、平常行われていた方法かどうかを認定するほかないものと逐条解説で説明されている。 日本国憲法において、言論、出版、結社、表現の自由が保障されている中で、機関紙誌の頒布に制限を加えているのは、選挙期間中に無償で無差別かつ大量に選挙に関する報道、評論を掲載した号外等が頒布されるという事態が生じ、選挙の公正が害されると同時にいわゆる「ビラ公害」という言葉に象徴されるような世論の批判が高まることになった経緯からで、必要最小限の合理的な規制を設けたものであるという理由により昭和五十年に改正が行われたものである。 さて、上記の規定に基づき選挙期間中に当該選挙に関する報道及び評論を掲載する機関紙誌を頒布する場合には、総務大臣(都道府県の議会の議員、都道府県知事、指定都市の議会の議員又は市長の選挙については、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会)に届け出る必要がある。 この総務大臣への「政党その他の政治団体の機関紙誌届」用紙には機関紙誌名、創刊年月日、発行部数、発行回数、引き続いて発行されている期間、編集人名、発行人名を記載することになっているが、具体的な頒布方法についての届出は不要となっている。「平常行われていた方法」に当たるか否かについては、個々具体の場合について、頒布の手段、対象、部数、対価、地域、回数等により認定することになるにもかかわらず、具体的な「頒布方法」が届出事項に含まれていないのは運用の不備だと言わざるを得ない。 また、平常行われていた方法か否かについて、個々具体の場合について、違反を取り締まる捜査機関等が認定することになれば、恣意的に運用される懸念があることに加え、候補者間での解釈の違いによりトラブルを引き起こす可能性があるため、より具体的に定めておく必要があると考える。有料で頒布している場合には当該選挙区で頒布する部数がほぼ確定している一方、無償で街頭やポスティングで頒布する場合は数の制限なく無制限に頒布することが出来るというのは余りにも均衡を欠いている。 以上踏まえて、以下質問する。 一 最近の国政選挙における公職選挙法第二百一条の十五の規定に基づく機関紙誌の届出の内容(直近の衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙に関して届出のあった機関紙誌名と、それぞれの編集人名、発行人名、創刊年月日、発行方法、引き続き発行されている期間)を具体的に示されたい。 二 前記一の届出に対して、総務省及び担当する選挙管理委員会は、公職選挙法第二百一条の十五が規定する「通常の方法」及び「平常行われていた方法」について、どのような資料等に基づき事実であるか否かを確認しているのか具体的に示されたい。 三 公職選挙法第百四十八条及び第二百一条の十五の規定に違反した場合は、同法第二百三十五条の二の規定に基づき、「新聞紙、雑誌が選挙の公正を害する罪」として処罰される可能性があるところ、過去における同条に基づく処罰事例や警告事例を具体的に示されたい。また、かかる事例がない場合は、その旨も示されたい。 四 「政党その他の政治団体の機関紙誌届」に通常の「頒布方法」を記載する欄を追加する必要があると考えるが政府の見解を伺う。また、記載された「頒布方法」が事実かどうか確認する上で、その裏付けとなる資料の提出も求める必要があると考えるが見解を伺う。 五 特に、選挙期間中に無償で無差別かつ大量に頒布することは選挙の公正が害されると同時に資金力がある陣営がより多くの機関紙誌を頒布できることになってしまうので、街頭演説時やポスティングなど無償で無差別に頒布する方法を平常行われた方法とする場合は、当該選挙の期日の公示又は告示の日前六月間の頒布実績について日時、場所、頒布枚数を具体的に届け出る必要があると考えるが政府の見解を伺う。 六 街頭やポスティングでの頒布が平常行われていた方法か否かについて届出者の目安となるように示す必要があり、少なくとも平常行われていた方法に該当しないケースについては明確にすべきであると考える。例えば、配布場所について同じ場所で曜日又は日を決めて六月以上継続的に各号の頒布を行っていること、号によって配布部数の変動がなく一定であることとし、各号それぞれ街頭やポスティングで頒布を行ってはいるが、その都度、頒布場所や部数が変わる場合は公職選挙法第二百一条の十五にある「その間に行われた臨時又は特別の方法」とする旨を明確にすべきだと考えるが政府の見解を伺う。 七 そもそも立候補者自身が頒布できるビラには枚数制限が設けられており、資金力により頒布枚数に差が生じ、資金力がある方が優位にならないようになっている。 公正な選挙、お金のかからない選挙という視点に立つならば、当該選挙区に立候補している者に関して記載がある機関紙誌を街頭やポスティング等の手段により、無償で無差別に頒布することは禁止すべきだと考える。早急に法改正すべきだと考えるが政府の見解を伺う。 なお、政府においては、過去提出された公職選挙法関係の国会質疑や質問主意書に対して「選挙制度の基本に関わる問題であることから、各党各会派において御議論いただくべきことと考える。」旨の答弁が多いが、本質問は選挙制度の基本について問うているのではなく、あくまでも法律の運用面についての指摘であるので、上記のような答弁をすることなく、質問に対して真摯に回答されることを求めるものである。 右質問する。 |