第213回国会(常会)
質問第一二〇号 フリーランスの労災保険特別加入制度に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年四月二十三日 塩村 あやか
参議院議長 尾辻 秀久 殿 フリーランスの労災保険特別加入制度に関する質問主意書 フリーランスに係る労災保険特別加入制度の拡大については、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の令和六年秋の施行にあわせ、同制度の対象に「特定受託事業」を追加する省令改正(以下「今回の改正」という。)が行われるものと承知しており、対象者が増加すると見込まれる。現行の特別加入制度においては、加入手続は都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うこととなっており、フリーランスについても、特別加入団体を新たに創設して加入手続を行うか、既存の特別加入団体を通じて加入手続を行う必要がある。特別加入団体を経由して加入させる趣旨は、特別加入団体を事業主、フリーランスを労働者とみなして労災保険制度の構造に即した法律構成とするためと承知している。 また、昨今、多様な働き方や副業・兼業が広がっており、フリーランスにおいても複数の事業又は作業に携わる方がいると考える。一方で、現行の特別加入制度は、事業又は作業ごとに区分されており、それぞれ加入手続が必要である。例えば、芸能に従事する方が農作業にも従事している場合に、あるいは同業種であっても芸能の大道具と建築業の大道具の両方に従事する場合に、双方について災害補償を必要とするのであれば、それぞれの特別加入団体において別々に加入手続を行わなければならず、当該フリーランスの負担になっていると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 特別加入の対象が事業又は作業によって区分されている理由は、それぞれの事業又は作業特有の災害防止措置を特別加入団体が行うことを想定していることが一つにあると考える。今回の改正により特別加入の対象となる特定受託事業から既に特別加入の対象となっている事業又は作業が除かれる予定となっているが、特定受託事業に係る特別加入団体は、幅広い業務を対象とした団体になると見込まれる。特定受託事業に係る特別加入団体が幅広い業務の種類に応じた災害防止措置を担うことが可能ならば、前述のように特定受託事業から既存の事業又は作業を除く理由がないと考えるが、政府の見解を示されたい。 二 前記一において、特段の理由がないのであれば、既存の区分に対応した特別加入団体を存続できるようにしつつ、既存の区分があるか否かを問わず、全ての事業又は作業に対応した特別加入団体の創設を認めれば、現状、複数の事業又は作業について別々に加入手続を行っているフリーランスの負担と加入費用及び加入手数料の軽減を図ることが可能と考えるが、政府の見解を示されたい。 三 フリーランスが特別加入を希望する場合に、特別加入団体を経由することなく、直接、特別加入の窓口となる行政機関において必要な手続を行うことで、特別加入が可能となる個別加入の制度があれば、複数の業務に従事するフリーランスの負担軽減になると考える。今回の改正については、第百八回から第百十回の労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において議論が行われたと承知しているが、特別加入団体を経由した枠組みを維持した検討しか行われておらず、個別加入の制度については、第百八回労災保険部会において、事務局側から今回の改正における議論の対象としない旨の発言がなされている。今回の改正は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」に対する国会の附帯決議を踏まえた見直しであると承知しているが、希望する全てのフリーランスの特別加入を実現するためには、現在の特別加入団体を経由した枠組みにとらわれることなく、個別加入の制度の導入を含め、特別加入を希望するフリーランスに負担のない制度となるよう検討する余地があったと考える。個別加入の制度について、事務局が当初から議論の対象としなかった理由を詳細に示されたい。 四 特定受託事業者と令和三年に施行された創業支援の枠組みは業種に関わらず加入できる点で共通しているが、従来の特別加入制度にあるような業種で認定する制度とは大きく概念が異なっている。創業支援措置の枠組みは施行後の二年間で数名しか加入者がいないところ、同年同日に施行した芸能従事者は七百名を超える加入者がいる。創業支援措置の制度設計に加入しづらい点があったのではないかと懸念されるところ、同様の制度の特定受託事業者枠に加入が見込めるのか、既存の業種及び特別加入団体が不利益を被らないための方策はどのようなものか、政府の見解を示されたい。 五 希望する全てのフリーランスの特別加入を実現するためには、手続上の負担を軽減させるような措置が必要と考えるが、今後の政府の方針や取組について示されたい。 右質問する。 |