質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一一九号

フリーランスで芸能に従事するクリエイターの保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年四月二十三日

塩村 あやか


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   フリーランスで芸能に従事するクリエイターの保護に関する質問主意書

 令和五年四月、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス保護新法」という。)が成立し、令和六年十一月一日に施行される予定となっている。この法律は、フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化やフリーランスの就業環境の整備を図ることを目的とし、書面等による取引条件の明示や報酬支払期日の設定・期日内の支払等の義務を発注事業者に課している。しかし、「フリーランス・トラブル一一〇番」に令和五年四月から十二月までに寄せられた相談内容は、報酬の全額不払や支払遅延、一方的減額など報酬の支払に関するものが最多の約三割を占めるなど、依然としてフリーランスと発注事業者との関係が対等ではない状況にある。また、フリーランスで芸能に従事しているクリエイターも同様な状況にあると聞いている。

 令和五年五月、フリーランスで芸能に従事しているクリエイター等による互助組織「一般社団法人日本芸能従事者協会」(以下「協会」という。)は会見し、生成AIの技術の進歩により芸術・芸能の担い手が職を失う可能性が高まることを懸念し、権利を守る法整備が必要である旨訴えた。具体的には、文化芸術分野に携わる人たちの活動や権利を保護できるルール作りが必要であるとし、国に対して、AIを使ったコンテンツ生成などの際には、肖像や声、演技に関する権利なども法律で明文化した上で、特別に権利を保護することや、どのようなデータをもとにして生成したのかを開示する義務、クリエイターへの対価の支払義務などを求めた。さらに、同年六月には、生成AIに伴う懸念や法整備の必要性等を訴える要望書を、文化庁、内閣府、経済産業省に提出した。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 発注事業者からの報酬の支払に関し、フリーランス保護新法の成立後においても、フリーランスで芸能に従事しているクリエイターが一方的に減額を迫られるなど買いたたきが横行し、その支払額も時給換算した場合に最低賃金を下回っているケースも多くあると聞くが、政府はこうした実態を把握しているのか。

二 また、発注事業者から報酬が正当に支払われたとしても、発注事業者が主催する興行のチケットの買取りをフリーランス側が求められるなど実質的に報酬を得られていないケースもあると聞くが、政府はこうした実態を把握しているのか。

三 前記一及び二に関連し、令和五年四月の参議院内閣委員会の特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案に対する附帯決議では、「労働基準法の労働者に当たる者に対し、労働関係法令が適切に適用されるような方策を検討するとともに、いわゆる偽装フリーランスや準従属労働者の保護のため、労働基準監督署等が迅速かつ適切に個別事案の状況を聴取、確認した上で、適切に対応できるよう十分な体制整備を図ること。」とされているが、政府は現時点において具体的にどのような対策を行っているのか。

四 生成AIの技術進歩により芸術・芸能の担い手が職を失うといった、協会が表明する懸念に関連し、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、令和六年三月に「AIと著作権に関する考え方について」をまとめた。同文書では、著作権法第三十条の四ただし書に規定する「著作権者の利益」と、著作権侵害が生じることによる損害とは必ずしも同一ではなく別個に検討し得るとしつつも、明確な考え方を示すには至らなかった。協会が令和五年五月に示した前記懸念を今後どのように解消していくことを考えているのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。