質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第五二号

歴史認識に関わる我が国の政策に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年二月二十八日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   歴史認識に関わる我が国の政策に関する再質問主意書

 私が提出した「歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第四号)に対して、答弁書(内閣参質二一三第四号。以下「本件答弁書」という。)が送付された。

 本件答弁書をもとに、以下質問する。

一 対外発信の効果に関して

 本件答弁書によれば、「政府としては、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、積極的かつ戦略的に対外発信に取り組んできて」おり、「このような取組の効果については、その対象となった者の反応、世論調査の結果等を踏まえて総合的に検証している」とのことである。

1 これら政府が行ってきた積極的かつ戦略的な対外発信の結果、これらの歴史問題に対する我が国の対外発信に対する国際社会の反応や、国際機関や他国政府からの具体的なフィードバックはどのようなものであったか。また、それに対する政府としての評価を併せて示されたい。

2 政府が今後取り組む予定の対策や、既存の取組をどのように改善していく予定かについて、具体的な計画があるか、示されたい。

3 これらの歴史問題に関する我が国の対外発信の効果を測るために行われた国内外の世論調査の結果に基づき、公衆の意識や態度にどのような変化が見られたかを示されたい。

二 対外発信の手法に関して

 本件答弁書は、対外発信の方法として、大臣を含む政府関係者による発信、在外公館における発信、広報資料やオンラインの活用などを挙げている。これらは、いずれも政府からの直接の発信である。現代の情報戦や認知戦では、政府による公式の発信だけでなく、内外の有識者の発信、フェイクニュースまで、より総合的なアプローチがとられている。政府の情報発信に対する取組は評価するが、政府の直接の発信だけに限らず、政府外の組織や有識者を含む国全体の包括的な取組を政府が主導し、そのための環境整備を進める必要があるのではないか。加えて、客観的事実に基づく正確な歴史認識の発信に努める海外の有識者や団体などとの連携も重要な戦略であると考えられる。

1 政府は、政府外の組織や有識者を含むより幅広い層での情報発信の取組を主導し、そのための環境整備を進める計画はあるか。

2 客観的事実に基づく正確な歴史認識の発信に努める海外の有識者や団体との連携を深めることを検討しているか。

3 政府の対外発信の効果を最大化するためには、どのような新たなアプローチや技術が必要だと考えるか。また、これらの取組を実現するために政府が直面する主な課題は何か。

三 いわゆる「南京事件」に関して

1 本件答弁書によれば、政府が「昭和十二年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為があったことは否定できないと考えている」としているのは、「戦史叢書 支那事変陸軍作戦」及び公になっていた文献等から総合的に判断したとのことである。また、令和五年四月三日の参議院決算委員会で林外務大臣(当時)は、「外務省が作成したものは確認できておりません」、政府全体では「「戦史叢書 支那事変陸軍作戦」第一巻に該当の記述がある」旨答弁している。しかし、「戦史叢書 支那事変陸軍作戦」には、日本軍が一般住民を意図的に殺害したという記述は見当たらないのではないか。逆に、次のように南京攻略作戦において軍紀風紀を維持徹底し不法行為を防ぐための記述が見られる。

【以下抜粋】

「七 南京城ノ攻略及入城ニ関スル注意事項

(一)皇軍カ外国ノ首都ニ入城スルハ有史以来ノ盛事ニシテ永ク竹畠ニ垂ルヘキ事蹟タルト世界ノ斉シク注目シアル大事件ナルニ鑑ミ正々堂々将来ノ模範タルヘキ心組ヲ以テ各部隊ノ乱入、友軍ノ狙撃、不法行為等絶対ニ無カラシムルヲ要ス

(二)部隊ノ軍紀風紀ヲ特ニ厳粛ニシ支那軍民ヲシテ皇軍ノ威武ニ敬仰帰服セシメ苟モ名誉ヲ毀損スルカ如キ行為ノ絶無ヲ期スルヲ要ス

(五)掠奪行為ヲナシ又不注意ト雖 火ヲ失スルモノハ厳罰ニ処ス 軍隊ト同時ニ多数ノ憲兵、補助憲兵ヲ入城セシメ不法行為ヲ摘発セシム」

 政府が南京事件に関する見解を公表するにあたって、どのような歴史的、国際的な文脈が考慮されたか。また、「戦史叢書 支那事変陸軍作戦」及びその他の文献から、政府が南京での非戦闘員の殺害や略奪行為を否定できないと判断するに至った具体的な分析過程を教示されたい。具体的にどのような歴史的証拠や証言が考慮されたかについても示されたい。

2 政府は、「非戦闘員の殺害又は略奪行為があったことは否定できない」としつつも、具体的な数については「様々な議論があるため断定することは困難」と述べているが、根拠となる文書類がないのであれば、曖昧な表現を避けるべきではないか。

 日本政府は、南京事件における被害者数について「様々な議論があるため断定することは困難」としているが、この曖昧さが国内外での誤解や誤情報を招いている可能性について、政府はどのように考えているか。

3 国際社会での誤解や誤情報に対して、日本政府はどのような先手策を講じ、またどのように事実に基づいた情報提供を行っているか。

  右質問する。