第213回国会(常会)
質問第四四号 固定電話加入権販売時の説明に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年二月二十二日 須藤 元気
参議院議長 尾辻 秀久 殿 固定電話加入権販売時の説明に関する質問主意書 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の運用を規定する日本電信電話株式会社等に関する法律(以下「NTT法」という。)の改正が議論されている。改正議論とはいえども、二〇二三年十二月一日に、自民党の防衛関係費の財源検討に関する特命委員会の下に設置された「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム」から出たNTT法改正提言において、二〇二五年にNTT法を廃止するための措置を講ずる旨を附則に明記との文言が記載され、二〇二四年の改正案が通れば翌年にはNTT法が廃止される流れとなっている。そのなかで、争点の一つとなっているのが、NTTが日本全体の七割以上の通信インフラを独占していることにある。 そのような中で、同じ業界の通信事業者であるKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手を含む百八十社がNTT法廃止に反対の立場である。 それは、NTT法第十四条(重要な設備の譲渡等)において、「地域会社は、電気通信幹線路及びこれに準ずる重要な電気通信設備を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない」と規定され、通信インフラの譲渡制限があるためである。 他の通信事業者が懸念を示す背景に、NTTがこれまでに全国の隅々まで敷設した全国約七千カ所に立地するNTT局舎、全国約百十万キロに及ぶ光ファイバー網、約千百九十万本の電柱を含む通信インフラは日本全体の七割強を占め、そのインフラを利用しなければ他の通信事業者はサービスが成り立たないためである。 ただし、そのインフラも国民が「電話加入権」で設備を負担してきた経緯がある。 NTTによると設備投資累計額は、公社時代からも含めると一九五三年から一九八四年まで東西合わせて約二十五兆円、NTT発表資料によるとそのうち四・七兆円は、「固定電話加入権」を得るための「施設設置負担金」で集められた資金である。 それをもって、以下質問する。 一 国民の多くは、「施設設置負担金」を払うことにより、「電話加入権」を得るという仕組みについて正確な説明を受けていなかった。そのことについて「施設設置負担金」の支払いを求める際の実際の説明はどのように行っていたのか。NTT法改正にあたり、争点となっている「電話加入権」問題を明らかにするため、NTTが過去国民に対して「電話加入権」について異なる説明をしてきたことに関して調査をすべきではないか。 二 NTTの二〇〇四年十一月五日公表資料(以下「NTT公表資料」という。)によると、「施設設置負担金は、…解約時等に返還いたしておりません」とあるが、一部では契約時に「解約するときに返金します」と説明を受けた国民もいる。大多数は徴収された施設設置負担金が返金されなかったと主張する一方、一部の加入者からは返金されたという声も上がっており、返金されたケースとそうでないケースの差異は何か。 また、電話加入権解約時の取り扱いの違いについて、調査を行なったことはあるのか。その予定はあるのか。 三 NTTが「固定電話を廃止」するのであれば、「固定電話加入権」を口実に集めた施設設置負担金は返金されるべきではないか。独占的地位を持つ民間企業の設備投資をユーザーが負担するのに、株式への出資でも債権への投資でもなく、設備投資を負担させたのは優先的地位の濫用であり、独占禁止法に抵触するのではないか。政府見解を示されたい。 四 公社時代に装置料、負担料、設備料などの改称を経てきた「施設設置負担金」だが、そもそも「サービス利用料」として負担を求めたならば、国民が「電話加入権解約時に返金されない」という不満は起こらなかったはずである。なぜ、公社時代にサービス利用料としなかったのか。その経緯について政府見解を示されたい。 五 NTTは、固定電話加入権に財産的価値がないとして、その返金を拒んできた経緯がある。そもそも民間企業になったにもかかわらず、独占的地位を利用して、「財産価値がない電話加入権」を施設設置負担金とセットにして販売したことに問題はなかったか、政府見解を示されたい。 六 また、NTT公表資料によると、「施設設置負担金を見直したとしても、電話加入権が消滅したり、既存加入者の加入電話契約に基づく権利を制限するものではない」としている。NTTが固定電話の廃止を発表しても、「加入権」は存続するという理解で正しいか。存続するならいつまで存続するのか、法人格が存続する限り永久に存続するものなのか。政府見解を示されたい。 七 電話加入権は金銭債権といえるか。 八 NTTは、固定電話加入権に財産的価値がないと主張しているが、加入権保持者に財産権は存在するのか。 右質問する。 |