第213回国会(常会)
質問第四三号 NTT法廃止議論に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年二月二十二日 須藤 元気
参議院議長 尾辻 秀久 殿 NTT法廃止議論に関する質問主意書 昨今、日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)が、日本電信電話株式会社等に関する法律(以下「NTT法」という。)の改正を求めていることが議論されている。 ところが、二〇二三年十二月一日に、自民党の防衛関係費の財源検討に関する特命委員会の下に設置された「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム」から出たNTT法改正提言において、二〇二五年にNTT法を廃止するための措置を講ずる旨を附則に明記との文言が記載され、二〇二四年の改正案が通れば翌年にはNTT法が廃止される流れとなっている。 NTT法の縛りがなくなれば、政府が保有するNTT株式やNTTが保有する通信インフラが外資に売却されてしまうかもしれないというリスクが発生する。 二〇二三年八月三十一日に開催された「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム」において、NTT法見直しの根拠として、NTTに課す二つの責務が、国際競争力を伸ばす足かせになっているとの議論がなされている。一つは、通信の主役は固定電話から携帯電話や光回線による高速データ通信に移行済みで、固定電話の責務はすでに意味を失っているから法を改正しなければならないという点。NTT法のもう一つの柱は通信に関する研究開発の責務だが、これも公社時代の雰囲気が残るとの話が上がっている。 そこで、以下質問する。 一 「NTT法は固定電話のための法律」という議論が上がっているが、第三条に、「会社及び地域会社は、それぞれその事業を営むに当たつては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与する」という文言はあるが、これは固定電話のためとは限定されておらず、スマホなども含めた「電話のサービス」を提供する責務だと解釈できるがいかがか。政府見解を示されたい。 二 NTT法第三条で定められた固定電話普及の責務がNTTに課されているため、あたかもNTT法を改正しなければ固定電話がやめられないかのような議論がなされている。ところが、二〇二四年一月三十一日時点でNTT東西は固定電話で利用されてきたメタル回線を廃止したので、NTT法が固定電話の責務をNTTに押し付けているという議論は間違っていないか、政府見解を示されたい。 三 NTT法改正では「研究成果の開示義務」が議論されている。第三条に、「今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もつて公共の福祉の増進に資するよう努めなければならない。」との文言はあるが、これは「研究成果の開示」ではなく、「研究成果の普及」であり、意味としては研究成果を製品やサービスとして普及させるための条文だと解釈できる。仮に、この文言が「研究成果の開示」と解釈するものであれば、公開された発明は特許を申請できないはずである。ところが、実際は、NTTは既に約一・九万件以上の特許を取得しているので「研究成果の開示が義務付けられている」わけではないことがうかがえる。NTT法では「研究成果の開示が義務付けられている」という解釈について、政府見解を示されたい。 四 十二月二十二日に開催された総務省情報通信審議会電気通信事業政策部会通信政策特別委員会において、委員から「私から(現・NTT)島田社長に、これ(研究成果の普及義務)がどんな不利益があるのか聞いたら、特に回答はなかった。ということは、直接的な不利益はないのではないか。」との発言があった。総務省が想定する「研究成果の普及義務から生じるNTTに対する不利益」とは何か。事例を示されたい。 五 本法廃止の議論の発端が、「防衛費増を賄うため」である。ただし、政府が保有するNTT株売却によって、防衛インフラでもある通信インフラを失ってしまうリスクがある。仮に、NTTが外資に乗っ取られたとして、我が国が通信インフラを再構築しなければならないとしたら、いかほどの年月日と予算を必要とするのか。政府見解を示されたい。 六 NTTの島田社長はNTT法の「固定電話のあまねく普及義務」という時代遅れの法律に縛られていると主張している。ところが、本法が廃止される以前に既にNTTは「固定電話の廃止」を発表し、二〇二四年一月から廃止を段階的に行なうとしている。NTTの行動からして、NTT法が固定電話の普及義務があるというのに矛盾しているため、そもそも議論の争点に誤りがあるのではないか。 右質問する。 |