質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第四二号

日本とロシアの北方墓参に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年二月二十日

鈴木 宗男


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   日本とロシアの北方墓参に関する質問主意書

 二〇二二年二月二十四日からウクライナとロシアの間で紛争が始まり、日本は同年二月二十六日にロシアに対して経済制裁を実施し、ロシア側は同年三月二十一日、「日本政府の決定に対するロシア外務省の対応について」とする声明で、北方領土問題を含む平和条約交渉の中断、平和条約交渉の前進に向けた北方四島での共同経済活動に関する対話からの離脱、北方領土の元島民らによるいわゆる「ビザなし交流」などの交流事業を停止することが盛り込まれ、日ロ関係悪化の責任は反ロシアの方針を選択した日本政府にあると発表した。

 私は昨年十月、ロシア連邦モスクワを訪問した際、ロシア外務省のルデンコ外務次官と面談し、北方墓参についてロシア側の認識を伺い、私からも元島民の思いなどを伝え、人道的見地からも北方墓参の再開について要望してきた。

 本年二月七日、「北方領土の日」にあたり、内閣総理大臣、外務大臣が北方領土返還要求全国大会に出席し、挨拶した。日本国政府の認識、これまでの日露関係及びロシアとの交流に関し、以下質問する。

一 ロシア外務省は二〇二二年三月二十一日、「日本政府の決定に対するロシア外務省の対応について」とする声明を発表し、この中で、北方領土問題を含む平和条約交渉の中断、平和条約交渉の前進に向けた北方四島での共同経済活動に関する対話からの離脱、北方領土の元島民らによるいわゆる「ビザなし交流」などの交流事業の停止などを表明した。

 一九六四年から始まった北方墓参は、一九七六年から十年間の中断を経て、一九八六年、旅券・査証なしで身分証明書により北方四島に入域する現行の枠組みが設定され、北方墓参が再開された。北方墓参に関する事項は、二〇二二年三月二十一日にロシアが発表した声明には含まれていないと思料するが、政府の考え如何。

二 北方墓参における一九八六年からの現行の枠組みは、現在でも残っていると考えているか。また、ロシア側に北方墓参の枠組みが残っていることを確認しているか。

三 岸田総理は、本年二月七日に開催された北方領土返還要求全国大会において、「北方墓参を始めとした四島交流等事業の再開は、日露関係における最優先事項の一つです。御高齢となられた元島民の方々の切実なるお気持ちに何とか応えたいとの強い思いをもって、ロシア側に対し、今は特に北方墓参に重点を置いて、事業の再開を引き続き求めてまいります。」と挨拶した。また、上川外務大臣は「北方墓参を始めとする北方四島交流等事業の再開は日露関係における最優先事項の一つです。私のところにも平均年齢八十八歳の御高齢となられた元島民の方々の切実なお気持ちが届いています。こうしたお気持ちに何とか応えたいとの強い思いをもって、ロシア側に対し、今は特に北方墓参に重点を置いて事業の再開を引き続き強く求めてまいります。」と挨拶した。

 内閣総理大臣、外務大臣も北方墓参について「北方墓参に重点を置いて事業の再開を引き続き求めてまいります。」と述べたが、二〇二二年三月二十一日のロシア側の「日本政府の決定に対するロシア外務省の対応について」とする声明以降、日本政府がロシア側に北方墓参を要請した事実はあるか。あるならば、「いつ、誰が、どのように、ロシア側の誰に対して要請しているのか」、詳細な年月日、官職、氏名、要請内容を全て明らかにされたい。

四 戦後の国際社会の枠組みは、戦勝国側の主導により判断、決定されてきたものであり、北方領土問題もその中に含まれると考えるが、政府の考えは如何。

五 北方領土返還要求全国大会では、大会アピール(声明)が出されるが、大会アピール(声明)作成にあたり、起案は政府内のどの府省で行われたか。また大会アピール(声明)文はどの府省の決裁を得ているか。決裁を行った指定職以上の者の官職、氏名を明らかにされたい。

六 二〇二四年の北方領土返還要求全国大会の大会アピール(声明)で、「七十八年前、北方領土がソ連によって不法占拠されたまま今日に至っています。」と記された。

 二〇一九年、二〇二〇年の大会アピール(声明)には、「平和条約が締結されないまま」と記し、「不法」も「占拠」も用いられなかった。

 二〇二一年、二〇二二年には、「法的根拠のないまま…占拠」と記し、「不法」という文言は用いられなかった。

 しかし、二〇二三年の北方領土返還要求全国大会から五年ぶりに「不法占拠」という言葉が用いられるようになり、本年開催の大会アピール(声明)にも「不法占拠」という言葉が用いられた。

 二〇一八年以来五年ぶりに「不法占拠」という表現が用いられ、本年も同様の文言が用いられた詳細な経緯を説明されたい。

  右質問する。