質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一一号

パンデミック条約及び国際保健規則改正案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年一月三十一日

須藤 元気


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   パンデミック条約及び国際保健規則改正案に関する質問主意書

 世界保健機関(以下「WHO」という。)と加盟国の間において、パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(WHOCA+:WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response)(以下「パンデミック条約」という。)の作成と国際保健規則(二〇〇五)(以下「IHR」という。)の改正が協議されており、我が国も交渉に参加している。

 外務省も、「WHOCA+作成とIHR改正に向けた作業は、二〇二四年五月の第七十七回WHO総会での提出及び採択を目指して、同時並行で作業が進められています。」と外務省のウェブサイトに記載しており、二〇二四年五月のWHO総会に向けて時間が残されていないことが伺える。

 右のパンデミック条約作成とIHR改正について質問する。

一 我が国の憲法第九十八条によると、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とある。仮に、パンデミック条約が「条約」であれば、憲法の文言からはパンデミック条約は「条約」として遵守する必要が生じる。ところが、いわゆるパンデミック条約の正式名称は「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書」であり、現時点で条約、協定又はその他の文書となるのかは定かではないというのが外務省の見解である。仮に、本条約が協定又はその他の文書になった際に、我が国はそれらの契約を我が国憲法の上位として位置づけるのか。

 また、我が国におけるIHRの位置づけはどうなっているのか。また、WHO憲章と我が国の憲法はどちらが上位にあるのか。WHOが国際機関であるため、「国際法規」として位置づけられるのか、否か。政府見解を示されたい。

二 我が国からWHOに対して提出又は提出予定のパンデミック条約の修正案及びIHR改正案は何一つ公開されておらず、国民と国会議員の「知る権利」を侵害している。それらを全て公開し、内容とプロセスの透明性を高めることが民主主義国家としてのあるべき姿だと考えられるが、政府の見解を示されたい。

三 我が国の憲法第七十三条において「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」となっており、同条第三号によると、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とある。ところが、このパンデミック条約の内容について、これまで国会で内容を審議されたことはない。

 パンデミック条約作成及びIHR改正は、我が国の政府が取り組む公衆衛生管理との兼ね合いや憲法で保障された我が国の国民の人権にかかわる問題であるため、その内容については、事後ではなく、余裕をもって事前に審議すべきものと考えられるが、政府の見解を示されたい。

四 我が国からWHOに対して提出されるパンデミック条約の修正案やIHR改正案の責任は外務大臣にあるのか。それとも厚生労働大臣か。政府見解を示されたい。

  右質問する。