質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第五号

クマとの共存に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年一月二十六日

ながえ 孝子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   クマとの共存に関する質問主意書

 近年クマが人里へ降りてきて、人に被害を与える人身事故が増えている。その対策として、クマを鳥獣保護管理法の「指定管理鳥獣」にすべきとの動きが出ていることを、一般財団法人「日本熊森協会」が懸念している。同法人は、クマはニホンジカやイノシシと異なり、生息数も少なく、繁殖力が弱い動物なので、補殺を強化すると、地域的な絶滅を招くおそれがあると指摘し、生物多様性や生態系保全の為にも、補殺強化より人身事故を防止しながらクマとの共存の方向で対応を進めるよう要望している。この要望を踏まえ、以下質問する。

一 クマを「指定管理鳥獣」に追加し補殺を強化した場合、クマの絶滅の恐れなど専門家の意見を聴取しているか。クマという種の保全について、政府はどう考えるか示されたい。

二 「日本熊森協会」の捕殺強化よりも、長期的な視野で、クマと共存しながらも、クマを寄せ付けない、クマと遭遇しない集落づくりを進めていく必要があるとの意見は重要な指摘と考える。

 しかし、過疎と高齢化で、住み分けの為の草刈り、防除柵の設置、あるいは山裾にカキやクリを植え「クマ止め林」を作るなど、先人が実践してきた知恵が実践できなくなっている農村・集落が多くある。「日本熊森協会」は、共存の為の環境整備を進めることが、生物多様性の保全の観点からも、良い効果が期待できるため、共存の為の予算配分を求めている。この共存の為の公的支援についてはどう考えるか。

三 そもそもクマが人里まで出てくるようになった背景には、奥山の大規模開発などが挙げられている。急激な地球温暖化の影響によるナラ枯れの発生や、花粉を運ぶ昆虫の激減で、山の生産力も減少している中、再エネ施設の増加などで、クマ本来の生息地において十分なエサ資源など生息環境がなくなったことが、指摘されている。

 確かに、クマの生息地である、奥山でのメガソーラー計画や、大規模風力発電の開発は、野生生物を山から追い出すことにもなっている。そもそも森林伐採を伴う、再エネ発電所の建設は、温室効果ガスの吸収源を失うことでもあり、このままの事態が続けば、集落の被害や、地球温暖化を進めてしまうことに繋がるおそれがある。クマの生息地での再エネ施設など、開発には規制が必要と考えるが、政府の考えを示されたい。

  右質問する。