第213回国会(常会)
質問第三号 SNSの安全性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年一月二十六日 神谷 宗幣
参議院議長 尾辻 秀久 殿 SNSの安全性に関する質問主意書 ソーシャルネットワーキングサービス(以下「SNS」という。)の利便性は高く、日本社会でも情報収集や発信、コミュニケーションの道具として幅広く利用されている。その際、情報の安全性を確保することの重要性は言うまでもない。日本では、SNSプラットフォームとしては、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、YouTube、LINE、TikTokなどが頻繁に利用されている。 一方で韓国のインターネットサービス企業、ネイバー社が親会社として大きな影響力を持つLINEに関しては、以前から安全性の懸念が指摘されており、実際に問題が発生している。例えば、令和三年には、業務委託先の中国企業を通じて日本国内にあるサーバーに保存されていたLINE利用者の個人情報が閲覧可能な状態であったことが判明したと報道された。漏洩した情報には、氏名、電話番号、保存されたメッセージ、画像などが含まれていたという。さらに、利用者間でやりとりされる画像、動画、ファイルなどのデータが韓国で管理されていることも明らかになった。この点に関し、LINE社は、中央省庁を含む利用者に対し、主要なサーバーは日本国内にあると不正確な説明をしていたという。 個人情報保護委員会は、この問題に対応し、LINE社に対して報告徴収や立入検査を実施し、必要な指導を行った。令和五年八月には、ヤフー社が検索サービスの利用者の位置情報をネイバー社に提供していたことが発覚し、総務省から行政指導を受けた。その結果、LINE社及びヤフー社は、情報管理の適正化のため必要な是正措置を講じたはずとされたが、両社合併後の同年十一月には、LINEヤフー社で再び情報流出の事案が発生し、再び約四十四万件の個人情報が不正アクセスにより流出した可能性があるとされている。これらの事例は、利用者の個人情報ややりとりされる情報の内容が国外に流出する危険性を示唆している。 このようにLINEを巡っては情報流出事案が繰り返されており、安全性の観点から大きな懸念を引き起こしている。さらに、多くの国民や政府機関、地方公共団体が、外国企業の影響下で運営されているSNSプラットフォームを業務や公共サービスに使用していることも大きな懸念の対象となっている。 令和三年の政府調査によれば、政府機関の約七十八・二%、地方公共団体の約六十四・八%がLINEを利用していたという。これらの機関では機密情報の取り扱いや住民の個人情報を扱う業務も含まれていた。 右調査と同時に、政府は「政府機関・地方公共団体等における業務でのLINE利用状況調査を踏まえた今後のLINEサービス等の利用の際の考え方(ガイドライン)」を提示した。このガイドラインでは、一定の基準を示したものの、利便性を重視しつつ、LINEの利用を完全に排除することはしないとされている。 一方、中国のバイトダンス社が運営する動画投稿アプリTikTokについても、世界中で情報安全に関する懸念が広がっている。例えば、TikTokがアプリ内ブラウザ使用時に、パスワードやクレジットカードのデータも含めて全てのキー入力を記録することなどが問題視されている。加えて、中国の国家情報法により、中国企業は中国政府の要請に応じて情報を提供する義務があり、これはTikTokにも当てはまるため、利用者の情報が中国政府に提供される可能性があることも懸念されている。 これらのことから、米国では、連邦政府や州政府機関でのTikTokの使用禁止が広がっており、令和五年三月には、米国連邦政府が全ての公的な端末からTikTokの削除を命じた。州議会でも、TikTokの使用を全面的に禁止する法案が可決される動きがある。カナダ、英国、ニュージーランドなど他の西側諸国・地域でも、行政機関や議会の端末でTikTokの使用を禁止する措置が取られている。 日本においてもTikTokの利用者は増加しており、国民や企業だけでなく、政府機関や地方公共団体でも広く使用されている。中国の国家情報法を考慮すると、TikTokに関する海外諸国での懸念は理解できるものであり、日本でもその使用については慎重な対応が求められると考える。特に、公的セクターでの使用は、停止を含め慎重な検討が必要ではないか。 令和五年七月、政府は「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準」を決定し、定型約款や規約等への同意のみで利用可能となるSNSを含むクラウドサービスでは、原則として要機密情報を取り扱うことはできないとされた。しかし他方で、「要機密情報を取り扱わない場合であっても、各政府機関等においては、様々なリスクを十分に踏まえ、必要に応じ講ずべき措置についての助言を内閣官房に求め、情報システムセキュリティ責任者の承認を得た上で必要なもののみを利用する」とする答弁(内閣衆質二一一第四五号)を閣議決定し、一定の条件下でのSNS使用の余地を残している。 SNSの利便性は高く、社会的に不可欠なインフラとして今後もさらに普及していくと考えられる。そのため、より安全なSNSプラットフォームであることが重要である。また、使用する際には、情報の安全性を確保し、より一層の注意を払って慎重に対策を講じるべきである。 その上で情報の安全性を真に高めるためには、国産SNSプラットフォームの開発と積極的な活用の推進が考えられる。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 令和三年に提示された「政府機関・地方公共団体等における業務でのLINE利用状況調査を踏まえた今後のLINEサービス等の利用の際の考え方(ガイドライン)」に基づいて、政府機関及び地方公共団体におけるLINEの使用状況に関する最新のデータを示されたい。 二 LINEについて情報流出の事例が再び発生したことを踏まえ、鈴木総務大臣は令和五年十一月二十八日の記者会見で、「通信サービスにおける利用者情報保護の不備による再発事案は非常に遺憾」である旨述べ、LINEヤフー社に対し利用者への適切な周知と原因究明を求めていることを明らかにした。この事案の発生を受けて、政府はLINEヤフー社に対してどのような報告徴収、立入検査、指導を行ったか、また今後の対応計画はどのようなものか。 三 今般、SNSプラットフォームで発生した情報流出の事例に鑑みて、政府は今後、これらのプラットフォームの安全性をどのように確保し、改善する計画を有しているか。また、これらの問題を防ぐためにどのような再発防止策を講じているか。 四 TikTokに関して、米国をはじめとする諸外国で情報の安全性に関する懸念が表明され、使用禁止などの措置が講じられている。これに関する政府の評価を示されたい。また、すべての政府機関及び地方公共団体でのTikTokの最新使用状況を把握しているか。 五 情報の安全性等を考慮し、将来を見据えて国産のSNSプラットフォーム(政府や国内企業が主体となるもの)を開発すること、また、国産SNSプラットフォームの利用を促進することの重要性について、政府はどのように考えているか。 右質問する。 |