質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第九八号
  令和五年十二月二十二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員紙智子君提出先住民族政策の世界の流れとアイヌ施策推進法施行後の施策の検証に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出先住民族政策の世界の流れとアイヌ施策推進法施行後の施策の検証に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号。以下「アイヌ施策推進法」という。)附則第九条の規定に基づき、アイヌ施策推進法の施行後五年を経過する令和六年五月以降に法律の施行の状況について検討するに当たって、御指摘の点についても検討を行う考えである。

二について

 令和五年十二月時点において、アイヌ施策推進法第八条第一項に規定する都道府県方針を定めた都道府県は、北海道である。

三について

 御指摘の「世界で広がっている謝罪の動き」については、各国の内政等に関する事項であり、政府の認識についてお答えすることは差し控えたい。

 お尋ねの「勧告」については、御指摘の「附帯決議」が採択されて以降、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「自由権規約」という。)第四十条1の規定に基づき、我が国が自由権規約委員会に提出した第七回政府報告の検討を踏まえて、同委員会が令和四年十月二十八日の会合で採択した総括所見の中に、アイヌの人々に関する勧告が含まれていると承知している。お尋ねの「国名及び地域名」については、例えば、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、米国及び台湾における先住民族政策について、過去に政府として情報収集を行ったことがある。

四の1について

 お尋ねの「差別」とは、一般に、「差をつけて取りあつかうこと。(出典 広辞苑)」を意味するものとされていると承知している。

 なお、法令においては、様々な語を組み合わせて条文とすることにより、規範としての一定の意味内容を表しているところ、そこで用いられる個々の語については、お尋ねの「差別」のように、その意味が日本語として一般に理解されるものである限り、その一つ一つについて定義をして用いているものではない。

四の2について

 お尋ねについては、アイヌの人々に対する差別の解消のためには、アイヌの歴史や文化の魅力について、国民の理解を深めることが重要と考えており、関係省庁が連携して、アイヌの歴史や文化に関する教育活動の推進、アイヌ政策推進交付金等による全国各地でのアイヌの歴史や文化に関するイベントの開催への支援、アイヌ施策推進法第二条第三項に規定する民族共生象徴空間(以下「民族共生象徴空間」という。)におけるアイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統及び文化に関する知識の普及啓発、各種人権啓発活動や人権に関する相談などの実施等、各般の取組を進めている。

五の1について

 お尋ねの「北海道内外に居住するアイヌの生活実態調査は行っているか」については、アイヌ施策推進法施行後における北海道内に居住するアイヌの人々の生活実態調査として、北海道が令和五年九月から「北海道アイヌ生活実態調査」を実施中であると承知しており、アイヌ施策推進法施行後における北海道外に居住するアイヌの人々の生活実態調査については、実施していない。

 お尋ねの「現在の福祉政策の検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「北海道アイヌ生活実態調査」等も踏まえ、総合的かつ効果的なアイヌ施策の推進に努めていく考えである。

五の2について

 お尋ねの「把握状況」について、「アイヌ語の話者の人数」及び「アイヌ語を授業に取り入れている学校数」は政府として把握していない。

 また、お尋ねの「新たな施策」については、文化庁において、市町村等への支援を通じたアイヌ語の学習に活用可能なアイヌ語アーカイブの作成及び公益財団法人アイヌ民族文化財団を通じたアイヌ語の指導者や話者の育成、民族共生象徴空間におけるアイヌ語体験プログラムの実施等に継続して取り組んでいるところであり、政府としては引き続き、アイヌ語の復興に取り組んでまいりたい。

六について

 前段のお尋ねについては、文部科学省が現時点で把握している限りでは、北海道大学において百体及び五十三箱、東北大学において五体及び一箱、東京大学において十五体、京都大学において六十一体、札幌医科大学において十三体、南山大学において一体、天理大学において五箱、岡山理科大学において一体、北海道博物館において七体、函館市の市立函館博物館において五体及び一箱、小樽市総合博物館において一体、室蘭市民俗資料館において七体、釧路市埋蔵文化財調査センターにおいて九体及び一箱、網走市立郷土博物館において二体、苫小牧市美術博物館において三体、紋別市立博物館において一体、伊達市噴火湾文化研究所において七十七体、石狩市のいしかり砂丘の風資料館において二体及び一箱、八雲町郷土資料館において一体並びに上ノ国町の上之国館調査整備センターにおいて五体の遺骨が保管されていると承知している。なお、ここでいう「箱」とは、同省による大学及び博物館における御指摘の「アイヌの遺骨」の保管状況に関する調査において、個体ごとに特定できなかった遺骨を保管している場合の当該遺骨の集計に係る単位を指す。

 後段のお尋ねについては、御指摘の「遺骨の盗掘との指摘」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の報告書(平成二十一年七月)において「現在も数ヶ所の大学等に研究資料等としてアイヌの人骨が保管されているが、それらの中には、発掘・収集時にアイヌの人々の意に関わらず収集されたものも含まれていると見られている。」と指摘されていることも踏まえ、アイヌの人々への遺骨の返還やアイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現に係る取組を推進しているところである。

七について

 お尋ねの「担当大臣に任命した理由」については、内閣総理大臣が、適材適所の考え方から、自見国務大臣に内閣府特命担当大臣としてアイヌ施策に係る事務を掌理させることとしたものである。

 お尋ねのアイヌ施策推進法第三十五条に規定するアイヌ政策推進本部長には、内閣官房長官が充てられている。