質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第九〇号
  令和五年十二月二十二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員熊谷裕人君提出離婚後の親権のあり方を検討する上で前提となる知見等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員熊谷裕人君提出離婚後の親権のあり方を検討する上で前提となる知見等に関する質問に対する答弁書

一、二及び七について

 離婚及びこれに関連する制度に関する規定等の見直しについては、令和三年二月十日に法務大臣の諮問機関である法制審議会に諮問がされ、法制審議会家族法制部会において、調査審議が行われているところであり、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、法制審議会家族法制部会においては、離婚後の親権者の定めについて、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときや、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、親権者の定めについて父母の協議が調わない理由その他一切の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」等には裁判所が父母の一方を親権者と定めなければならないものとすること等を含め、調査審議が行われているところである。

三について

 お尋ねの「元夫婦間で又は事実婚夫婦で両人とも共同親権を求めている割合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、離婚を経験した父母等の意向を網羅的に把握していないため、お答えすることは困難である。

四について

 お尋ねの「離婚後共同親権についての正しい理解」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、法制審議会家族法制部会においては、親権に関する規律の見直しとは別に、親子交流に関する規律の見直しについて議論されており、その議論の内容については、法務省ホームページにおいて、同部会の議事録等を公開しているところである。

五について

 お尋ねの「このような検討に資するもの」及び「子の福祉と親権に関する調査・研究」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、法務省においては、未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての委託調査(令和三年三月公表)や協議離婚に関する実態についての委託調査(令和三年四月公表)等の調査研究を実施しており、これらの調査結果や心理学及び社会学分野等の先行研究に関する報告書等を、法制審議会家族法制部会において参考資料として委員等に配布しているところである。

六について

 お尋ねの「その期間の間に、面会交流申立ての手続きを利用した当事者や子どもに対する調査」及び「これらの家庭裁判所で決めた面会交流事例の追跡調査や分析」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、五についてで述べた協議離婚に関する実態についての委託調査において、親子交流の取決めやその履行状況について調査しているほか、法制審議会家族法制部会において、委員から家庭裁判所の手続を利用した者に対するアンケート調査結果が参考資料として提出され、これを委員等に配布しているところであり、現時点で、更なる調査等を行うことは考えていない。

八について

 御指摘の「婚姻中に十分な育児実績を積まなかった別居親」、「十分な安全確保」及び「アレルギーへの対応や急な飛び出しの予測と防止」の具体的に意味するところが明らかではなく、お尋ねの「見解」についてお答えすることは困難である。

九について

 お尋ねの「離婚等の裁判や調停において同居親が裁判官、調査官、調停委員等からどのような対応をされてきたか、調停等を利用した人がどのような感想及び意見を持っているか等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難であるが、法務省においては、五についてで述べた協議離婚に関する実態についての委託調査等の調査研究を実施している。

十について

 法制審議会家族法制部会においては、「親権が子との関係において義務としての性質を有し、親権が子の利益のために行使されなければならないものであることを明確化する」ことを含めて調査審議が行われているところであり、その調査審議の内容が諸外国にも正確に伝わるよう、御指摘の「法制審議会家族法制部会議事速報英語訳の資料」の記載の在り方も含め、適切に検討してまいりたい。