第212回国会(臨時会)
内閣参質二一二第八六号 令和五年十二月二十二日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問に対する答弁書 一について 御指摘の「移民」という言葉は様々な文脈で用いられており、お尋ねの「結果的に多くの外国人移民を生み出すことにつながる」の具体的に意味するところが明らかではないが、「特定技能二号」は、「特定技能一号」と異なり、在留期間の更新の通算期間に上限はないものの、既存の就労資格と同様に、受入れ企業との雇用契約を前提に、個々の在留状況に応じて、一定の期間ごとに慎重な審査を経て更新を認めるものであって、無期限の在留を認めるものではなく、また、「永住者」は、厳格な審査を経て、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第二十二条に定める所定の要件を満たす場合に限り許可されるものである。その上で、特定技能制度は、生産性向上や人材確保の取組を行った上でなお、人材確保が困難な状況にある十二の「特定産業分野」において、一定の技能を有する外国人材を受け入れる制度であり、「特定技能二号」で在留する外国人については、熟練した技能が求められ、その技能水準は一級の技能検定(職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第四十四条第二項に規定する技能検定をいう。)と同等の水準とされる試験等で確認することとされていることから、その受入れは、おのずと限られることが想定される。 二について 入管法第二十一条第三項は、「法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」と規定しているところ、この相当の理由があるか否かの判断は、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(平成二十年三月法務省入国管理局策定、令和二年二月出入国在留管理庁改正)にあるとおり、「申請者の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して行っている」ところである。なお、「特定技能」の在留資格に係る活動を行おうとする外国人については、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年法務省令第十六号)において、法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動及び法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第二号に掲げる活動について「産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること」等が規定されている。 三について お尋ねの「「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人が在留期間の更新を行い、十年以上本邦に在留した時にも、当該要件を充足することとなるか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「永住許可に関するガイドライン」(平成十八年三月三十一日法務省入国管理局策定、令和五年十二月一日出入国在留管理庁改訂)において、「原則として引き続き十年以上本邦に在留していること」を永住許可についての要件の一つとしており、「特定技能二号」の在留資格をもって在留する期間については、当該要件における在留期間に算入される。 四について 「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(平成三十年十二月二十五日閣議決定、令和五年六月九日一部変更)において、御指摘の「「特定技能二号」の対象業務拡大」を行った分野は、「ビルクリーニング分野」、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」、「造船・舶用工業分野」、「自動車整備分野」、「航空分野」、「宿泊分野」、「農業分野」、「漁業分野」、「飲食料品製造業分野」及び「外食業分野」であるところ、お尋ねの「客観的な指標」や「生産性向上や国内人材の確保のための取組」については、当該方針において、次のとおり記載されている。 「ビルクリーニング分野」については、「客観的な指標」として、「「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」・・・の適用対象となる特定建築物が年々増加する中で、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は近年高い水準で推移し、平成二十九年度には二・九五倍に達しており、人材の確保が困難な状況となっている。平成二十七年国勢調査によると、ビル・建物清掃員の職種においては、従業者のうち女性が七十・九パーセントを、六十五歳以上の高齢者が三十七・二パーセントを占めている(中略)。また、ビル・建物清掃員の平成二十九年度の地域ブロック単位の有効求人倍率は、最も高い中国地方が三・八〇倍、最も低い東北地方が二・〇三倍であり、全国的に人手不足が深刻な状況である」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「ロボット化の普及促進や高齢者・若年者雇用の推進、賃金引上げに向けた方策に取り組んでいる」としている。 「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」については、「客観的な指標」として、「製造業分野に関連する職業分類における有効求人倍率(平成二十九年度)は二・八〇倍となっており、当該分野に係る職種における有効求人倍率(平成二十九年度)は、例えば、鋳物製造工三・八二倍、鍛造工四・三二倍、金属プレス工二・九七倍、金属溶接・溶断工二・五〇倍、プラスチック製品製造工三・七〇倍、製品包装作業員三・六〇倍となっている等、深刻な人手不足の状況にある」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「各企業及び業界では、①生産プロセスの見える化等の工場のデジタル化、IoT・AI等の活用による生産プロセスの刷新等の生産現場の改善の徹底や、②研修・セミナー等の人材育成等の生産性向上のための取組を実施している。また、経済産業省としても、企業による設備投資やIT導入を支援する施策により、企業による生産性向上の取組を支援している。製造業の生産性は、平成二十四年から平成二十八年まで、年平均約二パーセント向上している(推計値)。・・・各企業及び業界では、①女性や高齢者も働きやすい職場環境及び人事制度の整備や、②適正取引の推進等による適正な賃金水準の確保等に取り組んでいる。また、経済産業省としても、①中小企業が女性、高齢者等多様な人材を活用する好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及、②賃上げに積極的な企業への税制支援、③下請等中小企業の取引改善に向けた取組等を行い、企業による国内人材確保の取組を促進している。製造業分野の就業者に占める女性及び六十歳以上の者の比率は、平成二十四年には約三十パーセントだったが、平成二十九年には約三十三パーセントに上昇している(推計値)」としている。 「造船・舶用工業分野」については、「客観的な指標」として、「足元の人手不足の状況については、造船・舶用工業分野における主な職種の平成二十九年度の有効求人倍率は、溶接(金属溶接・溶断工)二・五〇倍、塗装(塗装工)四・三〇倍、鉄工(鉄工、製缶工)四・二一倍、仕上げ(めっき工、金属研磨工)四・四一倍、機械加工(数値制御金属工作機械工)三・四五倍、電気機器組立て(電気工事作業員)二・八九倍となっているなど深刻な人手不足状況にあ」るとしている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「「海事生産性革命・・・」の取組により、船舶の開発・設計、建造から運航に至る全てのフェーズにICTの導入を進めること等により、生産性の向上に取り組んでいる。平成二十八年度及び平成二十九年度に、造船現場における生産性を向上させる革新的な技術開発の支援事業として、十八事業の採択を行った。今後、引き続き造船業全体の生産性を向上させるための支援を行うとともに、開発した技術の普及に向けた取組を進めることにより、生産性向上の取組を進めていく。・・・国内人材確保のための取組については、造船工学の教材の作成や造船に係る若手教員の専門指導力向上のための研修プログラムの開発等による若手の造船業への進出・定着や女性が働きやすい現場環境の改善に取り組んでいる。さらに、多様な勤務形態の確保を通じた積極的な高齢者の雇用等に取り組んでいる」としている。 「自動車整備分野」については、「客観的な指標」として、「平成二十九年度における自動車整備分野の有効求人倍率は三・七三倍である・・・。地域的に見ると、自動車整備分野においては、その地域において保有されている自動車台数により需要が決まるため、例えば、自動車保有台数が多い愛知県及び埼玉県において自動車整備分野の有効求人倍率がそれぞれ八・三五倍及び六・〇八倍である一方、自動車保有台数が少ない都道府県においても、例えば、富山県及び福井県において当該有効求人倍率がそれぞれ六・四三倍及び五・七七倍である等、人手不足が生じている地域がある」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「作業効率向上に資する設備機器の導入、若者に対する職場体験機会の提供や広報啓発、賃金水準の改善等の処遇の改善に取り組んでいるところ、整備要員一人当たりの年間平均給与は、五年連続で増加(平成二十九年度は前年度比一・一パーセント増)しているなどの成果を挙げている」としている。 「航空分野」については、「客観的な指標」として、「近年の訪日外国人旅行者の増加やLCC・・・の事業拡大に伴い、国際線旅客数及び着陸回数は過去五年間でそれぞれ約一・六倍、約一・五倍と増加しているなど、我が国の航空需要は拡大を続けている。(中略)航空分野に従事している主な職種での平成二十九年度における有効求人倍率は四・一七倍(陸上荷役・運搬作業員四・九七倍、他に分類されない輸送の職業二・一七倍、輸送用機械器具整備・修理工(自動車を除く。)二・〇〇倍)となっており、平成二十八年の雇用動向調査における職業別の欠員率が運輸業・郵便業三・四パーセント等となっている・・・。また、航空分野における業務は日本全国の空港で行われているところ、地方空港における国際線旅客数及び着陸回数が過去五年間でそれぞれ約二・五倍、約一・九倍と増加」しているとしている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「IT技術や新型機器の導入推進、労働条件や職場環境の改善等に取り組んでいる」としている。 「宿泊分野」については、「客観的な指標」として、「平成二十九年の訪日外国人旅行者数は二千八百六十九万人であり、これは平成二十四年と比較すると約三・四倍の増加となっている。(中略)観光を地方創生につなげていくためには、三大都市圏以外の地方部への外国人旅行者の訪問を増大させる必要があるが、その延べ宿泊者数は、最近五年間で大都市圏では約二・二倍、地方部では約二・八倍の増加となっており、全国にわたって、宿泊需要の増大への対応が必要となっている。他方、宿泊分野に係る職業の有効求人倍率(平成二十九年度)は全国で六・一五倍であり、また、宿泊業、飲食サービス業の欠員率(平成二十九年)は全国で五・四パーセントとなって」いるとしている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「業務効率化、IT化・機械化や、女性・高齢者・若者の就業促進に取り組んでいる」としている。 「農業分野」については、「客観的な指標」として、「農業分野における雇用労働力は、平成十七年に十三万人であったものが、平成二十七年には二十二万人と、この十年で一・七倍に増加しているほか、平成二十九年の農業分野の有効求人倍率は一・九四倍(農耕作業員一・七一倍、養畜作業員二・八〇倍)となっている。また、「新たな外国人材の受入れ制度に関する基本的考え方(平成三十年九月農業労働力支援協議会)」において、雇用就農者数は現時点で約七万人不足しているとされているなど、深刻な人手不足の状況にある。農業就業者の世代間バランスは、現時点で基幹的農業従事者の六十八パーセントが六十五歳以上、四十九歳以下は十一パーセントとなっており、農業就業者の減少・高齢化を背景として経営規模の拡大や雇用労働力の増加が進展している・・・。また、農村地域においては、人口が全国を超えるペースで減少が進み、高齢化率は都市を上回る水準で推移してきており、平成二十七年の高齢化率は都市部の二十四・五パーセントに対し、農村地域は三十一・二パーセントになっている」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「農作業機械化への取組やインターンシップの推進、新規就農者の定着支援に取り組んでいる」としている。 「漁業分野」については、「客観的な指標」として、「全国の半島地域や離島地域等津々浦々に六千二百九十八(二千十三年)の漁業集落が存在し、生活の糧として漁業や養殖業が営まれているが、漁業分野における就業者は、平成十年に二十七万七千人であったものが平成二十九年には十五万三千人とおおむね半減、雇われ就業者も三年間で約一割減少しているほか、漁業分野の有効求人倍率は、漁船員二・五二倍(船員職業安定年報)、水産養殖作業員二・〇八倍(職業安定業務統計)となっているなど、深刻な人手不足の状況にある」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「適切な資源管理措置の下で漁船の高性能化・大型化、作業の自動化・協業化、情報通信技術(ICT)の活用や新規就業者の確保・育成に取り組んでいる」としている。 「飲食料品製造業分野」については、「客観的な指標」として、「経済産業省「工業統計調査(平成二十九年)」によれば、製造業全体に占める食料品製造業の従業者数の比率は、三大都市圏が十三・〇パーセント、それ以外の地域が十五・一パーセントとなっており、ほぼ同程度の水準となっている。また、経済産業省「経済センサス(平成二十八年)」によれば、食料品製造業の製造品出荷額が製造業で第一位となっているのは九道県(北海道、宮城、新潟、奈良、高知、佐賀、宮崎、鹿児島、沖縄)となっている。また、第三位までに位置している都道府県は二十三道府県に上っている。次に、飲食料品製造業分野における労働力需給の現在の状況は、他の製造業と比べ雇用人員不足感が高い状況にある。平成二十九年度の飲食料品製造業分野の有効求人倍率は二・七八倍であり、一・五四倍である全体より大きい。また、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、平成二十八年度の欠員率が三・〇パーセントに達している。さらに、日銀短観によれば、「食料品製造業」(中小企業)の雇用人員判断(DI)は、平成二十九年三月にはマイナス三十であったものが、平成三十年九月にはマイナス四十一となり、今後の先行きもマイナス四十六となることが見込まれており、「製造業全般」(中小企業)よりも深刻な状況である。経済産業省「経済センサス」及び「工業統計調査」によれば、平成二十八年の飲食料品製造業の従業員数は約百四十万人であり、また、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、平成二十八年の欠員率は三・〇パーセントである」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「ロボット導入などの設備投資、IoT・AI等を活用した省人化・低コスト化、専門家による工場診断等が進展し始めている。一般社団法人日本食品機械工業会の平成二十九年度食品機械調査統計資料によると、食品機械の国内販売額は直近二年間で十一パーセント増加(平成二十七年に五千百七十五億円が平成二十九年には五千七百六十億円に増加)しているほか、一般社団法人日本ロボット工業会の調査によると、飲食料品製造業向けのロボットの国内出荷額は直近二年間で三十九パーセント増加(平成二十七年に三十五億円が平成二十九年に四十九億円に増加)している。また、健康志向や高齢化など経済社会の変化に応じた新たな商品の投入や、従来の商品に新たな価値を見出した商品の提供など、付加価値向上のための取組も進展し始めている。経済産業省「工業統計調査」によると、食料品製造業の付加価値額は平成二十二年から平成二十七年までの五年間で十パーセント増加している。さらに、農林水産省では、専門家による生産性向上の技術や優良事例の紹介を行う「食品産業生産性向上フォーラム」の開催等の取組を行い、関係者の理解増進が進みつつあるところである。・・・国内人材の確保に関し、女性・高齢者が働きやすい雇用環境の改善や研修・セミナーの開催等の取組が業界内で進展し始めている。食料品製造業の女性就業者の割合は平成二十八年度に五十二パーセントとなり、全製造業平均の三十パーセントを大幅に上回っている(平成二十七年度から平成二十九年度までの三年間で食料品製造業の女性就業者の割合は五十二パーセント前後で推移している。)ほか、食料品製造業の六十歳以上従事者は平成二十八年度に二十一パーセントとなり、全製造業平均の十六パーセントを上回っている(平成二十五年度から平成二十九年度までの五年間で食料品製造業の高齢雇用者の割合は三・五パーセント増加)などの成果が上がっているところである。また、国内人材の確保に関し、女性・高齢者の就業促進のため、「食品産業の働き方改革早わかりハンドブック」の作成・周知を行い、関係者の理解増進が進みつつあるところである。・・・人手不足を踏まえた賃上げ等の処遇改善に関し、経済産業省「工業統計調査」によると、従業員一人当たりの給与額は増加(平成十八年に二百七十三万円が平成二十八年に二百八十九万円まで増加)しているほか、食料品製造業の正社員比率は直近二年間で二・〇ポイント上昇(平成二十七年度に四十六パーセントが平成二十九年度に四十八パーセントに増加)するなどの成果が上がっているところである。また、人手不足を踏まえた賃上げ等の処遇改善のため、収益力を向上させるための支援策等に関する講義を行う「「稼ぐ力」応援セミナー」の開催等の取組を行い、関係者の理解増進が進みつつあるところである」としている。 「外食業分野」については、「客観的な指標」として、「平成二十九年度の外食業の有効求人倍率は、「飲食店主・店長」が十二・六八倍、「飲食物給仕係」が七・一六倍、「調理人」が三・四四倍、「外食(各職業分類を加重平均したもの)」が四・三二倍であり、一・五四倍である全体の三倍近くとなっている。また、外食業を含む「宿泊・飲食サービス業」の平成二十九年上半期の欠員率は五・四パーセントと全産業計(二・四パーセント)の二倍以上と高水準にある。・・・さらに、日銀短観によれば、「宿泊業、飲食サービス業」の雇用人員判断(DI)は、平成三十年九月の実績がマイナス五十八、同十二月の予測が、マイナス六十三と、どちらも全調査対象業種中最低となっている」としている。また、「生産性向上や国内人材の確保のための取組」として、「店舗内調理等の機械化や作業動線の見直しによる省力化、食券販売機・セルフオーダーシステム・セルフレジ等の導入やキャッシュレス化によるサービスの省力化、その他店舗運営に係る各種業務のICT化等によって業務の省力化、省人化を進め、この効率化によって得られた余力人員、資金などを糧に新たな価値やサービスの創出(新しいメニューや業態の開発等)、付加価値向上(国産食材の積極的な使用、高付加価値食材の使用等)につながる取組が各企業の規模や業態に応じて行われている。省力化・省人化の例として、一般社団法人日本厨房工業会による業務用厨房機器に関する実態調査によれば、食器洗浄機の国内販売台数は直近五年間で約七十パーセント増加している。また、付加価値向上の取組としては、ある外食チェーンでは、消費者の健康志向に応えるため、店舗で使用する野菜全てを国産に切り替え、そのことをアピールしたところ、メニュー価格を上げたにもかかわらず、利益は増加した例がある。さらに、農林水産省では、専門家による生産性向上の技術や優良事例の紹介を行う「食品産業生産性向上フォーラム」の開催や「外食・中食の生産性向上に向けた手引き」の作成・配付により優良事例の普及等を図るとともに生産性向上に向けた活動に対する国の財政面や金融税制面からの支援措置をまとめたガイドブックを府省横断で作成し、関連支援措置の普及に取り組んでいる。・・・女性、高齢者を含む多様な人材を確保・維持する観点から、物理的な作業負担の軽減や安全対策の強化、転勤のない地域限定正社員制度の導入等育児・介護に配慮した働き方の推進、二十四時間営業や三百六十五日営業の見直しを含む営業時間の短縮等の取組が行われている。例えば、営業時間については、厚生労働省の調査によれば、調査対象四百五十一社中二十八・四パーセントが過去三年間(平成二十五~二十七年度)に「営業時間が短くなった」と回答し、九十・七パーセントが二十四時間営業の導入状況について「行っていない」と回答している(厚生労働省「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」(平成二十九年三月))。(中略)人手不足を踏まえた処遇改善のための取組として、パート・アルバイトの給与の引上げや正社員化の推進等の取組が行われている。例えば、直近三年間の「飲食店」のパートタイム労働者の給与(時給ベース)は一貫して増加傾向にあり、平成二十七年と三十年(一月~九月分)の平均給与を比較すると六・〇パーセント増と全産業の増加率と同等の水準で増加している(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。さらに農林水産省では、「食品産業の働き方改革早わかりハンドブック」を作成し労働環境の改善を推進するとともに、人手不足を踏まえた賃上げ等の処遇改善のため、「稼ぐ力」応援セミナーの開催等の取組を行い、関係者の理解増進が進みつつあるところである」としている。 五について 前段のお尋ねについては、御指摘の「我が国との二国間関係が極めて劣悪である」、「我が国の安全保障にとり重大な脅威を与える」、「経済安全保障の観点から我が国の国益を害する恐れのある」及び「国内において重大な人権侵害が行われている」の具体的な内容が明らかではないため、お答えすることは困難である。 後段のお尋ねについては、お尋ねの「選定基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特定の国籍の外国人の入国を認めるか否か、認める場合にどのような条件の下にこれを認めるかは、当該国と我が国との二国間関係等を総合的に考慮して判断することとしているところである。 六について 御指摘の「広範な」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、パブリックコメントは、国の行政機関が、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的とするものであり、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令の一部を改正する省令(令和五年法務省令第三十五号)の制定に当たっては、これを実施し、広く国民から意見を募集したところである。特定技能の在留資格に係る制度の施行状況等を踏まえつつ、今後とも、必要に応じて国民に丁寧に説明するなどして、制度の適切な運用に努めてまいりたい。 七について 特定技能の在留資格による外国人の受入れについては、入管法第六十一条の十に基づき法務大臣が定めた「出入国在留管理基本計画」(平成三十一年四月法務省策定)において、「関係行政機関と連携して、受入れ分野における人材不足の状況、特定の地域への集中状況や人材不足が深刻化している地域の状況、在留資格「特定技能」で受け入れられている外国人・・・の在留状況等を正確かつ継続的に把握し、必要な措置について多角的な視点に立って検討していく」こととしており、御指摘の点を含め、どのような対応が可能か検討してまいりたい。 八について 「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」(平成三十年十二月二十五日閣議決定、令和四年四月二十六日一部変更)において「分野別運用方針において、当該分野における向こう五年間の受入れ見込数について示」すとしているところ、その数は次のとおりである。 「介護分野」 五万九百人 「ビルクリーニング分野」 二万人 「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」 四万九千七百五十人 「建設分野」 三万四千人 「造船・舶用工業分野」 一万千人 「自動車整備分野」 六千五百人 「航空分野」 千三百人 「宿泊分野」 一万千二百人 「農業分野」 三万六千五百人 「漁業分野」 六千三百人 「飲食料品製造業分野」 八万七千二百人 「外食業分野」 三万五百人 九について お尋ねの「社会全体に及ぼす影響を考慮した総合的かつマクロ的な判断基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外国人労働者の受入れについては、令和五年四月十八日の参議院法務委員会において、齋藤法務大臣(当時)が「専門的、技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資する、そういう観点から積極的に受け入れていく、それ以外の分野につきましては、日本人の雇用、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など、幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ政府全体で検討していく、こういう考え方に基づいて外国人材を受け入れているところでございます」と答弁しているところである。 十について お尋ねの「教訓」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外国人の受入れに係る課題への対応や制度設計を行うに当たっては、我が国の実態を踏まえ、諸外国の制度も参考にしつつ、幅広い観点から検討を行ってきたところである。 |