質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第八〇号
  令和五年十二月十五日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員川田龍平君提出福島第一原発一号機原子炉倒壊・使用済燃料水抜けの危険等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出福島第一原発一号機原子炉倒壊・使用済燃料水抜けの危険等に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)一号機の原子炉建屋(以下「原子炉建屋」という。)の内壁を構成するコンクリートの御指摘の「剛性の低下」については、原子炉建屋内及び同号機の原子炉格納容器(以下「格納容器」という。)内の放射線量が高く詳細な調査を行うことが困難であることから、東京電力においてこれに関する情報を把握できておらず、政府として承知していないが、御指摘の「別紙三の規制庁の評価計算」は、同号機の原子炉圧力容器及び原子炉遮へい壁並びに格納容器が原子炉建屋へと転倒し、原子炉建屋への水平荷重の伝達又は直接の衝突が起きるという極端な仮定を置くことにより、十分に保守的に行ったものであり、御指摘のように「再度推算するべき」とは考えていない。

一の3について

 一の1及び2についてで述べた極端な仮定を置いて評価した場合においても、原子炉建屋全体としての構造健全性は十分に維持されることを確認しているため、御指摘の「壁面の破損」が起こるとは考えていない。また、御指摘の「SFPの衝突側壁面」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、当該評価において衝突が起きると仮定した壁の厚さは約二百センチメートルである。

二の1から3までについて

 一の3についてで述べたとおり、原子炉建屋全体としての構造健全性は十分に維持されることを確認しており、福島第一原発一号機の使用済燃料プールの水が抜けるとは考えていないため、それを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

二の4について

 東京電力に確認し、福島第一原発一号機及び二号機の使用済燃料プールの内側にはステンレス製の厚さ約六ミリメートルの御指摘の「ライニング」が施されていると承知している。また、お尋ねの「ライニングは原子炉が倒壊した場合破損せずに耐え得るものなのか」については、「ライニング」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、福島第一原発一号機の「ライニング」は、一の3についてで述べたとおり、原子炉建屋全体としての構造健全性は十分に維持されることを確認しているため、御指摘のように「破損」するとは考えていない。

二の5について

 御指摘の「原子炉倒壊が起こる前に」の意味するところが必ずしも明らかではないが、先の答弁書(令和五年五月十九日内閣参質二一一第七〇号)七についてでお答えしたとおり、福島第一原発の各号機の使用済燃料プールに貯蔵されている使用済燃料の取出し及び乾式貯蔵については、現在、東京電力において、福島第一原発における全号機の使用済燃料プールからの使用済燃料の取出しを令和十三年度までに完了することを目指して、乾式貯蔵等が進められているところであると承知している。

三の1について

 一の3についてで述べたとおり、原子炉建屋全体としての構造健全性は十分に維持されることを確認しており、御指摘の「RPV倒壊防止対策」を講ずる必要はないと考えている。

三の2について

 お尋ねの「設計基準地震動」がどの時点のものであるか必ずしも明らかではないが、現時点における「設計基準地震動」及び「今後想定されている基準地震動」については、令和四年十一月十六日に原子力規制委員会が了承した「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における耐震クラス分類と地震動の適用の考え方」に示されているとおり、最大加速度が九百ガルの地震動を用いることを基本としている。また、お尋ねの「天井クレーンや圧力容器など安全上重要な設備」の具体的な範囲が明らかではなく、一概にお答えすることは困難であるが、東京電力によれば、福島第一原発一号機天井クレーンの固有周期は○・二七秒、同号機原子炉圧力容器の固有周期は東西方向で○・三四四秒、南北方向で○・三六○秒、福島第一原発二号機天井クレーンの固有周期は○・二八秒、同号機原子炉圧力容器の固有周期は東西方向で○・三二五秒、南北方向で○・三五四秒と承知している。さらに、お尋ねの「応答スペクトル」は、平成二十六年十月三日の原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会第二十七回会合において東京電力が示した「東京電力福島第一原子力発電所の外部事象に対する防護の検討について」のとおり検討されていると承知している。

三の3について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、新規制基準(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)及び同法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準をいう。)を踏まえて、原子力規制委員会において規制を行っているところであり、また、同委員会としては、原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立ち、安全研究の推進や新たな知見の収集を行い、当該基準等の継続的な改善に努めていく必要があると考えている。