質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第四九号
  令和五年十一月二十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えておらず、御指摘の岸田内閣総理大臣の発言は、御指摘の「方針」を変更するものではない。

二について

 「特定技能第二号」の拡大の対象となった分野における人手不足が深刻であり、当該分野の存続及び発展のために外国人の受入れが必要な状況にあることについては、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の客観的な指標等を踏まえ、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお熟練した技能を要する業務に従事する人材を確保することが困難な状況にあると判断したことによるものである。

三について

 「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人については、専門的、技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性や技能が求められ、その在留期間は、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和五十六年法務省令第五十四号)別表第二において、「三年、一年又は六月」と定められ、在留期間の更新は、当該更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されることから、「特定二号の対象を拡大することは、結果的に「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」となる」との御指摘は当たらない。

四について

 御指摘の「客観的に評価する指標」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針(平成三十年十二月二十五日閣議決定、令和四年四月二十六日一部変更。以下「基本方針」という。)において、「二号特定技能外国人に対しては、熟練した技能が求められる。これは、長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能であって、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいう。当該技能水準は、分野別運用方針において定める当該特定産業分野の業務区分に対応する試験等により確認する」としている。

五について

 お尋ねの「相手国ごとの留意点、選定基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針において、「被送還者の自国民引取義務を適切に履行していない国からの受入れは行わない」及び「その他我が国の出入国管理上支障を生じさせている・・・国からの受入れについては慎重に対応する」としている。

六について

 「令和五年六月九日の閣議決定までに、公聴会開催などを含めて十分に国民の声を聴く取組は行われたのか」とのお尋ねについては、御指摘の「公聴会開催などを含めて十分に国民の声を聴く取組」の具体的に指し示す範囲が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令の一部を改正する省令(令和五年法務省令第三十五号)の制定に当たっては、パブリックコメントを実施し、広く国民から意見を募集した。

 「この点をどう評価するのか」とのお尋ねについては、その意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「「国民の声」を聴く会」については、「「国民の声」を聴く会設置要綱」(令和元年七月三十日出入国在留管理庁長官決定)に基づき、「多文化共生社会の実現に向けた様々な課題の把握及びその対応策の策定のための検討に資するよう、地方公共団体、経済団体、労働団体、外国人支援団体等を含め、多文化共生施策に係る意見等について、広く関係者の声を聴くことを目的」として、令和二年十二月まで開催していたものであり、御指摘の「特定技能二号の対象拡大」について広く関係者の意見を聴くことを目的としたものではない。

 「今後、どのようにして国民の声を聴き、施策に反映させていく方針か」とのお尋ねについては、今後とも、特定技能の在留資格に係る制度の施行状況等を踏まえつつ、必要に応じて関係者等からその意見を聴取するなどして、制度の適切な運用に努めてまいりたい。

七について

 お尋ねの「経済に与える効果」及び「社会コスト」という言葉は様々な文脈で用いられるものであり、その具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「特定技能二号の対象拡大による外国人労働者の受け入れ」に当たり、具体的な数値を試算するような取組は行っていない。

八について

 前段のお尋ねについては、お尋ねの「目標数等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針において、「日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下等を防ぐ観点並びに外国人の安定的かつ円滑な在留活動を可能とする観点から、分野別運用方針において、当該分野における向こう五年間の受入れ見込数について示し、人材不足の見込数と比較して過大でないことを示さなければなら」ず、「分野別運用方針に記載する向こう五年間の受入れ見込数については、大きな経済情勢の変化が生じない限り、「特定技能一号」の在留資格をもって在留する外国人受入れの上限として運用する」としている。

 後段のお尋ねについては、基本方針において、「分野所管行政機関の長は、分野別運用方針を策定する際に示した人手不足の状況を判断するための客観的な指標及び動向並びに法務省から提供する特定産業分野における在留外国人数等に照らして、当該特定産業分野における人手不足の状況について継続的に把握することとし、当該客観的な指標及び動向の変化や受入れ見込みとのかい離、当該特定産業分野に係る就業構造や経済情勢の変化等を踏まえ、人手不足の状況に変化が生じたと認められる場合には、それらの状況を的確に把握・分析し、状況に応じた必要な措置を講じなければならない」としている。