質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第六号
  令和五年十月三十一日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出水産業における「新たな資源管理」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出水産業における「新たな資源管理」に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「同十二年度に漁獲量を四百四十四万トンまで回復させること」は、我が国の漁獲量が、平成二十年の約四百三十万トンから、その十年後の平成三十年に約三百三十一万トンへ減少したこと等を踏まえて、令和二年九月に農林水産省が策定した「新たな資源管理の推進に向けたロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)において、この十年間の漁獲量の減少を、その後の十年間で回復させることを当面の目標として設定したものであり、水産基本計画(令和四年三月二十五日閣議決定)においても、令和十二年度までに四百四十四万トンまで漁獲量を回復させることを目標とする旨を位置付けたところである。

 当該目標の達成のため、水産資源について、漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第九条に基づく資源調査及び資源評価、同資源評価を踏まえた同法第八条第二項に基づく漁獲可能量による管理、同条第三項に基づく漁獲割当てによる管理制度の導入、同法第百二十四条に基づく水産資源の保存及び管理に関する協定(以下「資源管理協定」という。)の締結の推進等を行うこととしており、その具体的な行程をロードマップの中で示している。これらの施策を実施するため、令和五年度予算においては、農林水産省において、水産資源調査・評価推進事業に要する経費として約五十五億円、新たな資源管理システム構築促進事業に要する経費として約八億円等を計上したところである。引き続き、必要な予算の確保に努めてまいりたい。

二について

 お尋ねの「科学的研究・データの収集・分析・取締りに関する予算」の意味するところが必ずしも明らかではないが、水産資源の調査及び漁業取締りのための予算については、令和六年度概算要求においては、農林水産省において、水産資源調査・評価推進事業等に要する経費として約九十九億円、外国漁船対策等に要する経費として約百九十二億円等を計上したところであり、これらにより我が国の水産資源の管理が十分に図られていくものと考えている。引き続き、水産業をめぐる状況の変化等に応じて、毎年度、必要な予算の確保に努めてまいりたい。

三について

 政府としては、漁業共済の加入者に対し共済掛金の補助及び損失の更なる補を行う事業である漁業収入安定対策事業の加入要件として、漁業者が加入する漁業共済の対象となる漁業種類に対応する資源管理協定等に参加することを求めており、これらで定めた取組の履行の確認は、試験研究機関、漁業協同組合連合会、漁業共済組合、漁業者団体等を構成員として国又は都道府県に設置される資源管理協議会において、客観的に履行の確認が可能な証拠等を基に、定期的に行うこととしている。

 また、資源管理協定等の取組の効果の検証は、その有効期間の終了時等において、同協議会において、漁業法第九条に基づく直近の資源評価の結果等を踏まえて行うこととしており、当該検証の結果は、農林水産大臣又は都道府県知事に報告され、当該報告を通じて、国及び都道府県において、漁業者による資源管理の取組を把握しているところである。

四について

 御指摘の「TAC」とは、漁業法第七条第一項に定める漁獲可能量を指すものと考えられるが、これについては、御指摘の「TACの消化率の実態に見合った評価」ではなく、同法第九条に基づく資源評価の結果を踏まえて設定することとしている。今後とも、科学的な知見に基づいて漁獲可能量を設定及び管理し、水産資源を持続的に利用できるよう努めてまいりたい。

五について

 漁業法における漁獲割当ての制度については、特定の漁業者へ漁獲割当量が集中することで漁業者の減少につながること等の懸念を踏まえて、同法第十七条に規定する漁獲割当割合及び同法第十九条に規定する年次漁獲割当量を当事者間の合意のみに基づいて移転することができる制度ではなく、同法第二十一条及び第二十二条に基づき農林水産大臣又は都道府県知事の認可を受けた場合に限り移転することが可能な制度とされているところであり、現時点において、これを変更する予定はない。

六について

 お尋ねの「我が国における混獲、幼魚混入の管理、制限」については、御指摘の「持続可能な漁業を行う」ため、国や都道府県等において、採捕が可能となる期間を制限する等の、水産資源の状況や漁具、漁法等の特性に応じた水産動植物の採捕に関する制限等を行っているところである。引き続きこうした取組を進めてまいりたい。

七について

 我が国の養殖業の生産量については、海水温の上昇等の影響により、長期的にみれば減少傾向にある一方で、生産額は平成二十六年以降増加傾向にあり、一経営体当たりの生産量も増加傾向にあることから、御指摘のように「我が国の養殖業が全体として世界の趨勢と逆行して衰退している」とは認識していない。