質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一四二号

ワークルール教育の強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十三日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   ワークルール教育の強化に関する質問主意書

一 現在の労働法制上の課題の解決のため、政府により具体的な対策が求められることは論を待たないが、同時に、労働者の労働法制に関するリテラシーを向上させ、職場の労働環境において問題があった場合に、まずその問題がそもそも労働法制上違法であることに気づけるようにするとともに、躊躇無く自らの権利を行使し、その解決に向けて、労働基準監督署の相談窓口などの既存制度を活用できるようにしていくことも重要である。特に、社会人として労働市場に参入する前の段階、すなわち高校生や学生等若者の労働法制に関するリテラシーの向上に取り組むことが必要なのではないか。

 政府はこれまで、労働法制に関するリテラシーの向上に向け、どのような取組を行い、また、今後どのようにその向上を図っていく予定か。方針並びに具体策について、明確に示されたい。

二 政府の取組はどれも重要であり、否定するつもりはない。しかし、不十分であると言わざるを得ない。

 二〇一八年に日本労働組合総連合会が二十代の若者を対象に実施した「二十代のワークルールに関する意識・認識調査」によると「パワハラ・セクハラなどハラスメント行為は法律で禁止されていない」とする設問の正解率は僅か七%であったばかりか、六割以上の若者が「ワークルールについて学習する機会がなかった」と答えている。とてもこれまでの取組が行き届いているとは思えない。

 今、真に労働法制に関するリテラシーの向上のために求められているのは、単なる法律知識にとどまらず、実際に役立つ問題解決力を身に付けるための教育、すなわち「ワークルール教育」の充実ではないか。

 「ワークルール教育」とは、職業生活において必要な労働の分野に関する実体法及び手続法等に関する基礎的な知識を付与し、職業生活において生ずる諸問題に適正に対処するために必要な分析力、交渉力及び問題解決力を育むための教育であり、現状、日本労働弁護団を始めとする有志の弁護士や教員によって取り組まれている。

 政府はこの「ワークルール教育」に関する取組をそもそも承知しているか。また、この取組をどのように評価しているか。見解を伺う。

三 ワークルール教育は、次世代を担う子供たちが労働者として自らの権利を守るために必要であるばかりか、将来経営者や管理職になったときに、他者の労働法制上の権利を理解し、尊重できるようにしていくためにも極めて重要であると思う。

 しかしながら、先ほど申し上げたとおり、ワークルール教育は一部の熱心な教員や有志の弁護士の方々の善意により、採算を度外視して行われているのが実態である。このような状況は、労働者の権利を保護する義務を負う政府としては、あまりに無責任ではないか。

 現行法制度においても、例えば過労死等防止対策推進法第九条では「国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする」とされ、過労死防止のための教育・啓発に取り組むことが法律に明文で謳われている。また、青少年の雇用の促進等に関する法律第二十六条においても「国は、学校と協力して、その学生又は生徒に対し、職業生活において必要な労働に関する法令に関する知識を付与するように努めなければならない」と規定されており、本来、政府においても正面から検討されなければならない事柄である。

 政府としても、ワークルール教育の推進のため、法整備を進める考えはあるか。見解を伺う。

  右質問する。